案件52.霧が晴れる
霧満山の戦いの後、黒火手団は矛貫隊の医療隊員ズイナンの手当を受けながら、ルニエルの採点を聞いていた。
「お前さんたち、今回も随分やられたな」
「ズイナンさん、ありがとうございます」
「今案件のMVPはカネリです!悪天候かつ外部との連絡を絶たれた状況下で、悪堕者の度重なる襲撃から遭難者を守りつつ、強敵アダウチオニの逮捕に貢献したことため、2500点追加します!」
「いよっしゃあああああ!!!」
「カネリ落ち着いて!傷口が開くよ!」
その後3人はムックスと再会し、グロンカと他の遭難者たちの安否を知らされた。
「全員無事下山できたか」
「はい、最寄りの病院で手当を受けています」
「グロンカさんとマヤさんは大した怪我をしてないので、すぐ退院できると思います」
「ホイトさんは治療に時間がかかるものの、命に別状はないとのことです」
「よかった・・・ムックスさん、ありがとうございます」
「いえ、ボクも異救者ですので」
「そう言えば霧が深くて通信ができない中、どうしておれたちの居場所がわかったんですか?」
「悪堕者の特殊な通信機を利用したんです」
「彼らはそのような状況でも迷わないよう、特殊な周波を放つ通信機で情報共有していました」
「ボクの仲間はそれに気づき、周波を解析し傍受することで、君たちの居場所を突き止めました」
「それと同時に奴らの拠点を発見し、ワープ兼通信妨害装置を破壊したんです」
「・・・・・なるほど!よくわかったぜ!」
「お前理解してないだろ」
同じ頃、ツドウと他の隊員たちは事件の後始末を行い、ヒトリバコから助け出されたロックは、女性隊員のリンドーを見ると急に怯え出した。
「うわあああ女だあああ!!もう二度としません!ごめんなさーい!!!」
「アタシに謝ってどうするんだクズ野郎!」
「どうやらあなたの復讐がトラウマになって、女性恐怖症になってしまったようね」
「ふん、いい気味・・・」
副隊長のフロンは冷ややかに分析し、彼女に手錠をかけられたダリエは、結果は違えど親友への復讐を果たし、ほくそ笑んでいた。
そしてアダウチオニことコズドも手錠をかけられ、黒火手団を睨みながら大声を上げた。
「黒火手団!この恨み・・・忘れねぇぞ!!」
「ブタ箱でゲキアツ反省しろ!」
「コズド・・・」
その後矛貫隊は、携帯ワープゾーンの装置を起動した。それはグロンカのものより2倍以上大きく、大人数を移動させることが可能だ。
ワープゾーンの行き先は聖明機関本部で、拘束した悪堕者たちを次々連行し、ツドウとオスタはその様子を見守りながら会話をしていた。
「仲間を助けてくれてありがとうオスタ、一つ借りができちゃったね」
「お前の部下が偶然いただけだ、貸し借りをする筋合いはない」
「そんな冷たいこと言うなよ、おれとお前の仲じゃないか!」
ツドウがオスタの肩に手を回そうとするが、振り払われてしまった。
「それより各地の悪堕者が、今回に似た悪事を行っていた」
「!」
「救助活動の妨害や要救助者に偽装して襲うなど、異救者を狙った犯罪が増えている」
「黒火手団と他の部下達に、よく注意喚起しておくんだな」
「わかった、お互い気をつけよう」
「そうだ!仲間を助けてくれたお礼に―」
「盾なら要らないぞ」
「何故わかった!?」
そして翌日の朝、傷が癒えたカネリとボンゴラはアゼルと共に、グロンカと遭難者たちが入院している病院に訪れた。
「黒火手団のみんな、お見舞いに来てくれてとっても『うれピー』のう!」
グロンカはゆっくり歩いて嬉しそうに、黒火手団を歓迎した。
「その様子だと心配は不要だな」
「お元気そうで安心しました」
「言ったじゃろう、ナウなヤングにはまだまだ負けないと!」
グロンカは背筋を伸ばして意気込んだが、その直後に腰からゴキッという音がした。
「ガングロばあちゃん、大丈夫か!?」
「あいたたた・・・もう少し安静にしないといかんようじゃ・・・」
グロンカのお見舞いを終えた黒火手団は、ホイトがいる病室へ訪れた。
「全治3ヶ月だけど、君たちのおかげで命拾いした、本当にありがとう」
「退院したらまた山に登るんですか?」
「ああ、また霧満山に挑戦しようと思う」
「今日の霧満山は霧が晴れて、山の風景がはっきり見えるんだ」
「こういう画像を見ていると、登山家の血が騒ぐんだよ」
そう言ってホイトは、スマホに写った霧満山の画像を3人に見せた。
「きれいですね」
「オレもまた登りてえなあ!」
「その時は君たちに、登山の護衛を依頼しようかな」
ホイトのお見舞いも終え、看護師にマヤのいる病室を訪ねたが・・・
「もう退院したんですか!?」
「ええ、尾根見マヤさんは個人的な都合で、予定より早く退院されました」
「先生も彼女の健康状態を評価した上で、許可しました」
「アイツもゲキアツ勝手だよなあ!」
「仕方あるまい、大学の状況を考慮すれば・・・」
世間は、遭難者4人が通う鳥天堂大学の話題で騒然となっていた。
学内のテニスサークルが、10数人の女性に乱暴し脅迫していたことが発覚したのだ。
ロックをはじめ、女性に危害を加えた部員全員が逮捕され、大学の理事長や幹部たちはその責任を追求されている。
「あのメガネも逮捕されたのか!?」
「坂登デアンは入学早々、パシリに使えるという理由で小谷ロックに半強制的に入部されただけで、事件とは黒に無関係だ」
「むしろあの人も被害者だよ、不祥事があった大学の在校生という、レッテルを貼られてしまったんだ」
「在校生及び被害女性のことは、他の異救者に任せればいいだろう」
「これでダリエのダチも、救われるといいな」
その頃マヤは、人気のない場所で何者かと連絡を取り合っていた。
「―というわけで、こっちは色々大変だったのよ!」
「遭難した上、あの激熱カネリに出会ったんだから!」
「入院中に事情聴取された時は、『セイブレス』だとバレないかヒヤヒヤしたわ!」
「・・・うん、そうね、ほとぼりが冷めるまで活動は控えるわ。また連絡する」
セイブレスとは、カネリの第二の故郷『バズレイダ』を侵略した謎の敵勢力である。
黒火手団はいずれ彼らと対面し、彼らの実態とマヤの目的を知ることになるだろう・・・
『スコア早見表』
黒理アゼル(初級)
10723点(+1000)
激熱カネリ(初級)
10546点(+2500)MVP
手差ボンゴラ(初級)
10339点(+1000)
スコア100億点以上で救世主になれる!
まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!
To be next case




