案件48.霧に潜む憎悪
5月5日20時半頃、洞穴の中で異救者たちが下山計画を練る裏で、遭難者のリーダー格ロックは衝撃の事実を知った。
「なんだと―」
「先輩、大声を出さないで下さい!」
女性遭難者の一人ダリエは、ロックの口を塞ぎながら小声で注意した。
「・・・あの陰キャのデアンが、悪堕者のスパイだと・・・!?」
「私見たんです。あいつがさっき外に出て、奴らと連絡取っていたのを」
「デアンはテニスサークルに入ってから、先輩にパシられ続けたことを恨んで、その鬱憤を晴らすため悪堕者と組んだんです」
「そしてあと15分後に、ここを包囲して総攻撃すると聞きました」
「じゃあ、このことを異救者に―」
「ダメです!みんなで動いたら気づかれます!」
「100人以上の闇異が襲ってくるんです、助かりやしません!」
「でも今、私たち二人が先に逃げれば、奴らに気づかれず下山できます」
「チャンスは今しかないんです!!」
「・・・・・!」
その時、ダリエはロックの手を握り自身の胸の内を語った。
「私、大学に入ってからずっと先輩を想っていました。あなたと一緒なら他は何も要りません、だからお願い・・・!」
「ダリエ・・・そこまでして俺のことを・・・」
ダリエの熱い視線を受け、ロックは下山の決意を固めたが、その陰でデアンが静かに二人を見つめていた―
21時頃、ロックとダリエは異救者やサークルの仲間を置いて勝手に下山し、霧に満ちた夜の山中を走っていた。
「先輩、こっちです!」
「お、おう・・・」
ロックは整備されてない道を走り疲弊しているのに対し、ダリエはまだ余裕の表情だった。
「なあ・・・ちょっと休まないか?」
「そうですね、ここまで来れば一安心でしょう」
二人は小さな岩に座り、小休止を始めた。
「そういやお前、帰り道を知ってるのか?」
「ええ、この山に登ると決めた時から、何度も下見に来たんです」
「プルナちゃんの為に」
「プルナ?だれだそりゃ?」
ロックの質問を聞いた途端、ダリエの雰囲気が変わりゆっくりと立ち上がった。
「ああやっぱり。女癖の悪い先輩は、2年前に乱暴し捨てた女の子のことを、覚えてないんですね」
そう言いながら、ダリエの身体が闇のエネルギーに包まれ、なんと闇異に変異した。
頭部の中央に大きな眼があり、左右に回転式拳銃のようなものが生え、右腕は巨大な回転式拳銃と一体化している。
ロックは彼女の変わり様に驚き逃げようとするが、恐怖で腰掛けていた岩から転倒してしまった。
「お前・・・闇異なのか!?」
「『復讐闇異リベルバー』とでも言っておきましょうか」
ダリエことリベルバーが右腕の銃で発砲すると、ロックが先程座っていた小さな岩に命中し、バアンと大きな音を立てて粉々に砕け散った。
「うわあああああ!!!」
ロックは恐怖のあまり無我夢中で逃げるも、その先は崖ですぐリベルバーに追い詰められてしまった。
「無駄ですよ先輩、ここまで来れば異救者は助けに来ない」
「お前・・・プルナの何なんだよ・・・!」
「私の大切な親友です、あの子を傷つけたあなたを私は決して許しません」
「私はあなたに近づくために高2からテニスを始め、鳥天堂大学に入学しテニスサークルに入った」
「あなたに恐怖と苦痛を味合わせながら、殺してやろうと想いながらね!」
そう言いながらリベルバーは、右腕の銃でロックに狙いを定めた。
「あなたを崖から突き落とし、ゆっくり死んでいく様を見守ってあげますよ」
「お・・・俺が悪かった・・・許してくれ・・・!」
大学ではイケメンで、女子に人気のロックの姿は見る影もなく、顔は恐怖と涙と鼻水でグチャグチャになっていた。
「死んだ後でね」
リベルバーが撃とうとしたその時、自分に向かって数本のクナイが飛んできたことに気づき、後ろを振り向いてクナイを全て撃ち落とした。
しかしその隙に、別の方角から巨大な手が現れ、ロックを掴み取り奪われてしまった。
「なにっ!?」
リベルバーはロックを掴んだ巨大な手を狙うが、後ろから今度は炎が放たれため、思わず回避し取り逃がしてしまった。
21時38分、リベルバーの前に、闇異に変異した黒火手団の3人が現れた。
「何とか間に合った・・・」
「ハア・・・ハア・・・」
リチャウターに抱き抱えられたロックだが、心身ともに疲弊し言葉を発する余力すらなかった。
「フン、自業自得だ」
「コイツあとで一発殴ろうぜ!」
「どうしてここが・・・いや、どうして私の目的がわかったの!?」
To be next case




