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案件46.強敵再び

 5月5日12時45分、リチャウターとエグロッピーは切り立った崖の下で、浅刺(あさとげ)コズドことアダウチオニに遭遇した。


「こやつ・・・浅刺(あさとげ)カズトの・・・!」

黒火手団(くろびてだん)のリチャウター、まさかここでテメェに会えるとはな・・・」


「この前の恨みを込めて、叩き割ってやる!!」

「グロンカさん!ホイトさんを連れて先に避難して下さい!!」


 アダウチオニが斧に力を込めている隙に、グロンカは一人用担架でホイトを持ち上げ、リチャウターはそれを手伝った。


 一方、エグロッピーに撃破され人に戻った悪堕者(シニステッド)たちは、一目散にその場から去っていった。


「逃げろ!巻き込まれる!!」

憤怒爆破(ふんどばくは)ぁ!!!』


 憎しみのオーラを纏った斧で地面を叩きつけた瞬間、ドーーーンと凄まじい大爆発を引き起こしリチャウターを巻き込んだが、グロンカとホイトは爆風の外まで移動し無事だった。


「ぐぅっ!!」

「ボンゴラくん!あたしが戻るまで持ちこたえるのじゃ!!」




12時52分、黒皇(ブラックレクス)とカネリファイヤは、遭難者4人を守りながら悪堕者(シニステッド)のほとんどを返り討ちにしていた。


『バーニングストレート!!』

「ぐえええ!!」


「お前ら、一度退くぞ!」

「覚えてやがれ!」


 傷つき力を消耗した悪堕者(シニステッド)たちは、霧の中へ消えて行った。


「遭難者・・・今は遭難者を守るんだ・・・」

(時間が経過すれば、奴らはまた襲ってくるな・・・)

「助かったあ・・・」


 すると一同の前に、ホイトを抱えたエグロッピーが現れた。


「また悪堕者(シニステッド)!?」

「待てカネリ!彼女はミズ・グロンカだ!」

「・・・お主たちも襲撃されたようじゃな」


「この子を頼む、ボンゴラくんが一人で浅刺(あさとげ)コズドを足止めしてるんじゃ!」

「アイツも来てたのか!?」


 エグロッピーは、黒皇(ブラックレクス)とカネリファイヤにホイトを託し、リチャウターの応援に向かった。



 

 同じ頃、アダウチオニは巨大な斧を振るい執拗に攻めるが、リチャウターは回避に専念し攻撃をかわし続けた。


「チッ!」

(以前よりも動きが速くなっている!下手に攻めるのは危険だ!)


 アダウチオニは非常に打たれ強く、カネリファイヤの必殺技『バーニングストレート』を食らっても、素早く反撃に転じることができる程の強敵だ。


 リチャウターは霧の中に紛れ込むが、アダウチオニはリチャウターの姿をはっきりと捉え追ってきた。


「逃げんじゃねえ!かかってこい!」

(この程度の距離じゃすぐ見つかる、かと言ってここから離れ過ぎたら遭難してしまう!)


(こいつに目をつけられたまま、みんなのところへ戻るわけにもいかない!!)


 かつてアダウチオニは、黒火手団(くろびてだん)の3人を同時に相手取り、敗北に追い込んだ。


 例えエグロッピーを加え4人がかりで戦っても、遭難者5人が無事でいられる保証はない。


(グロンカさんが戻ってきたら、彼女に押さえてもらって救手(すくいて)ハグネードを決めよう。撃破できなくても、力を大きく消耗させ足止めできる!)


(できれば拘束したいが、今は遭難者たちが優先だ!!)


 そんなことを考えていた矢先に、グロンカことエグロッピーが戻ってきた。


「ボンゴラくん、遅れてめんご!」

「グロンカさん!」


「チッ一人増えたか、まとめてフッ飛ばしてやる・・・!」


 アダウチオニは再び『憤怒爆破(ふんどばくは)』の構えに入ったため、リチャウターは『救手(すくいて)アーム』で両腕を長く伸ばし、アダウチオニの両足を掴み転倒させようとした。


 しかしアダウチオニは強く踏ん張り、びくともしなかった。


「!」

「同じ手は効かねえ!『憤怒爆破(ふんどばくは)』!!!」


 リチャウターはまたしても『憤怒爆破(ふんどばくは)』に巻き込まれ、地面に倒れてしまった。幸いエグロッピーは、真上にジャンプして無事だった。


「大丈夫か!?」

「グロンカさん・・・おれが浄化技を準備する間にコズドを―」


 しかしその時、地響きと同時に小さな石がパラパラと崖から転がり落ちてきた。


「あ?」

「地震?」

「違う!お主たちここから早く逃げるのじゃ!」


「崖が崩れるぞーーーーー!!!」


 アダウチオニの二度に渡る『憤怒爆破(ふんどばくは)』の衝撃で、大規模な崖崩れが発生し、三人に岩と土砂が襲いかかった。


 エグロッピーは急いでリチャウターを立ち上がらせるが、大きな岩が彼女の腰に激突してしまった。


「あぐっ!!」

「グロンカさん!!」


 今度はリチャウターがエグロッピーを抱きかかえ、全速力で崖下を駆け抜けた。




 13時20分、崖崩れは治まりリチャウターとエグロッピーは生き埋めにならずに済んだ。


「すみませんグロンカさん、おれを助けたせいで・・・」

「イタタ・・・むしろこれで済んでよかったのう」

「そうだ、コズドは!?」


 その時、崩れた土砂と岩の中から傷ついたアダウチオニの上半身が現れた。


「リチャウター!今度こそ叩き割って―」


 リチャウターはアダウチオニの無事を確認すると、少し安堵しエグロッピーを抱きかかえたまま霧の中へ消えて行った。


「おい待て!待ちやがれ!!待てっつってんだろうがあああああ!!!」


 アダウチオニの怒号は、深い霧の中に虚しく響き渡った。


To be next case

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