案件45.ヤマンバ参戦
「その通り!闇の赴くまま、お前たちを生きては帰さん!!」
5月5日12時頃、異救者たちは遭難者を発見し下山しようとしたが、悪堕者に妨害されてしまった。
黒皇は反撃を仕掛けるが、悪堕者はこれを避け霧の中へ消えて行った。
「逃がすか!」
「カネリ待て!この霧の中で深追いするな!」
霧の向こうから、悪堕者の一斉射撃が再び放たれた。
リチャウターとカネリファイヤは遭難者たちを庇い、黒皇とグロンカは素早くかわした。
「敵は俺達が見えているのか!?」
「こっちじゃ!向こうには身を潜める場所がたくさんある!」
黒皇は錬黒術で黒い盾を複数枚作り出し、異救者達は盾を持ち遭難者を守りながら、グロンカが示した方向へ進んだ。
「もうなんなのよ!!」
「大丈夫です!落ち着いて進んで下さい」
「カネリ、チャンプファイヤーで牽制しろ!」
「わかってらあ!!」
カネリファイヤは地面に向けて灼熱の炎を放ち、悪堕者の行く手を阻んだ。
「アツッ!」
「何やってんだ!追え!!」
「慌てるな、奴らはこの山から決して逃げられない。『下準備』が済んでるからな―」
12時21分、異救者と遭難者たちは悪堕者を撒き、岩場が多い場所に足を踏み入れた。
「ここなら隠れられる場所が多い、奴らをやり過ごしながら下山じゃ」
「おいおい、まだ歩くのかよ!?」
「冗談じゃないわ!早く家に帰してよ!!」
歩き疲れた遭難者のロックとマヤは、不満を訴えた。
「ワープできねえんだからガマンしろ!」
(悪堕者の仕業だ、奴らの異能あるいは装置で、ワープと通信が妨害されている!)
その時リチャウターが何かに気づき、進路とは別の方角に顔を向けた。
「どうしたボンゴラ?」
「向こうで人の気配がした、行って来る!」
「あたしも行くぞ、お主たちはそこで待つのじゃ」
人命救助に長けたリチャウターは、黒皇とカネリファイヤよりも人を感知する能力に優れている。
12時28分、二人が進んだ先で岩場に横たわる遭難者を発見した。
「でかしたぞボンゴラくん!大手柄じゃ!」
「ひどい怪我だ!すぐ手当しないと・・・」
新たな遭難者は髭を生やした中年男性で、体中に傷があり右足を骨折していた。
「お主、意識はあるか?自分の名前がわかるか?」
「・・・雨峠ホイト・・・闇異から逃げて・・・」
どうやらホイトは一人で登山中、悪堕者に襲われ逃げる途中で、崖から転落してしまったようだ。
リチャウターとグロンカは、ホイトの応急処置を済ませ右足を固定し担架に乗せた。
「他に遭難者はおらんか?」
「大丈夫です、早くみんなと合流しましょう」
その時、霧の中から新たな悪堕者が飛びかかってきた。
敵の接近に気づいたリチャウターは、『救手アーム』で腕を長く伸ばし、悪堕者を捕らえ、岩壁に叩きつけた。
「もう見つかった・・・!」
「痛ってぇな・・・」
岩壁に叩きつけた悪堕者が体勢を立て直すと、さらに4体の悪堕者が現れたため、リチャウターは戦闘の構えに入った。
「グロンカさん、ホイトさんをお願いします」
「いや、お主がその子を守るのじゃ」
「すぐに片付けてみんなと合流するぞ―」
同じ頃、黒皇たちも悪堕者と交戦していた。
「テメェらを相手してるヒマはねえんだよ!!」
カネリファイヤはそう言いながら、悪堕者に右ストレートを決め、さらに左ストレートの準備に入った。
「いいのか?遭難者共を放っておいて」
「!?」
カネリファイヤが振り向くと、別の悪堕者が遭難者たちに迫っていた。
「グヘヘ、女が二人もいるなあ」
「ヤダ!あっち行ってよ!!」
そんな中、遭難者のリーダーであるロックは、後輩のデアンをけしかけていた。
「デアン、お前が二人を守れ!」
「え・・・ちょ・・・」
カネリファイヤが助けに行こうとするが、近くにいる悪堕者に妨害されてしまった。
「やめろこのヤロウ!!!」
その時、黒皇が『黒幻自在』による高速移動で、遭難者に迫る悪堕者を斬り伏せた。
「何をしているカネリ!最優先事項は遭難者の防衛だ!!」
「そんくらい、わかってら!!」
「ロック先輩、最低ですね」
「いや、こういうのは、異救者に任せればいいんだよ!」
カネリファイヤは『チャンプファイヤー』を放ち、目の前の悪堕者を牽制した後、遭難者たちの近くまで移動した。
「コイツらには、指一本触れさせねえぞ!」
(しかしこの霧の中、奴等はどうやって俺達の居場所を特定したのだ!?)
12時40分、リチャウターはホイトの側にいながら呆然としていた。その理由は、闇異に変異したグロンカの圧倒的な強さだけではなかった。
「お主たちなど、外露魔武異救者:エグロッピーの、アウトオブ眼中じゃ!!」
グロンカことエグロッピーは、角を生やしたギャルのような姿で、鉈という刀身が四角い刃物を右手に持ち、さらにその刀身には宝石のような飾りが散りばめられている。
特に印象的なのはより黒くなった肌、白い唇とアイラインなどの派手な化粧、髪はボリュームが増し明るい色となった。これはかつて若い女性の間で流行った、『ヤマンバメイク』を彷彿させる。
(グロンカさんって・・・若い頃はあんな感じだったのか?)
「クソババアが!若作りしてんじゃねえ!!」
満身創痍の悪堕者たちが、一斉にエグロッピーに襲いかかった。
『デコナッター!!』
エグロッピーの鉈が、彼女の上半身と同じくらいの大きさになり、悪堕者たちを次々と切り裂いていった。
「ぎゃあああああ!!!」
切り裂かれた悪堕者は爆発し、全員人の姿に戻って戦闘不能となった。
「助かりましたグロンカさん」
「こやつらは岩場に縛って、後で通報しようかのう。闇異はちょっとやそっとじゃ死なん―」
その時、リチャウターとエグロッピーは前方に顔を向けた。その先の霧の中から、強い闇のオーラを感じたからだ。
案の定、霧の中から黒く大きな影が現れ、やがてその正体が明らかになった。
それは大きな斧を肩に担ぎ、大きな角を生やし怒りに満ちた目をギラつかせ、赤紫色のオーラを纏う闇異だ。
見覚えのあるその姿に、リチャウターは思わず呟いた。
「アダウチオニ・・・浅刺コズド・・・!!」
To be next case




