案件42.たった一時の救い
「そんな・・・こんなところで・・・!」
リチャウターにはもう、技を使う余力すら残されていなかった。身体のあちこちにヒビが入り始め、変異が解ける時間も迫っていた。
「最後の最後でラッキーなのは、ウチなのさ!」
カガヤを取り込んだジュウメンは、勝利を確信し不敵な笑みを浮かべた。
「ボンゴラ・・・!」
「残念だが、黒殺刑で決めさせてもら―」
『ステージのみんなぁ!リチャウターを応援して、力を貸してあげてーーー!!』
その時聖女マナキが立ち上がり、ステージの外で戦いを見守る人々に応援を呼びかけた。
『せーのでいくよ!せーーーの!!がんばれーーー!!!』
マナキの声援に続いて、子どもたちがリチャウターに熱いエールを送った。
「がんばれー!」
「がんばってー!!」
「いけーーー!!」
『ボクからも・・・がんばレモンスカーーーッシュ!!!』
ゴンスケは両手にレモンスカッシュのペットボトルを持ち、ボトルの口からは炭酸水が勢いよく飛び出した。
「ボンゴラ君!」
「いけー!」
「救えー!!」
ダニュアルをはじめとする子どもたちの保護者と異救者、さらにジュウメンから解放された子どもたちもリチャウターを激励した。
一方ジュウメンは、リチャウターを応援する人々に圧倒され戸惑っていた。
「・・・・・!!」
「やれやれ、まるで本物のヒーローショーだ」
「最ッ高に、ゲキアツな展開だぜ!」
(闇異の力は残り少ないけど・・・みんなの声で力が湧いてくる・・・!!)
その時、奇跡が起こった。リチャウターが首に巻いているマフラーが光り輝き出したのだ。
「これは・・・!」
「ボンゴラくん、みんなの力だよ。この力で救って!」
リチャウターが救手ハグネードの構えに入ると、マフラーの両端が伸びて両手の甲に添えられた。
すると両手に、浄化のエネルギーがみなぎり始めた。
「ヒーローショーも遊園地も、ウチがぐちゃぐちゃにしてやるううう!!!」
ジュウメンが迫りくる中、救手ハグネードの準備は完了した。
「いけボンゴラ!ゲキアツに!!」
「黒に決めろ!!」
「この手で!救ってみせるぅ!!」
『救手ハグネーーードォオオオオオ!!!』
人々の応援から放たれた救手ハグネードは、一瞬でジュウメンの肉体を吹き飛ばし、カガヤを引き剥がした。
そしてリチャウターは、救手ハグネードで宙に待ったカガヤと、人に戻ったジュウメンを受け止めた。
『これにて、サプライズヒーローショーはおしまインゲンマメ~!みんな黒火手団に、盛大な拍手~!!』
ゴンスケがインゲンマメを模した風船をたくさん飛ばし、ステージが喝采に包まれたところで戦いは閉幕した―
その後、変異を解いた黒火手団の三人は、スタッフ専用の休憩所でぐったりしていた。
「あ~、ゲキアツ疲れた・・・」
「ジュウメンを聖明機関に引き渡し、晴山カガヤを含む囚われた子供達は病院に送られたが・・・」
「まさか俺達も、握手会に参加するとはな」
「さっきのヒーローショーが子どもたちにすごくウケて、マナキちゃんだけじゃなくおれたちとも握手したいって声が多かったからね・・・」
「キミたち!はっぴっぴランドでオレと握手!なんてな!」
「そういやボンゴラは、マナキと握手したのか?」
「いや、おれがするのはちがうよ」
「それよりカガヤくん、大丈夫かな・・?」
「それならダイジョーVサイン!」
ボンゴラがカガヤを心配した時、ゴンスケが両手でピースしながらやって来た。
「ゴンスケさん!?」
「さっきダニュアル君から連絡があったんだ」
その頃、はっぴっぴランドから少し離れた病院では、検査を終えたカガヤがダニュアルに連れられ廊下を歩いていた。
「他の子たちと同様、とくに異常がなくてよかったね」
「ダニュアルさん、オレに会わせたい人ってだれですか?」
「それは会ってからのお楽しみ!」
そう言ってダニュアルが病棟の個室のドアを開けると、そこにはカガヤの両親がいた。
「父ちゃんと・・・母ちゃん・・・!?」
「カガヤ!!」
カガヤの母親が、涙を流しながらカガヤを抱き締めた。
「カガヤごめんね!あの時酷いこと言っちゃって本当にごめん!お母さんどうかしてたよ!!」
「カガヤ、悪いのは俺なんだ!俺が母さんの気持ちも知らずにあんなことを言ったから、お前に辛い思いをさせてしまった、すまなかった!」
カガヤの父親は体中に包帯を巻きながらも、ベッドから起き上がり自身の行いを反省した。
「オ、オレ・・・父ちゃんと母ちゃんと・・・一緒にいて、いいのかな?」
「いいに決まってるだろ!」
「アタシたちは家族なんだから!!」
「う、うぅ・・・父ちゃーん!母ちゃーん!!」
ダニュアルたちの計らいにより、晴山家は家族の絆を取り戻した。三人がまた一緒に暮らせる日はそう遠くはないだろう。
ボンゴラはゴンスケから、カガヤが家族と再会したことを知った。
「カガヤくんが言ってたよ、黒火手団のみんな、ありがとうって」
「ありがとうございます、よかった・・・」
カガヤが救われたことも知り、ボンゴラだけでなくアゼルとカネリも微笑んだ。
「さて!はっぴっぴランドを締めくくる、最高のパレードが始まるから、みんなも楽しんでいこうゼーーーット!!!」
ゴンスケは両手を使ってZのポーズをとった。
夜のはっぴっぴランドは、きらびやかなパレードと花火で賑わい、観覧車やメリーゴーランドがイルミネーションで照らされ、まるで幻想の世界にいるようだった。
黒火手団の三人も、子どもたちを見守りながらパレードを鑑賞していた。
「ゲキアツキレーだなあ!」
「大手の遊園地に匹敵する程の、黒な演出かもな」
しかしそんな中、ボンゴラは浮かない顔をしていた。
「どうしたボンゴラ?」
「え、いや、何でも・・・」
「また困ってる人たちのこと考えてるの?」
「マナキちゃん!」
マナキは周りの人々に気づかれないよう、気配を消してボンゴラの前に現れた。
「・・・そうなんだ、全ての恵まれない子どもたちが、ここにいるわけじゃない」
「ジュウメンに取り込まれた子どもたちは、まだ病院だよね?」
「ジュウメン自身にも救いがあれば、悪いことをしなかったんじゃないか?」
「それなのに、おれは楽しんでていいのかな?」
ボンゴラの悲しげな表情に対し、アゼルは溜息をついた。
「そんなことを常々考えてたら、お前の精神がもたんぞ」
「こういう時は楽しもうぜ!」
「ごめん、頭ではわかってるけど―」
その時マナキが、ボンゴラをギュッと抱き締めた。
「マ、マナキちゃん!?」
「お願いボンゴラ君、今この一時だけ全てを忘れて、あなたに救いがありますように」
「・・・・・!」
二人の姿は、はっぴっぴランドのフィナーレを知らせる花火で照らされた。
全ての人が救われるまで、ボンゴラの心が晴れることはない。
だが、マナキの温もりが、彼の心に一時の救いをもたらした。
『スコア早見表』
手差ボンゴラ(初級)
9143点(+1000)MVP
黒理アゼル(初級)
9002点(+700)
激熱カネリ(初級)
6858点(+700)
スコア100億点以上で救世主になれる!
まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!
To be next case




