案件40.サプライズヒーローショー
はっぴっぴランドのサプライズゲストである聖女マナキに、カガヤに擬態した悪堕者の一員、ジュウメンの魔の手が迫っていた。
「まずは、あなたの名前を教えて下さい!」
「はい、カガヤです!」
(聖女を吸収して遊園地をグチャグチャにすれば、シルバーどころかゴールドランクまでいけるはず!)
そう考えながらジュウメンは、ゆっくりとマナキに近づいた。
『わたしと最初に握手するカガヤくんには、さらに特別サービスしちゃいまーす!』
「ん?」
『聖女ウイーーーンク!!』
マナキがウインクをしながら右目の付近で横ピースをすると、なんと右目から光線を放ちカガヤに擬態したジュウメンに命中した。
「ギャアアアアア!!!」
説明しよう聖女ウインクとは、右目から浄化光線を放ち闇異の正体を暴く技なのだ。
聖女ウインクを受けたジュウメンは、カガヤの姿から巨大かつ体中に多数の顔があるおぞましい正体を見せた。その大きさはマナキのおよそ10倍だ。
突然の出来事で集まった人々がどよめく中、黒火手団の三人が変異してステージに上がった。
『聖女ディスタンス!!』
さらにマナキがステージを結界で覆い、自身と黒火手団、ジュウメンを外界から隔絶した。
「クソっ!ウチのことを見抜いてたのか!」
『聖女ですから』
カガヤに不審感を抱いたボンゴラは、事前にマナキとゴンスケに相談し一芝居打ったのだ。
『ここでさらにサプライズッキーニ~!聖女様を狙う闇異VS黒火手団のヒーローショーだよ~!みんなで頑張って応援しよ~!』
ゴンスケは両手にズッキーニを持ちながら、子どもたちに呼びかけた。
(子どもたちを怖がらせるわけにはいかない!頼むよ黒火手団!)
「僕たちは見回りを強化しよう!」
ダニュアルたちは新手の闇異の出現に備え、園内の警備を強めた。
「がんばれー!」
「いけー!」
何も知らない子どもたちは、元気よく黒火手団を応援した。
「結界を張ったから、周りを気にせず戦って大丈夫だよ!」
「サンキューマナキ!ゲキアツに燃やすぜ!!」
「今回はギャラリーが多い、黒に決めるぞ!」
「カガヤくんを、この手で救ってみせる!」
「ウチは悪堕者のジュウメン!この遊園地ごとお前たちをグチャグチャにしてやるぅ!!!」
かくして、黒火手団対ジュウメンの戦いが幕を開けた。
ジュウメンはスライム状のボディから、触手を伸ばし襲いかかってきた。
黒皇は素早くかわし、カネリファイヤは触手を掴み取り、リチャウターはマナキを庇い受け流す。
その時黒皇は、ジュウメンの体中に浮かび上がる顔を見てあることに気づいた。
(あれは・・・失踪した子供達?)
その中にはカガヤの顔もあり、皆苦しそうな表情をしていた。
(まさかとは思うが―)
「カネリ、まだ攻撃はするな!」
黒皇は錬黒術で小さな黒い塊を作り出し、それをジュウメンの身体に投げつけた。
「イタッ!」
「痛いよ~」
するとジュウメンの身体中にある子どもたちの顔が、痛みを訴えだした。
「これって・・・!」
「チッ、やはりそうか!」
「そうだよ!ウチを傷つけたら、取り込んだコたちがダメージを受けるんだ!それでも攻撃できるかな!?」
「ゲキアツ汚えぞ!」
(だったらこれだ!)
リチャウターは、ジュウメンのボディに『救手パルマ』を打ちこんだ。
浄化技の一つである救手パルマは、相手に直接苦痛を与えず闇異の力を削ぎ落とすが、あまり効いてないようだ。
「9人の闇深いコを選んで取り込んだんだ、その程度の浄化は効かないよ!」
闇異は、闇が深いほど強くなる。心に大きな闇を抱えた子どもたちを取り込んだジュウメンは、生半可な浄化が通用しないほどの強靭な肉体を手に入れたのだ。
(みんな、がんばって・・・!)
マナキも加勢したいが、観客たちが戦いに巻き込まれないよう、結界を維持するので精一杯だ。
ジュウメンはマナキを狙い接近を目論むが、カネリファイヤの怪力に身体の一部を引っ張られ阻止された。
「おいヤロウども!オレが押さえるから、なんか作戦考えろ!!」
カネリファイヤがジュウメンを引きつけている間に、黒皇とリチャウターは作戦会議を始めた。
「とりあえず浄化は大丈夫そう」
「救手ハグネードしかないな」
「うん、準備が整うまで時間を稼いでほしいけど、黒呪毒は使わない方がいいかも」
「先程少量で試したが、呪いは子どもたちに影響する」
「あの巨体を封じるほどの量を浴びせると、子どもたちに深刻なダメージを与えかねん」
「カネリに加勢する、その間に救手ハグネードを決めろ!」
「よろしく!」
「なんで・・・オレなんかのために・・・」
黒火手団が奮闘する中、ジュウメンに取り込まれたカガヤが呟いた。
「アゼル!カネリ!!」
救手ハグネードの準備が完了したリチャウターが二人の名を叫び、状況を察した黒皇が黒い煙幕を放ち、カネリファイヤは避難した。
『疾風怒黒!!』
「げっ、前が見えない!」
「今だ撃て!」
『救手ハグネード!!!』
ジュウメンが煙幕で視界を奪われている隙に、リチャウターは救手ハグネードを放ち、ジュウメンは光り輝く渦にのみ込まれた。
「こんのぉ・・・!!」
しかしジュウメンは多数の触手をステージに貼りつけ、飛ばされまいと抵抗していた。
「コイツも耐えるのか!?」
ついに救手ハグネードは勢いを失い、ジュウメンは息遣いを荒げながらも浄化に耐え抜いた。
「思い知ったか・・・!ウチの闇は・・・このくらいじゃ浄化できないんだよ!!」
(まずい!救手ハグネードは1回しか使えないんだ!!)
打つ手を無くした黒火手団、ジュウメンに取り込まれたカガヤをはじめ、子どもたちを救うことはできるのか!?
To be next case




