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案件37.500年の時を越え

 特定危険呪物『血黒(ちぐろ)の鎧』の正体は、鎧に付属するサーベルであり、それを手にしたカネリが意識を奪われてしまった。


 カネリは生身だが、元々身体能力が高い上にサーベルの影響で強化され、救手(すくいて)パルマを受けても止まらず猛攻を仕掛けた。


救手(すくいて)ハグネードはもう使えない・・・!)

(さっきからボンゴラばかり狙っている・・・浄化を警戒しているのは間違いないな!)


 黒皇(ブラックレクス)の接近に気づいたカネリは迎え撃つも、義手でサーベルの刀身を掴まれてしまった。


「ボンゴラ今の内に―!?」


 その直後、黒皇(ブラックレクス)の目の前に見慣れない光景が現れた。


 そこは建物の中のようで、冠を被り立派な服装をした男性が近づいてきた。


「今日からお前は私の騎士だ、これからよろしく頼むぞ」

「ハッ、命に替えてもお守り致します!」


(ここは何処だ?この男は何者だ?誰と会話をしている!?)


 突然の出来事で黒皇(ブラックレクス)が戸惑う中、目の前の光景が再び切り替わった。


 何やら騒々しい雰囲気で、冠を被った男性の隣に怪しげな女性がいた。


「この者が謀反を企てています!」

「お前には失望した、牢にぶち込んでおけ!!」


「私は貴方を裏切ってなどいません!話を聞いて下さい!!」


(これは・・・血黒(ちぐろ)の鎧の生前の記憶か!?)


 さらに場面が切り替わり、目の前に千人近い兵が現れその後ろで城らしき建物が燃えていた。


「我が主が危ない・・・お救いせねば・・・!」

「どけ!我の邪魔をする者は、斬る―!!」




 ―黒皇(ブラックレクス)がハッと気がつき起き上がると、目の前でリチャウターとカネリが戦っていた。


「ボンゴラ!」

「よかったアゼル、意識が戻ったんだ!」


(奴に触れて記憶が流れ込んだ影響で、気を失ってたのか・・・)


(待てよ、そもそも奴は何故、館内に入った瞬間動き出した?何故、特定危険呪物保管庫にいた?結界を破って何をしようとしていたのだ?)


 黒皇(ブラックレクス)血黒(ちぐろ)の鎧の生前の記憶を思い出し、彼の目的に気がついた。


(そういうことか!!)

「ボンゴラ、カネリを頼む!俺に(ブラック)な考えがある!!」

「わかった!」


 黒皇(ブラックレクス)は、シャルドから借りたマスターキーで結界を解除し、特定危険呪物保管庫の中に入って職員向けパンフレットを開きながら周囲を見回した。


(あるはずだ、この中に!)


 そして黒皇(ブラックレクス)は、特定呪物保管庫から目当ての物を発見した。




 一方リチャウターは、闇異(ネガモーフ)の力を使い果たしてボンゴラの姿に戻り、カネリに追い詰められてしまった。


「カネリ・・・目を覚ますんだ!!」


 操られたカネリがサーベルを大きく振りかぶり、ボンゴラに危機が迫る瞬間―


血黒(ちぐろ)の鎧!貴様が求めていたのは、これだな!!」


 黒皇(ブラックレクス)が手に持っているのは、血黒(ちぐろ)の鎧がかつて仕えていた男性の物と思われる、朽ちた冠だった。


「・・・我が・・・主・・・!」


 カネリは黒皇(ブラックレクス)の方を向いてゆっくり手を伸ばしながら近づき、黒皇(ブラックレクス)も冠を床に置き後退した。


 そしてカネリは冠の前でサーベルを置くと、ようやく正気に戻った。


「ん?」

「カネリ、意識が戻ったんだ!」


「ハ?どういうこっちゃ?」

「少し下がれ、500年ぶりの再会だ」


 するとサーベルと冠から、闇のエネルギーが溢れ出し人の姿へと変わった。


「この二人は?」

「おそらく持ち主の生前の姿だ」


「我が主・・・500年前、お守りできず大変申し訳ありませんでした」

「私の方こそ、お前を信じてやれずすまなかった。それだけがずっと心残りだったのだ」


「さあ行こう、皆が待っている」

「我が主・・・その前にやるべきことがあります」


 血黒(ちぐろ)の鎧は黒皇(ブラックレクス)に近づき、サーベルを差し出した。


「我と同じ黒き戦士とその仲間たちよ、色々とすまなかった、そして感謝する」

「礼として、我の意志が宿った剣を受け取ってほしい、きっと役に立つ」


「・・・・・」


 黒皇(ブラックレクス)が黙ってサーベルを受け取ると、呪物に宿る二人の霊は闇のエネルギーに戻り霧散していった。


「さらばだ、現代の戦士たちよ―」


 そう言い残し、政村(まさむら)呪物館での騒動は幕を閉じた―




「―成程、そのようなことがあったのですね」


 黒火手団(くろびてだん)は呪物館の入口で、館長のシャルドに事の顛末を説明した。


血黒(ちぐろ)の鎧に宿る怨霊が成仏したと同時に、館内の呪物は全て大人しくなった」

「ですがこの冠だけ完全浄化してしまいました、申し訳ございません」


「いいのです。呪物は生き物と同様、いずれ消えゆく運命(さだめ)なのです」


「その冠は『滅びの王冠』という特定危険呪物でして、所有者が判別できない程ほど朽ちています」


「しかし強大な怨霊が宿り、100m内に近づくと一家離散や破産などの不幸に見舞われるため、地下深くに封じていました」


「アゼルお前呪われてんじゃねえの?」

「成仏したのだから問題無いはずだ」


「それに今回の事件で、血黒(ちぐろ)の鎧の真相が判明しましたからね」


「鎧の持ち主である騎士は、濡れ衣を着せられても主を守るために戦い続けていました。王冠の持ち主も、彼を信じきれなかったことが心残りで、ずっと留まっていたんだと思います」


血黒(ちぐろ)の鎧が動き出した原因は、滅びの王冠に反応したからだろう」

「その2つの怨霊が、500年の時を越えここで再会するとは、奇妙な運命ですなあ」


「これも人助けになんのか?」

「生憎死者の救済はスコアにならん」


「ところでMr.シャルド、血黒(ちぐろ)の鎧のサーベルなのだが・・・」

「アゼルさん、それは貴方にお譲りします。持ち主が貴方を認めたのですから」

「ならばまず、実戦で使えるかテストだな」


「さて、完全浄化された滅びの王冠と血黒(ちぐろ)の鎧は、博物館に寄贈しますかね」

「これで明日から呪物館を再開できます、黒火手団(くろびてだん)の皆様、ありがとうございました」


「では、おれたちはこれで失礼します」

「あ、お待ち下さい!最後に一つだけ!」


血黒(ちぐろ)の鎧のサーベルを、『味見』させていただけませんか?」


 呪物フェチでもあるシャルドは、恍惚な表情で舌なめずりをしたため、黒火手団(くろびてだん)一同の表情が引きつった。


「冗談ではないぞ!これは俺の物だ!!」

「お願いです!せめて、せめて一口だけでも!!」


 サーベルを抱えて逃げるアゼルを、シャルドはよだれを垂らしながら追い回した。


「ボンゴラ、あのオッサンも浄化しようぜ!」

「あの人は救いようがないよ・・・」

 

 生者はある意味死者よりも恐ろしい、三人はそんなことを考えながら今回の案件を達成した。




『スコア早見表』


黒理(くろすじ)アゼル(初級)

7801点(+250)MVP



手差(てざし)ボンゴラ(初級)

7722点(+100)


激熱(げきあつ)カネリ(初級)

4790点(+100)


スコア100億点以上で救世主になれる!

まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!


To be next case

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