案件36.血黒(ちぐろ)の鎧
黒火手団は黒皇の義手を回収し、関係者以外立入禁止のエリアに訪れた。
「一般向けパンフレットには記載されてないが、政村呪物館の地下に『特定危険呪物保管庫』という部屋がある」
「そこには展示できない程の黒な代物があり、結界で厳重に保管されている」
黒皇は、職員向けのパンフレットに目を通しながら言った。
「血黒の鎧と共鳴したら大変だ!」
「早く行こうぜ!」
三人は地下へ続く階段を降りて保管庫にたどり着いた時、結界に何度もサーベルを打ちつけている血黒の鎧を発見した。
「血黒の鎧・・・!」
鎧は三人の存在に気づいたのか、結界への攻撃を止めゆっくりと振り向いた。
「我の邪魔をする者は・・・斬る!!」
血黒の鎧がサーベルを構えると、闇のエネルギーが彼を覆い尽くしさらに禍々しい姿へと変貌した。
「変異した!」
「三人がかりでやるぞ」
「この手で救ってみせる!」
かくして黒火手団対血黒の鎧の戦いが始まり、手始めに黒皇が黒呪毒を浴びせるが、効果は見られなかった。
「チッ、耐性があるのか!」
続いてカネリファイヤが血黒の鎧に殴りかかるが、避けられた挙句、右腕を斬り飛ばされてしまった。
「いでっ!」
カネリファイヤが怯んだ隙を狙い、血黒の鎧が追撃を仕掛けるが黒皇に阻止された。
「早く腕を回収しろ!」
両者のサーベルがぶつかり合う中、カネリファイヤは右腕を拾いくっつけた。
闇異の肉体は、常人よりも治癒力が優れているのだ。
その間にリチャウターは救手ハグネードの構えに入るが、血黒の鎧はそれを察し標的をリチャウターに切り替え、猛スピードで接近した。
「させるか!」
黒皇は、黒幻自在で鎧に追いつき素早い斬撃を仕掛けるが、傷一つ付けられないどころかこちらのサーベルが折れてしまった。
「くっ!」
血黒の鎧の間合いに入ってしまったリチャウターは、救手ハグネードを中断し防戦を強いられた。
救手パルマを決める隙を狙うも、素早い剣さばきで中々チャンスが訪れない。
そんな中黒皇とカネリファイヤが挟み撃ちを仕掛けるが、血黒の鎧に気づかれ距離を取られてしまった。
「右腕はもう平気なのか?」
「バッチリ動くぞ!」
カネリファイヤは右手の指をクネクネ動かしながら言った。
「それよりアイツ、ゲキアツ強いな!」
「動きが速い分、コズドより手強いかも・・・!」
「それだけではない、奴は黒に勘が鋭く戦い慣れている」
「千人の大軍を相手取ったのは事実らしいな・・・」
「こっちは1万の闇異をブッ飛ばしたんだぞ!」
「中世と今とじゃ、比べるの難しくない?」
「無駄話は終わりだ、また来るぞ!」
血黒の鎧は再び三人に襲いかかってきた。
「俺とカネリで奴を止める、もう一度救手ハグネードの準備だ!」
「言われるまでもねえ!」
「わかった!」
血黒の鎧は真っ先にリチャウターを狙うも、黒皇とカネリファイヤの連携攻撃に押され手も足も出せない。
ついにカネリファイヤは、血黒の鎧の隙を突いて羽交い締めにした。
「逃さねえぞ鎧ヤロウ!」
さらに黒皇は錬黒術で黒い輪を作り、血黒の鎧をカネリファイヤ諸共拘束した。
「今だボンゴラ!」
「オレごと救手ハグネードを決めろぉ!!」
「この手で救ってみせる!!」
『救手ハグネード!!!』
血黒の鎧は救手ハグネードを食らう直前、拘束を解こうと激しく抵抗し、その弾みでサーベルを投げ捨ててしまった。
そしてカネリファイヤと一緒に光の渦にのみ込まれ、両者は元の姿に戻っていった。
光の渦が消滅すると、血黒の鎧は落下の衝撃でバラバラになり、カネリは少しふらついていた。
「ごめんカネリ、大丈夫?」
「いや~目が回るけど、浄化されて気分ゲキアツ爽快だぜ~」
「・・・・・」
一方黒皇は腑に落ちない様子でいた。
「どうしたのアゼル?」
「いや、あれ程の実力がありながら、随分呆気なかったと思ってな・・・」
「気にし過ぎだろ」
「とりあえず鎧のパーツを集めて、袋にまとめて入れようか」
(奴が剣を投げ捨てたのが妙に引っ掛かる、仮に意図して行ったのなら目的は・・・?)
そう思いながら黒皇は、近くに落ちている鎧の兜を拾い上げた。
「・・・お前達、鎧から闇のオーラをほとんど感じないぞ」
「言われてみれば・・・マナキちゃん程の力じゃないと、特定危険呪物の完全浄化は出来ないんだっけ?」
「おっと、あれもだったな」
カネリが血黒の鎧が使っていたサーベルを拾おうとした時、黒皇はあることに気づいた。
(―まさか!)
「待てカネリ、それを拾うな!!!」
時すでに遅く、カネリはサーベルを手に持ってしまった。
「拾っちゃダメだって・・・カネリ?」
次の瞬間、カネリがリチャウターに襲いかかった。
「カネリ!?」
「我の邪魔をする者は・・・斬る!!」
カネリは虚ろな目で血黒の鎧と同じ台詞を呟きながら、リチャウターに連続で斬りかかってきた。
「カネリの動きじゃない!」
「サーベルだ!カネリはそのサーベルに操られている!それが血黒の鎧の本体だ!!」
「そうか!だから鎧の方には、闇のオーラがほとんどなかったんだ!」
黒皇はカネリの動きを封じるべく、黒呪毒を浴びせたが効果はほとんどなかった。
「サーベルの影響で耐性がついたか!」
血黒の鎧もとい、血黒のサーベルに乗っ取られてしまったカネリ!
果たして彼女を救い、呪われたサーベルを浄化することはできるのか!?
To be next case




