案件34.呪物館のご案内
5月に入ると同時に大型連休が始まったが、黒火手団は1日たりとも休むことなく通常運転である。
「ついに始まったぜ!ゴールデンウィーク!!」
「人の移動が激しい大型連休は、トラブルの発生率が黒に増加する、即ち人助けでスコアを稼ぐチャンス!」
「ゲキアツ稼いで、救世主に近づいてやるぜ!!!」
「トラブルはない方がいいんだけどなあ・・・」
事務所内で人助けに意気込むアゼルとカネリに対し、ボンゴラは複雑な心情だ。
すると二人の思いが通じたのか、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「依頼人だ!」
黒火手団事務所に訪れたのは、白くて立派な髭を生やした初老の紳士だ。
ボンゴラの案内で応接間のソファに座った後、胸ポケットから名刺を取り出した。
「黒火手団の皆様、私はこういう者でございます」
ボンゴラが受け取った名刺には、政村呪物館館長多々玲シャルドと書かれていた。
「呪物館?」
「ヒトリバコみたいな呪物を展示したり、保管したりする施設だよ」
「案件の内容は?」
「『血黒の鎧』という、特定危険呪物の浄化でございます」
「なにぃ!あのチグロの鎧だとぉ!?」
カネリは思わず、ソファから立ち上がって反応した。
「お嬢さんはご存知でしたか!」
「知らないから説明を頼む」
シャルドは血黒の鎧の写真を見せながら説明を始めた。
「今から500年以上前、ある王家に仕える屈強な騎士がいたのですが、王家に反逆して千人以上の大軍を相手に戦い、壮絶な死を遂げたのです」
「彼の鎧は戦いで返り血を浴び続けて赤黒く染まり、血黒の鎧と呼ばれるようになりました」
写真に映った血黒の鎧は、兜から足元まで赤黒い甲冑で腰にサーベルを差している。
「血生臭そうだな!」
「赤黒くなってるのは全部血なんだ・・・」
「保存状態が良好なのは、特定危険呪物故か・・・」
「騎士の怨霊が宿った鎧を手にした者は、事故や事件に遭い血まみれになるという不幸に見舞われたため、呪物を安全に保管できる我々が引き取ることにしたのです」
「ところが休館中に血黒の鎧を館内に入れた途端、付属のサーベルを手に暴れ出した上、館内の呪物たちが鎧に共鳴し活性化したのです」
「我々職員は全員無事脱出できましたが、鎧をはじめとする呪物たちが館内で蔓延り、入場者様の安全を確保できなくなりました」
「アンタらよく逃げれたな」
「我々は非力ですが、全員呪いに耐性があります」
「血黒の鎧もまた、館内の呪物に反応し動き出したようだな」
「ゴールデンウィーク初日なのに災難ですね」
「おっしゃる通りです!多くの入場者様に呪物を知って頂く絶好の機会だというのに!!」
「呪物はですね、完全に浄化したらその価値を失ってしまうのです!呪われてるからこそ、魅力があるのです!!」
「例えばこの『三面宿儺の指』も特定危険呪物の一つでして、大変強大な闇を放ち食べてしまいたい程愛おしく―!」
シャルドは突然指のような怪しい物を取り出し、恍惚とした表情で口づけをしようとしたが、ボンゴラたちは危険を感じ三人がかりで止めに入った。
「シャルドさんやめて下さい!!」
「―ハッ、失礼しました!私、『呪物フェチ』なものでして、呪物のこととなるとつい熱くなってしまうのですよ・・・」
シャルドは照れ臭そうな様子で、後頭部に手を当てていた。
「自らフェチと公言するのか」
「このオッサン、ゲキアツヤベーぞ!」
「とにかく浄化は、慎重にやらないといけませんね・・・」
「ご心配なく。聖女様程の力でない限り、特定危険呪物の完全浄化はそうそう出来ませんよ。だから貴方方に依頼したのです」
「わかった!この案件、オレたちにゲキアツ任せとけ!!」
昼頃、黒火手団はシャルドに案内され政村呪物館の入口に到着した。
「そうだ、これを持って行って下さい」
そう言ってシャルドは、館内のマスターキーと政村呪物館のパンフレットを取り出した。
「パンフレットは一般用と職員用で別れており、館内で保管されている呪物の詳細が記載されています。きっとお役に立つはずです」
「ありがとうございます」
「黒火手団の皆様、ご武運を祈っています!」
シャルドと別れたアゼル、カネリ、ボンゴラの三人は、変異して館内に足を踏み入れた。
中は昼にも関わらず真夜中のように暗く、不気味と静まり返っている。
「真っ暗だ!」
「血黒の鎧の影響なのかな?」
「相手は特定危険呪物だ、何が出来てもおかしくはない」
黒皇が照明のスイッチを入れるも、一切反応がなかった。
「この案件の要は、浄化技が使えるボンゴラお前だ。俺とカネリでサポートし、固まって行動するぞ」
「どんな呪物が相手でも、オレ様がブッ壊してやるぜ!」
「館内の物を勝手に壊したらダメだよ!」
「だから浄化技が重要なのだ」
黒皇は一般向けパンフレットを開き、館内案内図のページを二人に見せた。
「俺達の現在地はエントランスのここだ。館内は4つの展示エリアに分かれ、各エリアのテーマに応じた呪物が配置されている」
「血黒の鎧はどこにいるのかな?」
「まずはそれを展示する予定だった、『中世の間』を目指すぞ」
「行くぜヤロウども!人助けだ!!」
行け黒火手団!政村呪物館に巣食う血黒の鎧を浄化するのだ!!
To be next case




