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案件33.黒(ブラック)を新たに

 4月29日3時、傷つき危機に瀕したアゼルの前に、カネリファイヤとリチャウターが現れた。


救手(すくいて)アーム!!』


 リチャウターは悪堕者(シニステッド)が動揺している隙を突き、腕を長く伸ばしてアゼルを救出した。


『チャンプファイヤー!!』


 直後にカネリファイヤが口から火炎を放ち、敵を牽制した。


「酷い怪我だ!すぐ手当てするね!」

「軽傷だ!それより何故ここへ!?」


矛貫(ほこぬき)隊と一緒にここを制圧し、アゼルとさらわれた人々を助けに来たんだ!」

「オレたちにゲキアツ感謝しろよ!」


 アゼルがすぐに殺されないと確信したムックスは、予定より早く仲間たちと合流し事情を説明した。


 そこで隊長のオスタは、カネリとボンゴラをアゼルの救出に向かわせる許可を出したのだ。


「サエラがヒトリバコを持って逃走した、こいつ等を始末したら追うぞ!変異!!」


 アゼルは傷つきながらもゆっくり立ち上がり、黒皇(ブラックレクス)に変異した。


「お前が仕切んな!」

「あまり無理はしなくていいよ!」


 ついに黒火手団(くろびてだん)の三人が揃い、悪堕者(シニステッド)との激闘が始まった。




 一方矛貫(ほこぬき)隊は、3組に別れてアジトに突入しさらわれた人々を助けながら悪堕者(シニステッド)を撃破していった。


「真っ向からいくッス!」

「軽く捻ってやるよ!」


 矛貫(ほこぬき)隊の新人隊員、トゥエバとバークも聖明師(せいみょうじ)に変異し悪堕者(シニステッド)たちを蹴散らしていった。


「みんな、撃破した悪堕者(シニステッド)はヒトリバコに入れなさい!連れて行くのが楽になるわ!」


 隊員たちは副隊長フロンの指示に従い、人に戻った悪堕者(シニステッド)の構成員を彼らから奪ったヒトリバコに閉じ込めた。


 サエラはヒトリバコが入った手下げバッグを抱えたまま、その様子を物陰から見ていた。


矛貫(ほこぬき)隊にマークされていたとは・・・このアジトはもうダメだな)


「『ルール』、人質への攻撃を一切禁じる」

「!!」


 サエラの背後では、オスタの聖明師(せいみょうじ)が矛を構えていた。


闇淵(やみぶち)サエラ、お前はここで終わりだ」

「これはこれは、矛貫(ほこぬき)オスタ隊長・・・」


 サエラは冷や汗をかきながら、ゆっくりとオスタの方に顔を向けた。


「だがおれの終わりは、ここじゃねえんだよ!!」


 サエラは身体を向けると同時にバッグを大きく横に振り、中のヒトリバコが空中にバラ撒かれた。


「!!」


 オスタの意識が目の前のヒトリバコに集中した一瞬の隙に、サエラは背後から空間の歪みを発生させその中へ入って行った。


「じゃあなオスタ、次の闇深案件(やみぶかあんけん)でまた会おう。お前の部下と黒火手団(くろびてだん)にもよろしく―」


 次の瞬間オスタは空間の歪みに向けて矛を投げ入れたが、既に歪みは消え矛は床に落ちた。


「・・・・・!」


 3時44分、悪堕者(シニステッド)のアジトは制圧され、さらわれた人々は全員救助された―




『アゼル、偽情報を掴まされた上、余計な人助けをして任務に失敗したお前に黒理(くろすじ)家を名乗る資格はない』


『今日をもって、追放だ』


 29日の夕方、事後処理が終わり黒火手団(くろびてだん)事務所に戻った後、アゼルは黒理(くろすじ)家から追放を言い渡されたが、驚いた様子はなく静かにスマホをしまった。


「アゼル・・・」

「残念だったな」


「俺も黒理(くろすじ)家の方針に、向いてなかっただけだ」


「お前達、その・・・何だ・・・」

「あ、なんだよ?」


「ボンゴラ、任務の為とは言えお前を傷つけてすまなかった」

「そしてカネリ、落ちこぼれだと侮辱してすまなかった」


 アゼルはカネリとボンゴラに、深々と頭を下げ謝罪した。


「俺は天才などではない、落ちこぼれていたのは俺の方―」

「アゼル!落ちこぼれなんて、オレにもテメェにも言うな!」


「!?」


黒理(くろすじ)家から追い出されても、お前はオレのゲキアツライバルだ!」

「絶対ぇ勝ち越して救世主になってやる!それまで夢を諦めんなよ!!」


「アゼルは天才だよ。これからも一緒に救世主を目指し、人助けをがんばろう!」


「・・・そうだな、改めてお前達に礼を言う」


「そういやアゼル、黒理(くろすじ)家を追い出されたらミョウジどうすんだ?」

「オレの弟になるってんなら、激熱(げきあつ)を名乗ってもいいぜ!」


「いや、これからも黒理(くろすじ)だ」

「は?」


「俺の野望を実現するには、黒理(くろすじ)家の力が必要だ。いつか必ず乗っ取り、俺の(ブラック)で塗り潰してやる!」


 アゼルは野心に燃え不敵な笑みを浮かべ、いつもの調子を取り戻した。


「アゼルはそうでなくっちゃね」

「それならちっとはマシになるかもな!」




 さらにルニエルが現れ、採点の結果発表が始まった。


「今回は状況を考慮し、数日分の採点を発表します」


「そう言えば、昨日人助けした分のスコアの発表はまだだったね」

「だが昨日の採点は既に終わっているはずだ、スマホを確認すればわかる」


「まずアゼルは黒理(くろすじ)家の任務に失敗したものの、ヒトリバコに閉じ込められた人々の救出とアジト攻略に貢献したため、800点追加されます!」


「あの後矛貫(ほこぬき)隊から、アゼルが悪堕者(シニステッド)に寝返ってる間の悪事を咎められなくてよかったね」


「人助けの為に潜入したのだから当然だ、人や建造物への被害も可能な限り抑えアフターケアも手厚く行ったからな」


「オスタ隊長に、次またスパイをやる時は事前に連絡しろって、怖い顔で言われちゃった」

「奴らのルールに従う必要はないから気にするな」


「カネリとボンゴラは、昨日と今日で人命救助と多数の悪堕者(シニステッド)を撃破し、アジト攻略に貢献したため、1400点追加されます!なお今回のMVPはオスタになります!」


「あの人隊員たちを指揮しながら、悪堕者(シニステッド)をバンバン倒してたよね」

「ツドウのライバルなだけあって、ゲキアツ強かったよなあ」


「採点は以上になります、お疲れ様でした!」


「スコアが結構貯まってきたね、この調子なら来月中に1万点を超えそうだ」

「何度も言うがカネリ、お前が持つ10万点などすぐに追い越してやる!」


「10万?もうもってねえぞ」

「は?どういうことだ!?」

「そっか、アゼルは知らないよね」




 アゼルはカネリがフードバンク『ゲキアツメシ』のために、10万点を使ったことを知った。


「・・・まさかお前がオーナーとはな」

「文句あんのか?」


「別に、せいぜい10万点を無駄にしないことだ」

(こいつがスコアを失って喜ぶのは(ブラック)ではない)


(俺も将来を見越して、他に出資するのもアリだな・・・)


「仲直りも出来たことだし、三人でご飯食べに行こっか」

「おいーね!どこで食う!?」

「今回は俺が奢ろう、色々迷惑をかけたその詫びをさせてくれ」


「いいのアゼル?」

「ただし、一人1万イェンまでだ」

「ハアア!?そこでケチんなよ!」

「まあまあ・・・」


 こうして黒火手団(くろびてだん)の三人が揃い喜びを分かち合うも、4月が終わると同時に新たな波乱が始まるのであった―

 



『スコア早見表』


手差(てざし)ボンゴラ(初級)

7545点(+1400)


黒理(くろすじ)アゼル(初級)

7463点(+800)


激熱(げきあつ)カネリ(初級)

4699点(+1400)


スコア100億点以上で救世主になれる!

まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!


To be next case

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