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案件21.特級異救者(イレギュリスト)ツドウ

 アダウチオニに追い詰められた黒火手団(くろびてだん)の前に、新たな異救者(イレギュリスト)エスクディアンが現れた。


「エスク?邪魔するならテメェも―」


 エスクディアンは既に、アダウチオニの懐に入りトゲがついた盾で殴りかかってきた。


『バッシャーシールド!!』


 黒火手団(くろびてだん)の攻撃が一切通じなかったアダウチオニが、後方10数m先まで殴り飛ばされた。

 エスクディアンはその隙に、気絶したカネリを抱きかかえ黒皇(ブラックレクス)に引き渡した。


「よろしくね、お兄ちゃん」

Mr.(ミスター)ツドウ、貴方が駆けつけるとはな・・・」


 一方アダウチオニは立ち上がり、斧を振り上げオーラを集中した。


「恨みを込めて、まとめて叩き割ってやる!!」


憤怒爆破(ふんどばくは)ぁ!!!』


 アダウチオニは斧を地面に叩きつけ大爆発を引き起こしたが、爆風の規模を上回る巨大な障壁が出現し完封された。


「なんだと・・・!?」

「『ジャンボシールド』だ。言ったろ、おれは異救者(イレギュリスト)きっての盾男(たておとこ)だって」


 役目を終えた障壁は消え去り、エスクディアンは盾を構えた。


「そして君を拘束する」

「やれるもんならやって―」


 その時、空間の歪みが突然現れアダウチオニを引きずり込んだ。


「!?」

「なっ!?ふざけんな待て―」


 空間の歪みはアダウチオニをのみ込み消滅した。


「・・・逃げられたか」




 空間の歪みにのみ込まれたアダウチオニは、悪堕者(シニステッド)のアジトに飛ばされ目の前にはサエラがいた。


「危なかったなコズド」


 しかしアダウチオニはコズドに戻った後、鬼の様な形相でサエラの胸ぐらを掴んだ。


「何の真似だサエラ!?オレをジャマをするな!!」

「落ち着けよ、お前に特級はまだ早い」


 サエラは余裕の表情を崩すことなく、掴んだ手に優しく手をあてた。


「特級だと?」

「エスクディアンのことだ。奴は最強クラスの異救者(イレギュリスト)、その強さはよ~く理解(わか)っただろ?」


「何より闇異(ネガモーフ)の力、残り少ないじゃねえか」

「ッ!」


「コズド、おれはお前の復讐に共感し果たしてやりたいから助けたんだぜ」

「おれの言う通りにすれば、必ず上手くいく」


「・・・・・!」


 コズドは不満な顔でサエラを解放し、無言でその場を去った。


「フゥ、闇深案件(やみぶかあんけん)ほど世話が焼けるもんだ・・・」




「「ウロがさらわれたぁ!!?」」」


 カネリが意識を取り戻した後、黒火手団(くろびてだん)はウロの両親がいる避難所に赴き、ウロの発見からさらわれるまでの一部始終を説明し、三人は深々と頭を下げた。


 ウロと両親を会わせる約束が果たせず、自分たちの不甲斐なさを悔やみながら謝罪の言葉を述べた。


「本当に申し訳ございません、自分たちの力が及ばないばかりに・・・」

「ウロは無事なんですか!?」

「生きてますよね!?」


 ウロの両親は大変驚き、落ち着かない様子でボンゴラに問いかけた。


「それは・・・」

悪堕者(シニステッド)はこの『ヒトリバコ』に人々を閉じ込め、アジトに持ち帰っているようです」


 ボンゴラの前に現れアダウチオニと同じ小箱を持つ青年の名は、『盾守(たてもり)ツドウ』。


 エスクディアンの正体であり、青空のように澄んだ長い髪を束ね、盾をモチーフにした首飾りや腕輪を身につけた人物である。


「奴らが人々をさらう目的はわかりませんが、今仲間がアジトの捜索に全力を尽くしています」


「ウロ君は必ず取り返します、それまでおれたちを信じ待っていただけませんか?」


 ツドウもウロの両親に深々と頭を下げた。


「特級異救者(イレギュリスト)のあなたが言うのなら・・・」

「ウロのこと、どうかお願いします!」




 その後黒火手団(くろびてだん)はツドウと共に事務所に戻り、悔やむ気持ちを切り替え悪堕者(シニステッド)にさらわれた人々を取り返す準備をしていた。


「ツドウさんありがとうございます、何から何までお世話になって」

「大丈夫、おれたちのモットーは『助け合って人助けする』だろ?」


 黒火手団(くろびてだん)は、ツドウがリーダーを務めるチーム『ノゾミモチ』の傘下にあり、訓練生時代は彼らの師事を受け、プロになってからは案件を斡旋してもらっていたのだ。


Mr.(ミスター)ツドウ、ヒトリバコに閉じ込められた人々を解放する方法は?」


「君たちを助けに行く前、悪堕者(シニステッド)の一人を捕まえた時に聞いたんだけど」

「蓋を開けることで、人々を吸い込んだり出すことができるんだ」


「こんな手のひらに収まるほどの小さな箱が、数十人の人を吸い込み閉じ込めるなんて・・・」

闇異(ネガモーフ)の力で生み出された呪物の一つだね、と言ってる側から・・・」


 話の途中でツドウのスマホから、タテタテタテタテ盾男ぉ!と奇妙な着信音を流れた。


「何だその常軌を逸脱した着信音は」

「いいでしょ、君たちもどう?」


 カネリとボンゴラは微妙な表情をしており、察したツドウはそのまま通話を開始した。


「もしもしハズミ?・・・うん、うん、見つかった!?オッケー、これから行くから中の様子探ってて。万一のことがあったら任せるよ、よろしく!」


「というワケで、悪堕者(シニステッド)のアジトが見つかったから助けに行こう!」

「行くぜヤロウどもッテテテ・・・」


 カネリは威勢よく叫んだが、アダウチオニから受けた傷に響いてしまった。


「残念だけど、一番怪我してるカネリはお留守番だよ」

「カネリ、みんなの救出はおれたちに任せて!」


「しょうがねえなあ、オレの分もゲキアツにがんばれよ!」


「言われるまでもない、(ブラック)に決めてやる」

「今度こそ、この手で救ってみせる!!」


 アゼル、ボンゴラ、ツドウの三人は、準備を終え事務所を出発した。


 さらわれた人々を奪還し、ウロ親子の約束を果たすために!


To be next case

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