案件20.敗 北
黒火手団の前に未知の敵、浅刺コズドことアダウチオニが現れた。
「浅刺って・・・!」
「貴様、奴の身内なのか!?」
黒皇とリチャウターは心当たりがあるようだが、カネリファイヤは迷わず攻撃を仕掛けた。
「だれだか知らんが、『チャンプファイヤー!!』」
『怨衣!!』
アダウチオニは心の中で技を叫ぶも、為す術なく激しい炎にのみ込まれてしまった。
と思いきや、赤紫色のオーラに包まれチャンプファイヤーを耐え凌いでいた。
「何っ!?」
続いてアダウチオニは、大きな斧を高く振り上げ力を溜め始めた。
斧から赤紫のオーラがボッと溢れ出したのを見て、リチャウターは危険を察知した。
「カネリ離れるんだ!!」
『憤怒爆破!!!』
アダウチオニが斧を地面に叩きつけた瞬間、凝集されたオーラが解放されドーーーンと大爆発を引き起こした。
爆発地点の直径およそ100mが更地となり、カネリファイヤは100mより先にある建物まで吹き飛ばされた。
一方リチャウターは、『救手アーム』で両手を巨大化して爆発から人々を守り、黒皇は『黒幻自在』による高速移動で、人々を安全な場所まで避難させた。
「全員助かったな、黒に危なかった・・・」
オーラを纏ったアダウチオニは、カネリファイヤに追撃すべく全速力で迫った。
「このヤロウ!!」
敵の接近に気づいたカネリファイヤは、体勢を立て直し右拳を激しく燃え上がらせた。
『バーニングストレート!!!』
必殺の拳が、アダウチオニのボディにめり込り反動で上半身が前のめりになる。
勝負は決まったと思いきや、アダウチオニはすかさず左手でカネリファイヤの首根っこを掴み、そのまま持ち上げた。
「が・・・!」
「カネリ!」
「炎上しない・・・バーニングストレートも効かないのか!?」
「そういやテメェが、『バズレイダの英雄』らしいな」
「この程度で英雄とは、笑いを通り越して怒りが沸いてくるぜ」
「オ・・・オレを・・・バズレイダの英雄って・・・呼ぶな・・・!」
その間黒皇とリチャウターが、カネリファイヤを救出すべく攻撃を仕掛けた。
『錬黒術・剣!!』
『救手パルマ!!』
黒皇は漆黒の剣でアダウチオニの背中を貫き、リチャウターは左脇腹に手のひらを当て光の波動を流し込んだ。
「・・・鬱陶しいぞテメェらぁ!!!」
二人の同時攻撃でもアダウチオニは止まらず、カネリファイヤを掴んだまま左腕でリチャウターと黒皇を薙ぎ払い、最後にカネリファイヤを地面に叩きつけた。
「まずはテメェだ、恨みを込めて叩き割ってやる!」
アダウチオニが振り上げた斧に、再び赤紫のオーラが溢れ出す。
『復讐果断!!!』
カネリファイヤは、アダウチオニの怒りの一振りで縦に叩き割られ爆発した。
「カネリーーー!!!」
爆発の中からカネリが現れたが、身体中に痣が出来て意識を失っていた。
リチャウターが『救手アーム』で腕を伸ばし助けようとするが、アダウチオニに腕を掴まれたまま振り回され、近くの建物に激突した。
「くろびてだん!!」
「ウロ君・・・みんな・・・逃げるんだ・・・!」
残された黒皇は、負傷者を担ぎながら人々に呼びかけた。
「動ける者は、動けない者に手を貸し下がれ!下がるのだ!!」
(チィッ!『黒殺刑』の再使用にはまだ時間が・・・!)
「・・・コイツら全員、捕まえるんだったな」
アダウチオニは、背中に刺さった剣を抜き左脇腹を押さえながら、成人男性の手に収まるほどの小さな箱を取り出した。
そして箱の蓋を開けると、なんと一般市民が次々と箱へ吸い込まれていった。
「何っ!?」
「うわあああ!!!」
「助けてぇ!!」
「ウロくーーーん!!」
リチャウターが手を伸ばすも虚しく、ウロも箱の中へ吸い込まれていった。
「貴様っ!」
「これでテメェは終わりだ」
そう言ってアダウチオニは、無防備になったカネリにトドメを刺そうと斧を振り上げる。
黒皇が、急いで救出に向かおうとしたその時―
『サドンシールド!!』
突然現れた盾が、アダウチオニの攻撃からカネリを守った。
「あぁっ!?」
「あの技はまさか・・・!」
上空から新たな闇異が降り立った。
空色の甲冑を身に纏い、右手に盾を装備している。
「遅くなってごめんね、黒火手団のみんな」
「だれだテメェは!?」
「おれは盾徹異救者、エスクディアン」
「異救者きっての盾男さ!」
To be next case




