案件19.強敵現る
救世記念祭100周年の翌日、悪堕者の犯行声明を受け異救者たちは各地の警戒を強化し、黒火手団も近隣の街をパトロールしていた。
「・・・・・!!」
「怪しいヤツ!怪しいヤツはいねえか!?」
アゼルとカネリは血眼になり、キョロキョロと辺りを見回している。
「落ち着こうよ二人とも、これじゃあおれたちが怪しい奴だよ」
「甘いぞボンゴラ!敵はいつどこから仕掛けるか予測困難、あらゆるケースを想定し黒に対処すべきだ!」
「スコアで勝っても、お前には負けないぜ!」
ゴミ捨て場やマンホールの中まで、アゼルとカネリは競い合うように悪堕者を探している。
その様子を見ていたボンゴラは、呆れ果てていた。
(カネリはともかくアゼルまで・・・。スコアで差をつけられたのが、よっぽど悔しかったんだな)
カネリは前日の事件で大手柄を上げ、所持スコアは10万点以上となった。超大物ルーキーの爆誕である。
「ママみてー、くろびてだん」
「激熱カネリだ!」
ボンゴラは近くにいる人々が、自分たちに注目していることを気づき、軽く一礼をした。
(カネリの活躍のおかげで、黒火手団の存在が世間に知られるようになった)
(一方で敵にも知られたはず、より気を引き締めて人助けしないと・・・)
その時、男女二人がボンゴラに話しかけてきた。
「すみません、私たちの子どもを探していただけませんか!?」
「名前は後舞ウロ、5歳の男の子です!」
「迷子ですか?髪の色や服装などの特徴は?」
「髪は紺色で、赤いシャツと黒い半ズボンを着て―」
次の瞬間、ボンゴラの背後でドーンと衝撃音が聞こえた。
「何だ!?」
「闇異が暴れてるらしいぞ!」
「二人は安全な場所へ避難して下さい、ウロ君はこの手で探し出します!」
「すみません、どうかお願いします!」
黒火手団は異救者に変異し、衝撃音があった場所へ急いだ。
三人が目的地にたどり着いた時、周囲の建物は半壊し十数人ほどの人が傷つき倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
「あ・・・あいつにやられた・・・」
「オレTUEEE!!!思い知ったか!オレこそが最強の悪堕者だ!!」
黒火手団の前に、2本の角を生やした筋肉質の闇異が現れ、自分の強さを誇示するように様々な決めポーズをとっている。
「なんだコイツ?」
「この惨状は貴様の仕業か?」
「その通り!オレは我強闇異アイムストロン!」
「お前らにも、オレがTUEEEってことをおじえっ!!!」
『黒殺刑!!!』
黒皇は、敵が戦闘態勢に入る前に仕留めて爆破し、人の姿に戻した。
「汚えぞアゼル!」
「黙れ、これが黒だ」
(いきなり必殺技か、手柄を上げようと焦ってるな・・・)
「応援を呼んで、みんなを助けよう」
黒火手団が人々の救助を行っている最中、リチャウターは瓦礫の中から小さな子どもを助け出した。身体中は汚れているが、幸い大きな怪我は負っていない。
「もう大丈夫だよ・・・!この子もしかして!」
救助した子どもは5歳くらいの男の子で、髪は紺色、服装は赤いシャツと黒い半ズボンであることから、先程の両親が言った迷子の特徴と一致していた。
「君、名前わかる?」
「ごまい・・・ウロ・・・」
ウロは両親とはぐれ悪堕者の襲撃に巻き込まれたせいか、疲れた様子ですすり泣きながら返事をした。
「間違いない、さっき君のお父さんとお母さんに会ったんだ。手当をしたら、連れて行ってあげるよ」
「本当!?」
「もちろん、おれたち黒火手団が約束するよ」
ウロは両親に会えると知り、元気を取り戻した。
「迷子が見つかったか」
「よかったな!しっかし悪堕者って、全然大したことねえな」
「あんなザコと一緒にしてんじゃねえ」
黒火手団の前に、謎の男が現れた。
男は顔に傷があり肌は黒く、ガッシリとした体型で身長は180cm以上あり、鋭い目をしている。
また髪はボサボサで紫色だが、毛先が血のように赤く染まり、自身の体格の半分以上はある両刃斧を担いでいた。
「・・・その口振り、貴様も悪堕者で間違いないな?」
「ああ、オレも悪堕者―」
その瞬間黒皇は、悪堕者と名乗る男に『黒呪毒』を浴びせた。
「悪いが動きを封じてもらう、詳細はあとで聞こう―!」
「いきなり変なもんブッかけやがって・・・!」
男は黒皇の呪いが、全く効いてないようだ。
「呪いに耐性があるのか!?」
「恨みを込めて叩き割ってやるよ・・・変異!!」
男は闇のエネルギーに包まれ、闇異に変異した。
生身よりさらに大きく逞しくなり、頭部から生えた角はアイムストロンよりも力強く、表情は激しい怒りに満ちていた。
その様子を見たカネリは、直感で強敵だと理解した。
「気をつけろ!コイツはさっきのヤツとはケタちがいだ!」
「オレは浅刺コズド、そして復讐闇異アダウチオニ」
「この世界に、恨みを込めて叩き割る男だッ!!!」
To be next case




