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案件18.その名は悪堕者(シニステッド)

「ちくしょううううう!!!」


 仲間の大多数を失いヤケになった闇異(ネガモーフ)たちが、地上と空中、あらゆる方向から一斉射撃を行うが、カネリファイヤはビクともせず、背中が激しく燃え口元が光り出した。


 再び最大火力チャンプファイヤーが放たれると思いきや、カネリファイヤは顔を上に向けた。


『メテオファイヤー!!』


 カネリファイヤの口からオレンジ色に輝く火球が放たれ、上空を高く飛び地上から数千mの高さに達した瞬間、バァンという音を立てて火球が破裂し、無数の炎に分裂した。


 そして無数の炎は、土砂降りの雨となって地上に降り注ぎ、闇異(ネガモーフ)たちの身体を貫き焼き尽くしていった。


「うぎゃあああああ!!!」

「ギエエエエエ!!!」


 炎の雨はかなり広い範囲に降り注いだが、幸い結界までは届かず中の人々は無事だ。


「残り、1です」

「ちと、飛ばしすぎたか・・・」


 ついにカネリファイヤは、結界を張っているジャイアンドームの元へたどり着いたが、大技を連続で使い疲れ果てていた。

 

「我が同胞1万以上を、たった一人で撃破するとは大したものだ・・・」

「だが先の戦いで、力をほとんど使い切ったようだな・・・」


「このジャイアンドームが、引導を渡してやろう・・・」


「あ、コイツの頭に矢印がついてる」

「何をゴチャゴチャ―」


 勝負は既についていた。カネリファイヤの最後の一撃で、ジャイアンドームは回転しながら上へフッ飛ばされた。


 そして地面に激突と同時に爆発、人に戻り気を失ったことで結界が消失し、1万人の異救者(イレギュリスト)と1千万人の一般人は解放された。


「5分を過ぎました、お疲れ様でした」


 11時8分、ルニエルはカネリファイヤの胸に闇異鍵(ネガモルキー)を差し込み、力を再び封印した。

 すると右半身の炎が消えてカネリに戻り、黒焦げになった地面の上に倒れた。


「あ~、ゲキアツに疲れた・・・」


 そう言ってカネリも、意識を失ってしまった。




 カネリが目を覚ますと、目の前にボンゴラがいた。


「カネリ!」

「ここは・・・オレの部屋?」


「やれやれ、随分派手に暴れてくれたな」

「祭りは・・・みんなはどうなったんだ!?」


「中止に決まってるだろ」

「記念祭に参加した人は、みんな無事だよ」


「ただ、たくさんの闇異(ネガモーフ)が各国で暴れて、大変だったんだ」

「侵攻したセイブレスは全て撃退し、手の空いた異救者(イレギュリスト)たちが総力を上げ事態を(ブラック)に収めたがな」


「クソッ、もっとオレが戦えていれば・・・!」

「馬鹿を言え、あの力を街で使えば事態が悪化するだけだ」


「カネリが聖地でがんばってくれたから、被害が大きくならずに済んだんだ。大手柄だよ」

「・・・そっか」


「そうだ!記念祭のスタッフたちが、助けてくれたお礼にたくさんの食べ物をくれたんだ」

「キッチンにあるから、全部カネリが食べていいよ」

「いやったーーーーー!!!」


 17時32分、カネリはベッドから飛び起きて自分の部屋を飛び出し、キッチンのテーブルを埋め尽くすほどの食べ物に手をつけた。


 アゼルとボンゴラもキッチンにやって来た時、ルニエルが姿を現した。


「カネリが起きたところで、黒火手団(くろびてだん)の獲得スコアを発表します!」


「まず、テロリストの襲撃で救世記念祭(きゅうせいきねんさい)が中止になったため、獲得できるスコア100点は無効になりました」


「みんな楽しみにしてたのに、あんな惨事になってしまって本当に残念だ・・・」

「今までは脅迫状や当日の襲撃があっても、異救者(イレギュリスト)の対応で予定通り開催できたが、今回は事態が余りにも(ブラック)過ぎた・・・」


「ですが、アゼルとボンゴラは一般参加者1千万人以上の避難と爆弾捜索に貢献し、結界消失後は各地の闇異(ネガモーフ)の撃破と人命救助に協力したため、両者2000点追加します」


「今回は素直に喜べないな・・・」

「記念祭は中止になったが、獲得スコアが跳ね上がったのは皮肉だな」


「そしてカネリですが、1万人以上の闇異(ネガモーフ)に対し人的被害を出さずたった一人で撃破、結界解除で1千1万人以上の救出、それら二つの活躍で被害拡大の阻止に大きく貢献しました」


「ただし、攻撃で聖地の景観を半分以上損ねたため減点としますが、MVPボーナスと合わせて・・・9万9500点追加します!」

「いよっしゃあああああって、喜んじゃダメだよな」


「いや、ここで喜ぶならいいよ」

(まさかこいつが、10万点近く獲得するとは・・・!!)


 カネリが今回のMVPだと確信していたが、想定をはるかに上回るスコアの獲得にアゼルは冷汗をかいていた。


「発表は以上です、お疲れ様でした!」


 役目を終えたルニエルは一瞬で姿を消し、アゼルは落ち着きを取り戻した。


「・・・いずれにせよ、救世会(きゅうせいかい)上層部は今後の対応で忙しくなるな」

「マナキちゃん、大丈夫かな?」

「テレビ見りゃわかるだろ」


 そう言ってテレビの電源を入れると、マナキと救世会(きゅうせいかい)の幹部たちが会議をしている様子が映されたが、すぐに画面が切り替わった。


『緊急速報です、救世記念祭(きゅうせいきねんさい)を襲撃したテロ集団が、動画投稿サイトやSNSに犯行声明と思われる動画をアップしました』


『こちらでもノーカットで放送しますので、どうぞ御覧下さい』


 今度は犯行声明の動画に切り替わり、そこにはサエラが映っていた。


闇淵(やみぶち)サエラ・・・」

「コイツがテロのリーダーか!」


闇淵(やみぶち)サエラだ。おれからのサプライズプレゼント、楽しんでいただけたかな?」


「みんなを危険な目に合わせて、何がプレゼントだ!!」


 普段穏やかなボンゴラでも、サエラの悪行に対し怒りをあらわにした。


『だがこれは挨拶代わり、本当の闇深案件(やみぶかあんけん)はここから始まる』

「まだ何かやろうってのか!?」


『紹介しよう!闇の赴くままに、世界を悪の底に堕とす【悪堕者(シニステッド)】だ!!!』


 サエラの前に複数人の闇異(ネガモーフ)がぞろぞろと現れた。


「シニステッド!?」

「こいつら、(ブラック)リストに載ってた・・・」


 サエラはささっと画面から姿を消し、代わりに闇異(ネガモーフ)の一人が声明を続けた。


『改めて我々の名は、悪堕者(シニステッド)。我らの目的は先程述べた通り、世界を悪の底に堕とすこと』


『我々は、救世主ルニディムの人助けを真っ向から否定する、人の本質は闇であり悪なのだ!』


『そしてそれを証明するため、君たちに挑戦する。決行は明日から、楽しみにしてくれたまえ』


『闇の赴くままに!闇の赴くままに!!』


 闇異(ネガモーフ)たちが、悪堕者(シニステッド)のスローガンを掲げたところで動画が終了した。


『・・・以上が、犯行声明の動画となります』


「「「・・・・・!」」」


 黒火手団(くろびてだん)の三人は、顔をしかめたまま黙り込んだ。


 悪堕者(シニステッド)という巨悪の登場により、新たな戦いが始まろうとしていたからだ―


 


『スコア早見表』

 

激熱(げきあつ)カネリ

100184点(+99500)MVP


黒理(くろすじ)アゼル

3957点(+2000)


手差(てざし)ボンゴラ

3801点(+2000)


スコア100億点以上で救世主になれる!


To be next case

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