案件16.閉ざされた避難所
突如聖地で始まった、1万人以上の異救者と10万人以上の闇異の戦い。
10倍近い戦力差に加え、1千万人以上の人を守らねばならないという不利な状況の中、異救者たちは果敢に立ち向かった。
「無理に攻めるな、一般人の安全が最優先だ!」
「中央の避難所へ集めろ!守りを固めるんだ!」
「アタシが牽制する、その間に彼らをお願い!」
「でももし避難所に闇異が現れたら・・・」
「大丈夫だ、聖女様が守って下さる!」
一般参加者の避難所は記念碑がある聖地の中央であり、そこでマナキは闇異の侵入を防ぐ巨大な結界を張っていた。
アゼルとボンゴラも黒皇とリチャウターに変異し、一般人を守りながら闇異と戦っているが、敵の動きに対し違和感を抱いていた。
「こいつらおかしいぞ・・・」
「攻撃する意志が、あまり感じられない?」
その間に異救者たちは一般人を守りやすいよう、避難所を取り囲むように円陣を組み始めた。
「一般市民の避難、全員完了しました!」
「よし、押し返すぞ!」
10時36分、ついに異救者たちの反撃が始まろうとしていたが、サエラはこれを待っていたかのように邪悪な笑みを浮かべていた。
「よぉし今だ、閉じ込めろぉ!!」
サエラが合図した瞬間、異救者たちの目の前に白い半透明の壁が現れた。
なんと、聖地の1割を覆い尽くす巨大な結界が張られ、異救者と一般人が閉じ込められてしまったのだ。
『アーハッハッハ!マヌケな奴らめ、まんまと引っ掛かってやんの!』
サエラは会場のモニターを再び乗っ取り、異救者たちを嘲笑った。
「こんなもの、すぐに破ってやる!」
『おっと、この結界は壊さないことをオススメするぜ』
『避難所のどっかにある爆弾と連動していて、ヒビ一つ入れるだけでドカンといく仕掛けだ』
「そんなハッタリに乗らないぞ!」
「避難所に危険物がないことは確認済みだし、参加者の手荷物検査は徹底してるんだ!」
『どうぞご自由に、か弱い一般市民が犠牲になってもいいのなら』
「ぐっ・・・!」
1千万人以上が密集している避難所で爆発が起きれば、甚大な被害になりかねない。
異救者は一人たりとも、結界に手を出せなかった。
一方避難所では、サエラの映像を見た人々が再びパニックになっていた。
「ここに爆弾があるんだって!?」
「冗談じゃない!早くここから出してくれ!」
「みんな落ち着いて!」
『さあ野郎ども、異救者はセイブレスと戦いここに閉じ込められ、人員はカツカツだ』
『そのスキに街中で暴れ、建物を壊し、金品を奪い、人々に恐怖と絶望を与えてやれ』
『平和の祭典100周年を、史上最高の闇深案件にしてやるのだあああ!!!』
総勢10万人以上の闇異たちは、次々と空間の歪みへ戻っていった。
「やってくれたな、闇淵サエラめ・・・!」
「アゼル、避難所に行って爆弾がないか確認しよう!」
1万人以上の異救者と言えど、パニックに陥った1千万人以上がいる避難所から、爆弾を見つけ出すのは簡単ではない。
「ここは任せるぜ、覆尽闇異ジャイアンドーム」
「・・・ああ」
ジャイアンドームは、全長3m近くあり顔が半透明のカプセルに覆われた闇異である。
サエラは他の闇異と一緒に、空間の歪みへ消えて行った。
闇異軍団の移動は順調と思われたが、突然放たれた火炎が空間の歪みをかき消し、約1万の闇異が聖地に取り残された。
「なにっ!?」
「誰だ!」
「黒火手団最強の女、カネリファイヤこと激熱カネリだ!」
「オレ様が来たからには、テメェらの好きにはさせないぜ!!」
10時47分、ようやくカネリファイヤが現場に到着した。
「黒火手団?カネリ? そんなヤツいたか?」
「知らん」
「んだとテメェら!!」
黒火手団は結成してまだ1ヶ月も経っていない、知名度が低いのは仕方のないことだ。
「馬鹿な女だ、たった一人でオレ達に挑むとは」
「たっぷり可愛がってやるぜ」
「無謀だ・・・」
「おい君!ここは退いて応援を呼ぶんだ!」
結界の中の異救者たちの声は、カネリファイヤには届かない。
しかし彼女の目は、圧倒的な数を前にしても動じず激しく燃えていた。
「あんまナメてっと、ゲキアツにしてやるぜぇ!!!」
10時51分、結界の外でカネリファイヤと総勢1万以上の闇異軍団の戦いが始まった!
To be next case




