貴方はどの角度が好き?
生きずらいと感じたことは、ありますか?
周りとの感覚の違いに気づいたのは、小学校を卒業する辺りから。その前までは『変わってる』と言われ過ぎて、何とも思わなかった。
でも年齢を重ね、思春期に入ると、そうもいかなかった。何とも言えない感情が生まれてきて、周りから「変わってる」と言われないように、とりあえず共感することだけをしてきた。
荒波を立てずに、争いごともせずに、ただただ平凡な毎日を送ることに意識した。それでもやっぱり違和感を感じることはあって、周りとの感覚の違いにようやく気付く。
なぜ爪が短いだけで、からかうの?
なぜ転校生だから無視をするの?
なぜ声が大きい先生は、嫌いにならなきゃいけないの?
なぜ自分が好きなことを好きって言っちゃダメなの?
男ならサッカーなの?女はおしゃべりなの?
「めんどくせぇ」
「でた佑大の”めんどくせぇ”」
高校生になった佑大は、カースト制度で言う上位に位置していた。
髪を短くし、適当に茶色に染めて、ピアスを1つか2つ開けておく。目が見えない場合は、少しお洒落なメガネをして、制服を着崩して、適当に話をすれば、あっという間に今の位置にいた。
佑大自体はカーストなど気にしてはいなかったのだが、いろいろと荒波を立てないでいられる位置はここなのだと早々に気付いた。だからこのポジションにいる。
「有名な女子高のお誘いじゃん?佑大も行こうよー」
「俺は良いって…。」
「でも佑大が気になってる子がいるからさ、連れてくって約束したんだよ。」
勝手に約束をし、本人の承諾は無しなのか…そう思いつつも佑大は行く約束をした。
「あそこの女子さ、女子しかいねぇから、告ったら即良しの子多いらしいよ。」
「えーまじ?じゃ彼女作りたくなったら、そこに行けば楽じゃん。な、湊も行くっしょ?」
「やー…俺はその日用事あるから。」
「そうなん?おっけー。今度誘うよ。」
「サンキュー。」
友達の中でも、基本的に言い出しっぺの章、なんだかんだノッて遊んでいる翔平に、微妙な距離感を保つ湊、そしてめんどくさがりな佑大の4人でいることが多かった。
「あ、どこ行くんだよー佑大。」
「トイレ―。」
仲の良い友達でも佑大は、時々煩わしく感じる時がある。ギャーギャー騒ぐのは勿論好きだ。でもずっと騒いでいられるかというと、そうではなく、学校の中でも時々教室に居たくなくなる。理由は特にないが、たまに、リセットしたくなる。
トイレに行くといった雄大は、校舎では最上階である3階の図書室にいた。
図書室の奥、そして窓際の隅っこに座り、机に伏せる。
耳を澄ませると男女の声や工事の音、鳥のさえずりが、ただただ聞こえる。自然と耳に入る音は、何も情報を持たない。その感覚が佑大には心地よく感じて、リセットしたい時には、ここへ来るようになった。
ふと人の気配を感じて、窓とは反対の方に目をやると、2人の女子生徒がいた。女子生徒は佑大に気付いていいないのか、2人はお互いに本を読みあっていて笑いあっていた。漫画の表紙は、カバーか何かで隠されていたが、少しずれていて「感動のBL作」と書かれていた。
佑大はぼんやりとその光景を眺めていると、女子生徒の方が佑大に気付き、漫画をさっと隠す。そして、代わりに教科書のようなものを出して、何やら勉強をし始めた。
(好きなものくらい堂々と見てりゃ良いのに…)
隠した漫画の内容は、佑大も理解していた。なぜなら姉がそういう類が好きだから。
佑大は思う。
人間はめんどくさい。