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秦の誓い  作者: rona
序章 戦国時代の幕開け
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智襄子の愚、段規の賢、任章の智

 さてです、智宣子ちせんしがなくなると、智襄子ちじょうしは跡を継ぐこととなりました。


 智宣子がなくなってどのくらいになってから氏の命運がかたむき始めたのかはよくわかりません。むしろ智氏は智襄子のもと勢力を拡大していきます。


 智宣子がなくなってから数年がたったころでしょうか、ある時、韓康子かんこうし魏桓子ぎかんしという有力者と、智襄子は藍台らんだいという建物で宴を張りました。


 智襄子は酔って韓康子にたわむれ、さらにその配下で重要な家臣としても知られる段規だんきにふざけました。


 宴の様子を注進したものがいたのでしょう、智氏一族で配下の智國ちこくがこれを聞きました。


 智國は智襄子をいさめました。


「あなたが内乱に備えなければ、内乱は必ずやってまいりますぞ」


智伯は答えました。


「晉国の内乱なんてものはな、私の思惑次第で起こるものなのだ。私が晉国に内乱を為そうと思わなければ、だれが敢えてそのようなものを起こそうとするだろうか」


 智國はあえてさらに諫めました


「『尚書しょうしょ夏書かしょにあるではございませんか。『一人に三つ失敗があれば、うらみはどうして明かなるものだけにあるだろうか。あらわれない水面下で動く感情や、物事の機微を図りなさい』と。


 ぶゆ、蟻、蜂、さそりのような卑小ものでも、いざとなれば人を傷つけ、病から死に至らせますのですぞ。」


 しかし智襄子は無関心で、智國の諫言を聞きいれることはなかったのでした。


 さて 智襄子ちじょうしの放言は、宴に列席した二人、韓康子かんこうし魏桓子ぎかんしの心に残りました。


「土地を貸してはいただけまいか」


  韓康子のもとへ智襄子の使者がやってきたとき、韓康子はあの時のことを思い出しましたが、韓康子は智襄子の要求を断ろうと思いました。


「いけません」


  その想いに歯止めをかけたのが、あの宴席に列席していた段規だんきでした。


  段規は韓康子にその理由を説明しました。


「智襄子は利や財を好んで凶悪です。もしわれわれが与えなければ、われわれを攻めようとするでしょう。与えるにこしたことはありません。もし彼が地を得たことに味を占めれば、また必ず他の氏族の領地を求めるでしょう。だれか与えないものが現れれば、きっとそのものに軍を差し向けるはずです。そうしてわれわれに向かうはずだった軍を他の氏族へそらし、様子をうかがってから事態の移り行きを見守っても遅くはありません」


「わかった」


  韓康子は段規の言葉に従い、数萬戸もの大きな人口の城を貸し与える使者を智襄子に送りました。


  智襄子は大喜びをしました。


 そして智襄子は、今度は魏桓子に使者を送りました。


  魏桓子も智襄子に土地を与えるのを渋りました。 魏桓子は断ろうと思いました。


  配下の任章じんしょうが聞きました。


「どうしてお与えにならないのでございますか」 


  魏桓子は驚きました。魏桓子も、任章も、韓康子に段規がした諫言かんげんを聞いてはいません。しかし同じような結論がここでは出ます。


「理由もなく土地を求められれば、しんの国の同僚の卿たちは恐れるだろう、智襄子はそう計算しているのです。もしわれわれが智襄子に土地を与えれば、智襄子は必ずおごり高ぶり、傲慢になるでしょう。智襄子は驕り、われわれや他の卿たちを軽んじるようになるでしょう。これは相手を恐れてあえて近づきになることです。そして親しくなってわが軍を温存して、敵を日に日に軽んじるようになる人物の隙を狙うようにするのです。温存した兵力で、敵をあなどり、好戦的な人物の隙をつく、智氏の命運はきっと長くはないでしょう。


尚書しょしょ周書しゅうしょに、『まず敵を破ろうと計画するのならば、しばし敵を助けて様子を見よ、まず敵から土地を奪おうとするのならば、しばらく土地を与えよ』、と書いてあります。まず土地を与えるべきです」


  そこで魏桓子も、智襄子に土地、数萬戸の人の住む城を与えたのでした


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