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秦の誓い  作者: rona
第1章 孝公の時代
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統一へのエネルギー

 秦の歴史は名宰相めいさいしょうの歴史ではないか、そう思います。李斯りしに至るまで優秀な丞相が続出しますが、その基礎を創ったのは、新星のように秦の国に現れた人物、衛鞅えいおうだったといえるでしょう。


 ところで、一方でそれらの秦の名宰相の多くが非業ひごうの死を遂げます。先を読む楽しみをそぐかもしれませんが、衛鞅も非業の死を遂げます。他の名宰相、名将も悲しい結末を遂げることが多い。


 始皇帝は『皇帝』という位をつくり、六国を併合し、中国という国家をはじめて構成しますが、そこまでの軌道は、多くの国々を貪欲に飲み尽くし、併合し、土地を食い荒らしていった結末です。


 これこそが儒教などを基にし、徳治とくちむねとした漢との大きな違いだといえるでしょう。


 秦がやや否定的にとらえられるゆえんでもあります。


 しかしいわゆる『中央集権』、一人の優れたリーダーの下で国全体が一つのミッションを追求し、成果を出していくという点では、秦は確固とした制度を組み立て、漢の治世ちせいも、もともとはこれらの秦の成果の上に成り立ったものともいえるのではないでしょうか。


 中国の統一には、力が必要だったのです。


 そしてその力を握っていることが、大きな成果を生みました。


 しかしその反動が、非業の死だったのです。


周易しゅうえき』はそのような生き方に対し、老荘ろうそうの思想をも吸収しながら、多くを望まない生き方を提唱します。『周易』けん卦は「満ち切り、完成に到達したものはあとは下っていくだけであり、欠けているところがあるもの、未完成のものは成長を続ける」、というような趣旨のことを言っています。


 宰相は非業の死を遂げていく、その一方で私の思うのは、秦の民のことです。無名の、歴史の忘却の彼方に埋もれている。


 彼らは、よく耐えた。そして指導者たちに付き従い、よく国を盛んにした。


 名宰相や名将のもとで、粛々とその指示に従った人民がいたからこそ、この秦の国は、函谷関かんこくかんを越え、楚を圧倒し、六国を征服します。


 彼らの、満ちきった中原の精神ではなく、これから伸びていこうとする、これから満ちていこうとする、謙虚で、純朴で、前を見た精神、ある意味、ハングリーとでもいうような、欠けているという、飢え、渇望、情熱、一つの国を大きくし、繁栄させようというエネルギーが、強い意志と連帯が、この中国という国を突き動かし、秦帝国を成立させたのではないか、そう思うのです。


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