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秦の誓い  作者: rona
第1章 孝公の時代
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斉の威王

 孫臏そんひんが推薦された、斉の威王いおうはよく人材を使う人でした。足を切られた孫臏の言葉に耳を傾けたことからも、そのことはよくわかります。


 このような逸話が残っています。


 ある時、斉の国のうち即墨そくぼくの大夫と、の大夫の噂が威王のもとに届きます。


 威王は即墨の大夫を召還しました。そして言いました。


「君が即墨を治めるようになってから、君を誹謗中傷する言葉が毎日届いている。これはどういうことだ」


 突然呼び出された即墨の大夫は青ざめました。威王の権限は絶対です。どう申し開きしようか、戸惑っている大夫に、威王は続けました。


「安心したまえ」


 威王の口調がやわらぎました。


「そういう言葉、誹謗中傷の言葉は確かに届いている。しかし、私は人を使わして即墨を視察させたよ。田野は青々とひらけ人民は満ち足りており、官吏に問題はなく、東方はだから安寧を保っている。これは君が私の側近たちにおもねって助けを求めずともやっていけるということだ!」


 そして、即墨の大夫に万を数える封家ほうか(所領の人口)を与えました。


 次に威王は阿の街の大夫を召還しました。


 即墨の大夫が封じられたという噂を聞いた阿の大夫は、内心に期待を秘め現れました。


 威王は彼に告げました。


「君が阿を守ってから、褒め言葉が毎日私の耳に届くようになった」


 阿の大夫の目が輝きました。今こそ昇進の時か、阿の大夫は次の言葉を待ちました。しかし、その結末はあわれなものでした。


「私は人を派遣して阿を視た。田野は闢けていない、人民は貧しく、えている!」


 阿の大夫はすくみ上りました。


「それだけではない、以前、趙がけんを攻めた、しかし君は救援を出さなかった。衛が薛陵せつりょうを取った、君は知らなかった」


 威王は怒りを抑えきれないようでした。


「これはだ」威王は大夫をにらみつけました。「君が厚く私の側近に賄賂を贈り、そして褒美をもらおうとしているに違いない」


 こののち、阿の大夫は威王の怒りに触れ、阿の大夫を推薦しめそやしたものとともに処刑された、と伝えられています。


 ともかく、威王は冷静かつ現実的とでもいうような、鋭い頭脳を持った人物でした。そして権力を持っていました。


 この事件ののち斉の国は大いに治まるようになり、偽りは横行せず、臣下各々がその真心を尽くして威王に仕えるようになりました。斉の国は大いに国力を伸ばしたと伝えられています。


 斉の威王と、魏の恵王とは、対照的な君主だったのです。

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