秦の誓い
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「どうして衣がないといおう
君と綿入れを共にしよう
王が行って戦を興されるのならば
私の戈と矛を磨いて
君と王の仇を共にしよう」
『詩経』秦風・無衣
秦、というのは古くからある国として、各書に描かれています。孔子が編纂したという『詩経』の中にも、秦風(秦の国の風)という項目が立てられ、秦の国の民謡がいくつかおさめられています。
そしてその多くが、戦争の歌です。上にあげた詩はそのうちの一つで、王(ここでは周の王を指す)に従って、敵のために戦おう、そう呼びかけています。これは秦という国の、軍事国家としての特質を端的に表しているように感じます。
秦の国を表す有名な文としては「秦の誓い」、『秦誓』があります。この文を『尚書』という古代の歴史書で読んだことはない人でも、朱子が編纂した『大学』(『大学章句』ともいう)で、この『秦誓』を愛唱されている人もいるでしょう。
ぼくもこの文が大好きです。「己に才能がなくとも、人の才能を受けとめ、自らのもののようにする」(如し一介の臣、有り,斷斷猗として他技無きも,その心、休休焉として,それ容るるあるがごとし・・・。)そのスピリット、精神は、とても美しいと思います。
この文の最後には、一人の力により国は隆興し、一人の力によって国は衰退する、そのようなことが書いてあります。
先に述べたように、秦の国は強力な軍事国家でした。しかしその中心には丞相として国を率いる、優秀な家臣がいました、そのような人物が活躍する素地があったということを、忘れてはいけないと思います。
もちろん、優秀な人材といっても、優れた武将や、法家(法によって人民を支配するという思想家)が主で、儒家の政治ではありません。しかし、人を生かそうとする、そして民を守ろうとする歴代の秦の君主や政治家の想いや、まなざしは、随所に見て取れると思います。
これから、『資治通鑑』の訳を中心にして、断片的にではあると思いますが、秦の歴史を追っていきますが、そのベースには、この『秦誓』のまなざしが、背景に、あちこちににじみ出ていると思います。