第28話 出発
ダンジョン、健全な男子ならば一度は夢見たことがあるだろう素晴らしいファンタジーな言葉である。自分が勇者となり巨大で獰猛なドラゴンを血祭りにあげる、まさにファンタジー!
俺も数学が好きというだけで他は一般的な男子でありウスカンさんの誘いを断る理由など一切なかった。
「……それじゃあ、このような形で行きましょう」
話し合いの結果とりあえず近場のダンジョンへは俺とウノンで行くことになり、遠方まで行くときにはウノンは国防上の要なのでウスカンさん、カイ、ウノンがセイウスで留守番、俺とラルがダンジョンへ行くという形式になった。イグザはダンジョンとセイウスの連絡役だ。
「まず、どこのダンジョンに行くかですがウガルス王国とケンブ帝国の国境にあるC級ダンジョン【レイゲス洞窟】が近場でいいかと思います」
「モンスターは強いんですか? 」
「いえ、ミハマくらいのステータスがあればボス以外ならほとんど苦戦することはないと思います 」
「私たちももっと小さいころに4人で行ってたこともあるよー 」
「懐かしいな、あの頃は王国内のいろんなダンジョンを回ったな」
「いまの親衛隊もいいが各地を回れる冒険者も楽しいものだ」
「そんなことがあったのか、気になるな」
「また、時間のある時にでも話しましょう。とりあえず【レイゲス洞窟】へ行くのはミハマとウノンのお二人でいいですね? 」
「私の角はどうするの? 」
確かにウノンの頭に生える角は私は魔族です、と強く主張していて関所的なもののある町へ行くとすぐにばれてしまうだろう
「ああ、それなら多分問題ないと思います。【レイゲス洞窟】はそこそこ大きな森の中にありアクセスしずらく、昔はここしかないからと各地の初心者冒険者が集まりそこそこに栄えていましたが数十年前に近くの平野にほかのC級ダンジョンができてしまいアクセスの点などから冒険者のほとんどがそちらに行ってしまいました。なのでまともな関所のようなものはありませんから、目深にフードを被ればいけるかなと思います」
「なるほど」
そこから俺たちは1日かけて荷物の準備やブリッツ襲来の時の作戦などを確認し出発することになった。
「それじゃあ行ってきます」
「あ、その前にこれを持っていってください」
ウスカンさんは折りたたまれた小さな袋を持っていて、それを渡してきた。受け取ってみてもただの袋の様だが、なんなんだろう
「これは収納袋です。この中に物を入れれば食べ物でも腐りませんし、どんなに重い物でも簡単に持ち歩ける様になります」
「いいんですか? 」
そんなすごい機能を持っているのなら当然安くはない物だろう
「はい、ダンジョンは基本攻略するまで出てきませんので荷物がどうしても多くなります。ですがこれを持ってれば怪我もしにくくなるはずですから」
「そうそう、これがなかった頃は四人で分担して荷物持ってたけど重くて辛かった〜」
「じょあ、お借りします」
「その袋の中に食料等が入ってるのでダンジョン頑張ってください! 」
「「行ってきます」」
俺は見かけだけ大きいリュックを背負いウノンとともにセイウスを出発した。このリュックは収納袋を持っていることをばれないようにするカモフラージュ用らしい。
「あ!行きは私が案内についてくよ~」
【レイゲス洞窟】までの道は途中までは街道に沿って行くだけで簡単らしいが最後にその道から曲がって森を進むところがなかなか大変らしい。そこで、イグザが行きはついてきてくれることになった。
「この街道は魔物がほとんど出ないはずだから先に今回行くダンジョンの説明をしちゃうね。えっと【レイゲス洞窟】はその名の通り地下に広がるダンジョンで3階層に分かれてて最下層の一番奥に扉があってその中にボスがいるの」
なるほどまさにダンジョンという感じだな。
「どんな魔物がいるの? 」
「えっと【レイゲス洞窟】にいるのはスライムとスネーク系の魔物ね」
「へえ、スライムとかいるのか 」
「うん、物理攻撃に対する耐性が超強くて魔法を使えなくてスライムにレベル負けしてると絶対といっていいほど苦戦する厄介な魔物だけど攻撃力がほぼなくて無視して進めば基本的には問題ないから弱いって言われてるの」
「何色のスライムがいるの? 」
「色? 」
「緑と無色のがいるね。えっと、スライムは色とりどりでその色ごとに攻撃に特徴があるの。無色は特徴が一切ない代わりに見つけずらい、緑は攻撃に自身の回復効果があるんだけど体力自体が少ないから色の中では一番弱いとされてるね」
「なるほど」
「ほかにも、魔族領では私は赤とか紫とか見たことがあるかなぁ」
「赤と紫!?かなり厄介って有名なやつじゃん」
「そうなのか? 」
「うん、赤は攻撃するたび自身の攻撃力が上がっていくし、紫は攻撃に毒の効果が付与されているの」
なるほど。緑の奴よりは攻撃性能が高そうだ。
「おっと失礼」
そこからも話をしながら進んでいると馬に乗った男が俺たちの横を颯爽と抜けていった。
「そういえば、今回の道中に馬とかは利用しないんだな」
「ああ、それはね。この先の街道がかなり狭くて徒歩じゃないと通れないんだよね。そうじゃなかったらそっちの方が楽なのに」
「でもこれはこれでいろいろしゃべれるしいいんじゃない?でも馬といえば魔族領には魔力で動く乗り物とかいろいろあるの。知ってる? 」
「え、知らない。教えて~」
こんなふうに3人でそれぞれこの世界の人間、魔族、そして地球の話で盛り上がっていると気づけば霊下種洞窟のある街へと俺たちは到着した




