第9話 神と人間と悪魔
「勝った……」
口中に広がる恐ろしくも頼もしい力が消えていくとともにしゃべることができるようになった俺は勝利の実感を確かめるようにこう発した。その直後俺に襲ってきたのは体中の傷の痛みだった。死ぬほど苦しいものだったがすぐにそれはなくなった。
《……ミ、ハマ!》
「ティポタ? 」
《大丈夫なのか?悪かった。お主にこんな思いをさせるつもりではなかった》
「大丈夫だ。アレのおかげで敵を一掃できたしな。あのまま続けてたら途方もない時間がかかったはずだった。逆に感謝しているくらいだ。ところであの技はどんな技だったんだ?」
《あれだけの思いをさせといて盟友などとほざいていた自分が恥ずかしくてたまらない。だが、とりあえずミハマにあの技を説明しよう。あの技はミハマの口に神の力を与えるものだ。前にも言ったと思うが悪魔というのは人間と神をつなぐ役割がある。故に悪魔と盟友であるミハマのようなものでないとこの技は使えないが当然神の力を借りるというのは簡単なことではない。そう、多大な代償を伴うのだ。そしてこの代償が今回の場合で言うHPとMPの枯渇ということだ。これがこの技の真実だ》
「なるほど。これが神の力か」
そう俺の周りには国王軍の兵たちが昨日から1ミリメートルも動かず地面に転がっている。これはあれだけの代償が必要なのもうなずける。
《ウズイン様によるとこの兵士たちは強い衝撃を与えない限り6日はこのままのようだぞ》
「ウズイン様? 」
《今回力を貸していただいた神の名である。恐怖を司る神で悪いうわさも多かったが昔から付き合いがあったしこの時代人間に力を貸してくださるような神はああいうやつ以外はいないだろうからな》
「ティポタ!どういうことなんだ?教えてくれ神と悪魔と人間のことを。最初にティポタと出会ったときお前は言っていたな。これ以上首を突っ込むなと、だがそれでも聞かせてほしい」
《そうか、そこまでの覚悟があるなら教えてやろう。我の本当の名は0の天使ティポタだ。悪魔という名は人間が勝手に我らの印象を下げるためつけたものだ。我ら天使は古くから神と下界の生物をつなぐ中間の存在であった。人間は天使を通し神と契約することで生物の上位種として進歩してきた。だが人間とは愚かなもので神との絶対の約束を軽々しくいくつも破ってしまった。神との約束はこの世の節理、それを乱すものを取り締まることも天使の役目だった。天使は人間界を荒らしまわった、そしてついに人間側は神の力は借りないと関係を切ったのだ。神々はこれを面白がり、それまでの人間の所業を不問として、今魔族と言われている種族に施しを与えた。人間の堕ちていくさまを見る為だ。そして進歩していく魔族に対し進歩が止まってしまった人間は魔族に追い抜かれてしまった。こんなところだ》
「なるほどな。だがティポタはなぜ人間である俺と盟友になったんだ?天使たちだって人間に対して思うところはあるだろ? 」
《ああそうだな。ほとんどの天使が今魔族側についているがすべての天使に仕事があるわけでもなく階級の低い一部の天使は人間に力を貸すことでMPを得ている。人間のいう魔法も天使の力を使って発動している。故に上位天使と関わりのない人間は強力な魔法があまり使えないのだ。そして我がミハマの盟友になった理由か。魔族でも人間でも誰と盟友になろうといいが、数学のできるものがよいと思った我はお主の解いた【0の悪魔】を各地の見込みのあるものにばら撒いていたが解けるものがいなかった。MPの貯蔵がなくなっていきなんとかしなくてはならないと思っていた時人間のことを最後まで見放さなかった勇者を召喚している慈愛の神ミデオス様に今度召喚する勇者の中に我ののぞみに合うものが居るかもしれない。そのものに【0の悪魔】を与えてくれるといっていただいたのだ。我も天使の片割れ、人間に力を与えるのは少しためらったが勇者はこの世界の人間ではない。つまり我ら天使を侮辱した人間とは違い、そのうえ我の望んだ条件を軽々と達成してきたのだ。この者以外に我の盟友に相応しいものはいないと思ったのだ。そうして我はミハマと出会ったのだ》
「そうだったのか。ありがとなティポタ。色々教えてくれて」
《いや、我が盟友を傷つけた自分のただの自己満足だ》
「たとえティポタの自己満足だったとしても俺に有益な話だったことに変わりはない。今度俺の元いた世界の数学の話をしよう」
《いいのか!?それは楽しみだ》
数学の話をしよう。といっただけでティポタは上機嫌だ!ここまでいい反応をされてしまうと何を話すか今から考えてしまうな。だがとりあえずウスカンさんのことを助けに行かなくては……
《あぁ、そうであるな》




