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パラダイムシフトスケッチ  作者: ハタ
エピローグ
88/88

ツナガル×ミライ


「思い出探しはどうだったね」


 二人がトバリの住まう家屋へ顔を出すと、老婆は顔も向けずに囲炉裏の前で背中を丸めていた。


「結局、彼女には辿り着けなかったけど……とても、良い旅でした。

 それで、俺たちは何を? この際豆の収穫でも何でも頼んでくださいよ、あはは」


「そうかい。じゃ今から急いで、【ルカの残していったもの】を集めておいで」


「……は? え、なん、何のために」


「良いからとっととおしィーっ!」


「ヒィーッ!!」


 理由を問おうとするユウシャに、遂に腰を上げて振り向いた老婆がカッと目を見開く。それについ怖じ気づいて後退ろうとした二人であったが、奥の襖を白い布がぐっと押し開くのを見て、そちらに目を奪われ動きを止めてしまった。


「トバリ殿。私が言うのも何だが……言葉が足りない」


「なんだい、若いのはさぷらいずが好きだろうが」


「えっ……え? 我楽多屋様、ですの?」


 神々しいまでの光沢を見せる白いローブを被った男は、かつてのみすぼらしい姿と重ねるには暫しの時間を要した。結局深くかぶったフードで顔は伺えないものの、垣間見える細い腕は以前より僅かに血色が良いようにも見える。


「如何にも。精霊殿、ユウシャ殿。ルカ殿に会いに行こう」


 彼の希望に満ち溢れた提案を聞けば、その日のうちに二人はメロを呼び寄せ、ルカのコーラルピンクのマントと投棄してあった布団を、我楽多屋の元へ持ち寄った。



「先に君たちを安心させるため、説明しておこう。

 全てではないが、大切な記憶を取り戻した。それにより、並行世界の繋がる次元への渡航が可能となったのだ」


「ガラちぃってめっちゃスゴい人なんだぁ! それってスキル!?」


「が、がらち?」


「あ、メロはメロです☆」


「アイテム、異次元を渡る船。そしてこの男のスキル、特殊船舶の操縦権。どちらもSランクと見て相違ない」


「まあ、手に余った結果記憶が削れてしまったのだ。そうして浮浪者になりかけたのだから、世話が無い」


 その記憶を引き出した、あるいはきっかけを作ったのは、トバリの鑑定眼だろう。我楽多屋は異次元への扉を呼び出し、浮かんだ船へルカのマントや布団、そしてユウシャやリノ、メロを乗せていく。


「さあ、出発だ」


 ユウシャの手には、紙の束が握られていた。




 君と離れていた長い日々。書き綴った手紙(スケッチ)を持って、新しい旅が始まる。

 今、君に、会いに行くから!




『パラダイムシフトスケッチ』  完

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