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06


 書斎に着くと父が中に入った後に私も入る。

 

 きっと高い値段がするだろうソファーが目の前にあるけど、今回は座ることは無い。

 私と父は書斎机を挟んで向かい合わせになり、彼が席に着くまでまでカーテシーをして待つ。



「それで、話とは」

 


 声が聞こえて、ようやくカーテシーを解く。思いの外緊張してるのか口の中が乾いて上手く言葉が出ない。



(やばい、予想以上に怖い)



 私が知ってるリリアンヌの父はただのテキストだったためか、こんな息苦しくなるような威圧感を感じる会話になるとは思っていなかった。

 しかし、ここで諦めたら……クイナはずっと奴隷として苦しむことになる。


(そうだ、親じゃなくて前世で相手した仕事の取引先の人だと思ったらいいんだわ! 今から私は取引先に対して営業をすると思えば少しは気持ちが変わるかも)


 一つ深呼吸すると私は父をまっすぐ見据えて、話しかける。



「お父様。お時間を頂きまして、ありがとうございます。実は欲しいものがありまして、お声を掛けました」

「ほう、珍しいものだな。お前からのお願いとは……言ってみろ」

「はい。私の願いは――私の傍にずっと置ける存在が欲しいのです」

「……どういう事だ?」

「私は将来王家に嫁ぎます。しかし、これからの人生、きっと私は危険な目にあう事が沢山あると思うのです。命の危機に晒されることも、あるでしょう」



 父は静かに話を聞いてくれているが反応を見せることはない。



「昨日庭で木から落ちましたが……あれは、不審な影を見かけたような気がして思わず気になり確認するために登ってしまったのです。私が行うことではなかったのですが気がはやってしまい慌てて足を滑らせてしまったのです。すぐにご報告しなきゃいけないのに、今になってお伝えしてすみませんでした」

「影だと……!」



 はい、嘘です。リリアンヌのお転婆で落ちました。



「今回は大丈夫でしたが、これからの事を考えると怖くて……。だから何時でも私の剣となり盾となる、万能な存在が欲しいのです」

「………………」

「私としては自分の命がとても大事だと思っていますので、何があってもその命をかけて私の身を必ず護ってくれるような人がいいのですが……」

「つまり、自分のためなら死んでも問題ない者を傍につけたいわけだな」



 何を言ってるんですか。クー様に死んで欲しいなんて絶対に思いません!

 むしろクー様の命は私が守ります。勿論私も死なない、二人が生き残るハッピーエンドを目指しますよ、ええ!

 


 私は改めて父に深く頭を下げて再度願う。



「勿論今後も王家に嫁ぐ身として精進します。もう少しで始まる王妃教育もめげずに頑張ります。今後このようなお願いもしません。――これからの私の未来を守る為に、私だけの従者を選ばせてください」



 続く沈黙が痛い。

 さっき食べた朝食が逆流しそうで、息を止めて必死に耐える。



 どれくらい時間が流れたか分からない、長い時間が過ぎているような気がする。



「よかろう。好きにするがいい」



 ようやく聞こえてきた言葉に私は思わず顔をあげる。



「……お父様」

「ただし、今後厳しい王妃教育に対して弱音など断じて許さん。これまで以上に励むことだ」

「勿論です。一生懸命、胸を張れる王子妃になれるよう努力します……!」

「金に関してはお前の蓄えから引くことにする、お前の従者だからな」

「かしこまりました。世話も躾も全て私が管理致します」



 これで、もしクイナを買いに行ってお金が足りなくても請求をグラシア家に回してと話せば私のお小遣いから支払ってくれる。悩んでいた購入資金の問題は解決したと言えるはずだろう。



「それで、欲しい従者は決まっているのか」



 クイナを身請けできる嬉しさで興奮していた私に突然父から追撃のような質問が来た。

 そりゃこれだけ熱く語っているんだもの、聞かれるだろうと予測はしていた。

 

 最初は誤魔化そうかなと思ったけど、下手に嘘ついて後でクイナが困ることになるのは良くないと思い、正直に話すことにする。

 

 ただしここは悪役令嬢らしく、傲慢な雰囲気を出して語ってみることにした。



「以前街に出た時に見かけた奴隷が可愛らしい犬のようで気になったのです。奴隷であれば、命が消えても誰も文句は言いません。犬だと世話が大変ですけど、奴隷なら躾も楽でしょうから……!」



 自分で言っててあれだけど……そんなこと絶対思ってないからね!

 クー様は大切に、大事に愛でるんだから!

 それこそ奴隷だったことも忘れるくらいに幸せな生活をさせるの!

 

 そして私はそんなかっこよくて尊い推しを目の前で沢山堪能して崇め奉るのです。

 何だったら毎日拝むつもり満々だし、推しに貢ぎたいくらいです。




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