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15

 


 クイナが私の従者になってから早くも一週間が経過した。

 


 突然屋敷に現れた一人の奴隷は、すぐに私の家族や使用人たちの間でも話題になった。

 最初はどうして連れてきたんだと反対されるかと思ったけど、最初に父親から許可を貰っていたのが功を奏したのか誰も追い出せと堂々と私に口にする者はまだいなかった。

 

 ただ、珍しい獣人の奴隷だ。

 奇異の視線を注がれるかもと思うと不安になってしまう。

 心配性と言われてしまっても仕方ない、大事な推しの平穏な生活が懸かっているのだから。


 

 私は三回ノックした後、もう一度だけ一回ノックする。

 私が決めたクイナの部屋に入るときのノックの仕方だ。

 これで誰が来たかクイナがすぐに分かることが出来る寸法だ。

 突然知らない誰かが入ってくるかわからないから、一応私とクイナ、そして世話を手伝ってくれているセレナだけが知っている秘密だ。

 

 ノックをした直後に「どうぞ」と声が聞こえたので私は勢いよく部屋の扉を開く。



「ただいま、クイナ!」

「おかえりなさいませ、リーン様。勉強お疲れさまでした」



 勝手知ったる他人の部屋、とばかりにどうどうと部屋の中に入り、ベッドに腰掛ける彼のもとに向かう。


 現在、彼は大分足の怪我は良くなってきたものの、身体はとても細くて栄養状態が不良だったこともあるので、私の命令で休養を最優先にさせている。

 

 本人としては次の日からでも働きたそうにしていたけど、私が断固として反対した。

 それでも何もしていないことが辛そうなので、私は今一つの仕事を彼に与えている。



「今日はね、マナーの勉強をしていたのよ。カーテシーも……ほら、上手になったでしょ?」



 自慢げに私は今日家庭教師から学んだカーテシーをクイナの目の前で披露する。



「ええ、ちゃんと綺麗に出来てますよ。もう立派なレディに見えます」

「えへへ。クーに褒められたなら嬉しい!」



 褒めてくれたクイナに甘える様に私はベッドの際に腰掛けてそのまま抱き付く。



(ああああ! 推しに抱き付いちゃった! んー、お日様の匂いして幸せぇ……)



 クイナは突然抱き着いて甘えてくる私に照れくさそうに笑みを浮かべるも、そっと優しく頭を撫でてくれた。


 

 クイナの仕事、それは私とお話をすることだ。



 せっかく推しを自分の従者にしたのだから、もっと彼について知りたい。

 それならばまずはコミュニケーションを育むことが重要なのではないか、と思ったのでお話をしながら仲良くなるために、私と話をする時間を作ることを仕事にした。

 

 もちろん先程のようにボディータッチもさせてもらってます。

 本来の二六歳の私だったらアウトだけど今は八歳、許されるはず!



「こら、お嬢様。はしたないじゃありませんか。きちんと椅子にお座りください」



 残念、許されませんでした。




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