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もしもう一度戻れたなら

もしもう一度戻れたなら

作者: 葉月みつは

ねえ、君は呪いとは怖いものばかりだと思うだろうか?

実は、優しい呪いと言うものもある。

だが、呪いには代償がつきものだ。

それを払ってでも助けたい願いがあった、ある少年と少女と猫の出会いと別れがもたらした不思議な物語。




フワ フワ フワリ フワリ

白い雪が辺り一面を真っ白におおう。


ポトリ

なにかが地面に着地した。

そっとそれをみる。



「猫?」


プルプルと震えるその猫をそっと撫でると嬉しそうに喉をならした。


落ちてきたところを見ると3階建てのアパートの1階に1つだけ空いていた窓があった。

そこから降りてきたのかはわからないけど、なんとなくそこをジーと見てしまった。


その瞬間、窓に人の姿があることにきづいた。

パチリと目と目が合う。

「えっと、このねこ、君の?」

少し距離があるので聞こえたかわからない。

でも、僕がなにか話してるのに気づいたらしく、人影がすぐに見えなくなった。


少しすると、同じくらいの年頃の少女がそのアパートからでてきた。


「ごめんなさい!急にそとにでてしまって……」


ガバッと頭を下げた。


よく見ると、少女の服は少し患者服と似ていた。

あわててきたのか、服装は乱れていて髪もボサボサであっちこっちにちょこんとはねていた。


「怪我してないから大丈夫だよ。それより、身体が冷えないうちに建物にはいらないと…かぜひいちゃうよ?」


そういって、猫を少女に渡した。


「はい、すいません」


少女はすごく反省してこっちまでなんだか申し訳ない気持ちになってきた。


何度も少女は、謝り申し訳なさそうにしながら部屋に戻ろうと向きを変え歩き始めた。


もう一歩でアパートの入り口というところで


バタンっ


大きな音を立て少女は倒れてしまった。


あわてて助けに向かうと、顔色が真っ青で呼吸も不規則だった。


意識は朦朧としていて、うまくしゃべれないみたいだった。


周りの建物を見渡しすぐ救急車を呼ぼうとしたとき、この子のアパートが、いや、アパートだと思っていたところが病気を治療する施設だと気づいた。

テレビで見たようなそんな施設と全く一緒だったからだ。


すぐ、少女を安全な場所にそっと寝かせて大人を呼びに行く。


少女のてできた建物の中に入るとすぐに、非常時に人を呼ぶ赤いボタンを見つけた。


すぐに押してみる。


ピー


「どうしましたか?」


大人の女性の声がボタンから聞こえた。


バクバクとなる心臓を、必死に押さえながら今の状況を伝える。


“そこでまってて“と言われじっとしている。


その時間は、ほんの少しの間だったはずなのに、僕にとってはすごく長く遅く感じた。


ドタバドタバタと足音が近づいてきた。


「連絡をくれたのは君かな?」


白衣を着た人が声をかけてきた。


今までの事を説明し、“これで大丈夫“とほっとした。


その後すぐに少女の場所へと案内する。


「もう大丈夫だよ」


少女のそばでそう呟いた。


「……」


ギュッ


少女が無意識に洋服を強くつかんできた。


「いかないで…」


意識がもうろうとしていてどうやら僕と誰かを勘違いしているようだった。


幸い、すぐ大人の人達が何かの処置をしたあと少女の様子は少しずつ落ち着いてきていた。

そこで帰ろうとしたのだが、やはり少女が服を捕まえて離さないのだ。


仕方なく少女が目覚めるまで側にいることにした。


その間、いつの間にか戻ってきた猫は僕の膝の上で大人しく丸まっていた。


「んっ?」

少女が目を覚ました。

僕を見て驚いたようだが、自分の手が僕の服を捕まえてるのを見てすぐ赤面になった。

「ごめんなさい!初対面でこんな……ごめんなさい。」

泣きそうな表情をする少女になんだか、こちらまで落ち着かなくなってくる。

「気にしないで。意識があやふやで誰かと間違えたんだよ」


その後も少女は何度もお礼をいいながら僕を見送ってくれた。









それから数週間がたち僕の通う学校に転校生が来ることになった。まだ冬の時期でこの時期には珍しい。


「今日から短い間だが、一緒に勉強することになった。入りなさい」


ガラガラ


そこには、この間出会った少女がいた。

この前よりは顔色はよく元気そうだ。

少女も僕に気づき、驚いた顔をした。

そのあと自己紹介をすませ、授業が始まった。


別にこの時は少女と仲良くなりたいだとかそんなことは思っていなかった。


始めは少女の周りに人がたくさん集まって思い思いの質問をしていた。


でも、日数が立つにつれそれは少なくなり、いつの間にかいつもと変わらない日常へと戻っていた。


少女は、その日常でいつも一人だった。


それでも僕は、好きで一人でいると思って声をかけなかった。


そんなある日の帰り道、勉強をしていて少し遅くなってしまい近道を使って帰った。


ザク ザク


雪で滑らないように気を付けながら歩く。


細い道を歩いたり、開けた道にでた時、ふと、近くに少女と出会った施設があった。


なんとなく、近くまで歩いた。


すると猫と戯れてる少女を見つけた。


楽しそうだなと思った。でも、それと同時にこの間の事もあり大丈夫か気になった。


そうこうしているうちに少女の前にでていけずにいると、少女の話し声が聞こえてきた。


それを聞いてしまい、この日僕は、少女の秘密を知ってしまった。


「ねぇ、ねこちゃん、ねこちゃんは外に友達とかいるの?」


ニャー


「私ね、友達はほしいなと思ったけど、少し難しいみたい…」


にゃー、?


「あのね、友達との話題がなくって、運動とかも病気のせいであんましできないし、遊びにだっていけない…」


「それにね………この間ね……」


にゃー?


少女は猫を撫でる手を止めた。

そして、少し震えながらその言葉を吐き出した。


「余命があともう少ししかないって、言われたんだ」


少女は泣いていた。


声を立てずに。


静かに涙を流していた。


「難しい病気で、いろんな治療法を試したんだけど思うように効果がなくって、苦しい治療を続けるか辞めるか、決めるように言われたんだ。」


少女は弱々しく言葉を紡ぐ。


「だから、最後に友達がほしかったんだけど難しいね…

せっかく学校いけたのに……友達とたくさんいろんな事したかったな……」


猫はジーと少女を見て、そのあと僕の方向を見た。


ドキリ


猫は急に、僕の方に走り出した。


ニャーオーー


「うわっ!」


ビックリして情けない声を出してしまった…

その上、少女にも見つかってしまった。


「えっと、」


「あっ、この間の!えっと、えっと、あれ?涙が止まらないや……君にはこんな姿ばっかり見られちゃうね……また、ねこちゃんがごめんね」


無理に涙を押さえ込んで笑顔を作ろうとする少女の姿はとても痛々しかった。


僕まで胸が痛くなったような気がした。


だから、


「あのさ、今度ペア学習があって、決まってないんだ。もしよかったらペア学習一緒にしない?」


本当は、ペアを頼める友達もいた。

その子は、友達も多いし、すぐ他のことペアになれると思うからこの提案をした。


「いいの?」


「君が嫌ならいいよ、他の子に聞いてみる」


「ううん、嬉しい!よろしくね」


こうして僕と少女は、徐々に仲良くなった。


僕は、少女の友達になれたのかは今になってはわからないけど、少女にもう一度聞けるなら聞いてみたいなとは思う。


そして、ペア学習当日。


僕たちのテーマは、“地域の生き物“について。


この日は、それを調べるために郊外にでることも許可されていた。

もちろん細やかなや決まりごとや守らなければいけない約束事に破ったときの罰もある。

ゲームセンターや、ショピングモールなどに行って問題を起こした先輩たちのペアは親を呼び出しされ、さんざんだったらしい…

もちろん僕たちはそこには行かない。

向かうのは自然がいっぱの指定保護区域で管理されている場所だ。


少女に寄り添うように猫もついてきた。

係の人には、しっかりとお世話をするならと許可をもらった。

少女はカチコチに固まっていた。


「頑張るね」


「肩の力は抜いて、半分は楽しんだらいいよ」


「そうだね」


指定保護区域にされているだけあっていろんな植物や生き物が想像以上にたくさんいて楽しかった。

ただ、このテーマは不人気なのだ。大人の付き添い(保護指定区域の職員)が一緒に周るからだ。


僕にとっては、少女の体調が“もしも“の時のためを考えるとありがたかった。

猫も、自然のなかでのびのびと楽しそうだった。


夕方になり、課題も仕上がり帰る時間になった。

職員の人から記念にと少女と二人分の同じキーホルダーをもらった。


少女は嬉しそうに早速鞄につけていた。


僕はというと恥ずかしくって鞄のなかに大事にしまった。

ただ、これが、この後の悲劇に繋がるなんて思ってもいなかったんだ。今さらだけど、周りなんて気にせずにいたらよかったんだ……







次の日

課題を提出と発表をし合いそれぞれ楽しかったことを仲良し同士がおしゃべりを楽しみ始めた。

今日は少女は休みだったから、普段の仲良しの友達と楽しくしゃべっていた。

そして、鞄からもらったパンフレットなどを取り出そうとした時


“チリン“


この前もらったキーホルダーがでてきた。

「それなに?なんか面白い形だな」

「昨日見学に行ったときにもらったんだ」

「そうなんだ」

「それよりさ、この生き物驚いたんだけど実はさ、……」

「ぇって!すげぇーじゃあこれは?」

「これは…で」


その日は、昨日の楽しかったことを友達としゃべっている内に学校が終わり、昨日の疲れが残っていたためか翌日は熱がでて学校を休んだ。


熱が下がり学校に登校した。

いつも通り仲良しの友達に挨拶をする。

そんな中、クラスメイトで人気者の彼が声をかけてきた。


始めは、突然「おはよう」と言われ正直“ビクッ“とした。


彼とはあんまり接点とかはなかったから驚いたんだ。


「なあ、お前、あのこと付き合ってるって噂になってるぞ?」


「えっ?」


「とぼけるなよ、同じキーホルダーを持ちあるいてんだろ?」


「あれは、記念にってもらったもので…」


「もらったものでもお揃いじゃん!」


生暖かい空気と、何よりそんな噂が立っていることに驚いた。


少女を見ると、そっちも女子たちに囲まれて困っていた。




その日のペア授業は、周りの空気に耐えきれずついに

「ペアさ他の子と交代したい」と少女に伝えた。

少女は一瞬つらそうな顔をしたが、

「わかった」

といってその日僕とのペアを解消した。






それから一月ほど会話をしなかった。接点を作ろうとすればたくさんあったのにそれを全部避けてしまった。

ある日、少女が話したい事があると手紙を僕の机にいれていた。

僕は、あの件があり、またあんなことになるのは、嫌で少女のお願いを “ごめん、忙しい“ と返した。


その日の帰り、あの猫がいたずらっ子にいじめられていた。いじめっこをどうにか追い払って、猫を助けた。


ボロボロの格好の僕を労るように猫が体を擦り付ける。


そんな猫の頭を撫でながら、気がつけば猫に僕のせいで傷ついてるあの子を“少女を慰めてほしい“と猫にお願いしていた。


猫は


にゃー


と返事をし、どこかに言ってしまった。



それから冬が終わらない内に少女が転校した。

なぜか、クラスの雰囲気が暗いような気がしたけどきっと僕の気のせいだろう。


そして、春になって従姉妹の姉さんが少女がいた施設に働くことになった。


その人とは兄弟のように育ったので今も仲がいい。

ふと、少女のことを思いだし聞いてみた。


「知り合いなの?その子、前に容態が急変して少しずつ悪くなって今は集中治療を受けている途中だったと思うけど…」


「えっ?……」


「えっとね、だから、今は家族も決まった時間しか会えないし…」


脳裏に少女の言葉が響いてきた。


-「あのね、友達との話題がなくって、運動とかも病気のせいであんましできないし、遊びにだっていけない…」




「難しい病気で、いろんな治療法を試したんだけど思うように効果がなくって、苦しい治療を続けるか辞めるか、決めるように言われたんだ。」



「だから、最後に友達がほしかったんだけど難しいね…」-



(なんで、なんでこんな大切なこと、忘れていたんだろう?)


「そのこ、助かるの?」


僕の表情をみて、姉さんが心配そうな表情で僕をみる。


「……もしかして、本当に知り合い?」


下を向きながらコクンとうなずく。


「……ごまかしても、しかたないから……はっきり言って難しいってお医者さんは行っていたよ」


その後、僕は、なんとも言えない罪悪感と後悔と、言葉に表すことができない気持ち悪さが体を凍りつかせていくようだった。逃げ道も答えも見つからないままぐるぐると少女の言葉が頭のなかで繰り返し響いた。






次の日、


「あの子のお母さんに、あなたのこと話してみたの。そしたらね、お母さんね、あの子から君に向けた手紙を預かっていたって…」


それは、見た目は普通の手紙をいれる封筒だった。

宛先名には、僕の名前が書いてあった。


「何度も何度も書き直していたものだから、お母さん、手紙渡そうとあなたを探そうとしたみたいなんだけど、学校も表向き辞めた後に見つけたもので、学校に問い合わせしようとしたんだけど、病気のことを考えるとためらっていたみたい…」


「ありがとう」


僕は、手紙を部屋に持っていきそっと封を切った。


-お久しぶりです。元気にしていますか?私のせいで周りから誤解を受けてしまって本当に申し訳なくって、せめて手紙だけでも書こうと思ったんだけど、なかなかうまくいかないね…

でも、でもね、迷惑ばっかりかけてばっかりだったけど、一緒にいろんなことができて、初めてのことがたくさんあって、本当に、本当に感謝しきれないくらい楽しかった。

だからね、私に“もしも“が会っても自分を責めないでほしい。

過ごした日々は私にとって大切な宝物でキラキラした思い出だから。


手紙にはあっちこっち書き直した後があった。

その中に消された跡で、読める部分があった。

そこには、


-もう一度、一緒におしゃべりしたいな-


それを読んだ瞬間頭が真っ白になった。


ぼくは知っていたはずだ。


あの子が近い未来そう長くない未来にいなくなることを。


それなのに、僕は、……


僕は、姉さんにあることをお願いした。

姉さんは、そのお願いを静かに引き受けてくれた。


そして、僕は、あの日、彼女の秘密を知った場所へと無意識に向かっていた。


そこには、あの日と同じ猫がいた。


猫は、僕を慰めようとしているのか身体を擦り付けたり足元によってきた。


「ごめんな」


なんとなくそんな言葉がでた。


そして、猫を少女の施設に連れていった。


施設の作業服をきた人が、その猫をみてため息をついた。


「ありがとう。またどこか言ってたの?ごめんなさいね、この子保護猫でペット可能施設内で保護してるんだけど……」


「え、飼い猫じゃないんです?」


「そうなの……この子を飼いたい人が見つからなきゃ、殺処分するしかなくって……もうそろそろってわかるのかな……」


「えっと、僕、この子連れて帰ります」


僕は、その猫を家に連れて帰った。


親にはもちろん怒られたが、必死に頼んでしぶしぶ飼うことを認めてくれた。そのあと施設にも連絡した。


この猫を手放して施設に返してしまえば、今度こそ、取り返しのつかないようなそんな感じがしたから、飼える事になってほっとした。







その日の夜


プルルル


僕の携帯がなった。


「もしもし」


「私だけど、あのこのお母さんに話をしたら明日面会していい日だから会ってくれないかって」


「……本当に?」


「うん、ただ、時間が決まっているから時間に間に合わせてほしいの。あと、“ありがとう“って言ってたよ」


「……わかった、明日必ず行くね。ありがとう」


少女とまた会える、嬉しいような、恥ずかしいような、いろんな感情が次々と生まれては消えていった。

寝る時間になり時間と部屋番号を聞いて、明日の準備をし眠りについた。






次の日、僕は、少女に会いに行った。


少女はやっぱり眠ったままだった。


さすがにこの部屋には猫を連れてこれないので施設の人に預けている。

話したいことはたくさんあったのにうまく話をすることができなかった。

面会のあとも、少女の病室の機械が時間を刻む音がひたすら頭に響いていた。






その日のよる不思議な夢を見た。


真っ暗ななかで遠くで名前を呼ばれているようで耳を澄ませると徐々に聞こえてきた。


少しずつ声が大きくなり、僕の名前を呼ぶ声がはっきりと聞こえた時。

それは、ずっと聴いていなかった少女の声だと気づいた。


-聞こえた!よかった!

今日は、会いに来てくれてありがとう!

たくさんお話ししてくれて嬉かったよ。

元気な姿で合いたかったけど叶わなかったな


「まって!」


声のする方に手を伸ばしたときちょうど目を覚ました。


周りを見るともう朝になっていて、なんとなくじっとしていられなくって病院に向かう。


すると、そこには、泣き崩れる少女のお母さんの姿があった。


後で聞いたことだけど、少女はその日容態が悪化し命を落としたそうだ。だけど、その表情は最後の瞬間は穏やかになったと……








それから時が何十年と僕は歳を重ねた。


あの日から、“あの日に戻れる方法“をずっと探し続けた。


時間が傷を癒してくれると言うけど、僕の後悔の念は年を取るにつれ強く、薄れることはなかった。


猫もいつの間にか寿命になり先に亡くなってしまった。


時を戻す方法を、手がかりを人から、書物から、過去の歴史から、いろんな所を旅もしたし、研究に研究を重ねながら探し続けた。


そしてついに、時を戻す方法をやっと見つけた。


そして、あの日へと僕は戻った。


手や脚の感覚に違和感を感じ、近くにあった水溜まりで姿を確認する。


ふわふわの尻尾にとがった耳に短い四足の脚に長い髭……


僕の姿は雄猫になっていた。


あの日少女と出会うことになった猫とは別の猫になっていた。


どうやら時を戻す方法の副作用らしい。


それから、僕はあの日の後悔をどうにかしようといろんな事を試した。


でも、なかなかうまくいかなかった。


何度も似たような結末を見ては、時をまた戻した。また失敗し、何度も何度も繰り返し諦めそうなった。孤独なのも思った以上にきつかった。


少女も似たような気持ちで病気と戦っていたんじゃないかってふと、考えては、あの日の後悔をどうにかしようと頑張った。


でも、結局は全てダメだった。




何度も時を戻った副作用で身体中がボロボロになった頃今まで出会ったことのない不思議な雰囲気の人に出会った。


それは、何回と繰り返していくうちの奇跡の出会いだった。


その人は、“大切な人が願いを叶える瞬間“を見にきたという。


“輪廻に干渉すれば結末が変えられる“その人僕にそういって独り言のように話した。


「何かを変えたいと過去に干渉することは罪だ。だけど、それを変えられる方法はある」


僕の命の源をその人は指差した。


「その命を、かけて運命を“呪う“といい。君の命は、代償でどうなるかわからないけどね」


その代わり、僕の魂はどうなるかわからない……

でも、これで、あの日の事が償えるなら、それでもいい。


「そうか、方法は、君の願いがもし誰かの為ならその人がなくなる日に呪いをその人にかけるといい。」


その人は、そういうとどこかへと姿を消してしまった。


始めは、何を言っているかわからなかった。


でも、僕の魂は何回も繰り返していくうちに変化しボロボロだった。


あと何回繰り返せるかわからないし、そろそろ終わりが近づくのがわかった。


だから、この方法を聞いたときほっとした。


そして、僕は、あの日、少女が息を引き取る日に呪いをかけた。


その後、僕は、意思が少しずつ薄れだれにも知られることなく消えた。












「おきて」


ん?


「目を開いて!」


目を開くと視界がぼやけていてここがどこかわからない。


「私が見えますか?」


目の前に猫がいた。

息を引き取ってずいぶんたつあの猫だ。

……!


身体を起こす


「うっ!」


全身が痛い…


手や脚をみると、まだ雄猫の姿のままみたいだ。


ふと、周りを見渡すと真っ白な空間にいた。


「えっと、なんで僕はここに?ここはどこ?そもそもなんで猫なのにしゃべれるの?」


猫は、クスクスと笑った。


「私は、時をかけて何年も生きる猫又なんです。死んでもまた、記憶を引き継いで生き続けるね」


猫をみるといくつもの尻尾があった。


「猫又?」


コクンと頷いた。


「君が、普通の猫じゃないのはわかったよ。でも、僕は消えたはずだよ?」


「そうですね。本当は、消えるはずでしたね。私も、それを見守るつもりでした。でも、どうしてでしょう?つい、手を伸ばしてしまいました」


ふと、猫の尻尾をみるといくつかある尻尾の内二つが黒く焦げていた。


「貴女とあのこと過ごした日々が少しばかり幸せすぎたようですね……つい、あの時干渉してしまいました。この尻尾はその代償です」


猫は焦げた尻尾を労るように毛繕いした。


「さて、そろそろ本題に入りましょう。命がけで願った貴方の“呪い“がどう影響したか見せて上げましょう」


急に目の前が暗くなったと思ったら次の瞬間見知った景色が見えてきた。


そこには、病気が完全に治り友達と笑っていろんな事を楽しむ少女の姿があった。


「よかった。ありがとう」


気がつくと、涙を流していた。


猫は、僕が泣き止むまでそっと側でまっていた。


泣き止んだ後、もう一度猫にお礼をいった。


「これで、あなたの未練はもうないですか?」


コクンと頷く。


そういったとたん嬉しそうに猫が喉をならした。


「?」


「実は、あの頃からずっと羨ましかったことがあるんです。それを叶える協力をお願いしたいのです。」


そうだね、君には救われているから叶えられることなら


「ワタクシ、何年も歳を重ねてきたのですが“友達“という存在が羨ましかったんです。なので、“友達“になってほしいんです。」


うん、いいよ。そんなことでいいの?


「はい。」


そっか。じゃあこれからもよろしくね。



その後二匹の猫はたくさん、たくさんの出会いと別れを一緒に経験することになるけど、それは別の話。





春風がそっとほほを撫でる。


行きなれた病院に、お別れをし、でてきたところだ。


にゃー


にゃー


目の前に2匹の仲良しの猫が現れた。


にゃー


猫達は、私と後ろの施設を交互に見つめて、まるでその光景は、“おめでとう“といっているようだった。


「“ありがとう“」

ふと声にだしていた。


2匹の内1匹の猫が頷いたように見えた。


ビュー


強い風が急に吹き目をつぶる。


風が落ち着き目を開くと、そこにはもう猫はいなかった。


でも、なぜだろう。今日始めてあった猫のはずなのに、どこか懐かしくって嬉しいような、気持ちが溢れてきて止まらない。


ポタ ポタッ


ほほに涙がつたってこぼれおちる。


にゃー


1ぴきの猫が、私の足元に戻ってきて私を心配しているようだった。


私が泣き止むまでずっとまっててくれた。


「なんだか、ずっと見守ってくれてた人がいなくなったような、会えたようなそんな不思議な気持ちなんだ……不思議だね」


にゃー


もう1匹の猫が私の側にいた猫を呼ぶように鳴いた。


側にいた猫は、私をみてふと、近くの野花をちぎって持ってきてくれた。


「ありがとう」


猫は、私の笑顔をみて安心したよう“ニャー“と鳴いてもう1匹の猫の方へといってしまった。


「バイバイ。ありがとう。」


ニャー


今度は声だけで姿は見えなかった。


花を大事に持ってふとあたりをみわたした。


桜の花が所々に咲いていた。


長い冬が、終わりを告げ、暖かな春がそこまできていた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!


その作品のパラレルワールドでの物語


もしもう一度戻れたなら(もうひとつの物語)


短編で投稿済みなのでお時間があるかたは、そちらもお読みいただけると嬉しいです。


ご意見、ご感想、アドバイスなどいただけるとありがたいです(*^^*)


この作品の新しいストーリを今準備しているので詳しい内容は、活動報告で確認していただけると嬉しいです(* >ω<)


作品に最後まで目を通していただき感謝の気持ちでいっぱいです♪

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― 新着の感想 ―
[一言]  読ませていただきました。 すごく優しい作品でした。 あったかいですね。 思いって大切なんだなあって。  ありがとうございます。
[良い点] 展開が、どうなるのか… 次々と、ページを、めくるように、 画面を、スクロールさせて頂きました…m(_ _)m 不思議な魂の、物語…。 ひょっとしたら、 不思議な出会いも 輪廻転生…も… 呪…
[良い点] 救えなかった病気と闘う少女を今度こそ救おうと孤独と闘いながら懸命に頑張る"僕"の姿にとても感動しました。 この作品も同シリーズの二つの作品も それぞれ一つの作品として完結しているうえに …
2021/01/27 22:40 退会済み
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