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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

the desire for revenge

作者: セロチ

長い線路を揺られこの街にもどって来ました。

すいませんすいませんと肩がぶつかる度に申しながらわたくしは、切れ目の入った切符の回収場所へと向かいました

駅を出まして、家に帰る途中懐かしい公園や図書館などにいちいち胸を熱くしておりました

あの子との思い出は10年以上たった今も尚、色褪せることはありませんから


あれは10年以上も前の寒い朝で御座いました

わたくしは息子を連れて冬のキラキラ光る海を見に行ったのです

ええ、その辺りの

そしたらね、しばらくは輝く海を見て、嬉しそうにはしゃいでおりましたが…わたしの息子ったら、釣りがしたい、と言い出したのですよ

釣れたってどうせ2、3匹だと言い聞かせますがどうも聞いてくれない

仕方無く、それでは竿を売店へ借りに行きましょうと二人で足を運んだ訳で御座います

年老いた老夫婦が背を曲げ笑顔で竿を貸して下さいました

息子の手を取り、良い場がないかしばし探してみたところ、少し人目に付きませんが、良さそうなところを見つけることが出来ました

五十歩程先に若い女性が独り居るだけでしたので、いい穴場だと喜んでおりました

餌を買い忘れてしまった事に気付き、息子を待たせて買いにゆこうと思ったのですが、一つ気に掛かることがありまして


それはね、先程からその少し先に居る少し挙動不審に見える女が、その虚ろで暗い目をジトーとこちらに向けているのです

わたくしと目が合えば逸らすのですが、なんだか妙な胸騒ぎがいたしたものでした

あぁ、何度後悔した事か…わたくしは息子に気を付けて待っているんだよと言い、独りで餌を買いにいってしまったのです餌を買いに先ほどの売店に戻りますと、3種程の餌があり、迷っていた所、先ほどの老人がこれがいいと一つ教えて下さいました

早く釣りをさせてやりたいと、息子の元へ小走りで向かいました。

ですが、二人で探したその場所に、わたしの息子は見当たらない…

大きな声で名を呼びますが波の音ばかりで返事は有りません

そろそろ嫌な予感が頭をよぎった頃、先程の女が更に挙動不審な様子でウロウロとしているのが見えたので御座います

わたくしは走り、その女の襟首を掴み、わたしの息子はどこかと叫びながら後ろに引き倒したので御座います

すると女は着ている洋服にてかてかと鈍く光る血液をたくさん付けて、甲高い声で笑いながら海の方を指差すではありませんか

もう辺りは暗くなり、水面は妖しく揺れておりました

背に痛みを感じ、後ろを振り返った時、どこか口裂け女を思わせる満面の笑みを浮かべた女がおりました



わたくしが目を開けますと、どこか病院のようなところで御座いました

見回りの看護婦がわたくしに気付き、売店の老夫婦が病院へ運んで下さったことをききました


わたくしの意識が戻るなりすぐに警察の方が来られ、息子の遺体が発見されたこと、犯人は逃げ果せたことなどを教えて下さいました

わたくしは知っている情報を全て話しました

ですが、あの女の顔を思い出す事が出来ないので御座います

わたくしは体が回復するのを待ち、息子を一人待たせた事を悔い送る日々を過ごしたものです

早く息子の墓の前で手を付いて謝りたかった…



退院したのはあの日から一年後の事で御座いました

息子の墓にすがりついて泣いていましたら、ふと負の感情が沸き上がってきたので御座います




復讐してやろうと




それで、

全国各地を電車で、あの女を捜す旅をしていた

でも、見つかる筈が御座いません

やはりとうとう見つからず、この街へ戻って来たので御座います


そしてわたくしは、息子が死んだ海に向かうことに致しました

もしかしたらあの女が居るかも知れない、そう思いながら




海に着くと、10年以上もの月日が流れているのにも関わらず、売店がそのままの姿で御座いました。


店員を呼ぶと、中年の男がでて来ましてね

老夫婦が死んだ事を聞きました

命を助けてくれた事を告げ頭を下げると、わたくしはあの場所へ歩きだしました




そこへ着くと、わたくしは辺りを見回してみました

ですがあの女どころか本当に一切誰もおらず

溜め息をついてしばらく海を眺めておりましたが、帰ろうと思い立ち上がりますと、後ろにふと気配を感じたのでございます


慌てて後ろを振り返りますと、あの時の女が手にやはり鋭利な刃物を持ち、あの震えそうな笑顔で立っておりました


そしてあの女は私に切りつけて来たのです

ですから、わたくしは腕を叩き刃物を海に蹴り落とし、あの女の首をグッと両手で締め続けたので御座います


女は暴れることなく涙を流していましたが、静かに息絶えました













はい、これが息子殺害事件の容疑者の証言です。ええ、亡くなった青年の首の手の形が容疑者と一致するんですよね…

空想と現実が混ざり合ってこの事件を生んだ…

空想上で女を作り出し、息子が殺されたと思い込んだ容疑者は、実の息子を自ら手にかけてしまった、と言うことですか…











最後までご覧頂き有り難うございます


評価、感想、アドバイスよろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] ストーリーがほんまに面白かった
[一言] 御座いますは、ちょっと小説には合わないんじゃないかな。「〜だった。」とかのほうが。 あと、ぜひ、僕の小説も読んでください。そして、感想、評価、アドバイスをお願いします。たっきで調べていただ…
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