第三話 脅威との対峙
ダンジョンまでの道のりはそれはもう順調で、特に何事もなく到着した。大きな穴が口をあけて、その奥に道がつながっている。見た感じ自然のものではなく人工的な感じ。
「ではこの間言っていたように四人一組でパーティーを作ってもらいます。クラスが勇者の人はバラけてください」
みんながいっせいに動き出す。皆頑張って勇者のパーティーに入ろうと必死だ。
まあ俺はエリシアがパーティーを作ってくれるということなので関係ないけどな。そうして待っているとエリシアが二人連れてきた。
「ではいきましょうか」
そう言って連れてきたのは、光と愛結蒼だった。
「あの、突っ込み待ちなのかわかんないけどとりあえず言っとくね、何でエリシアが入る前提?」
柄にもなく突っ込んでしまった。
「まあまあ、細かいことはおいておきましょう」
「おいておけないよね。だってエリシアトップの人だもんね!」
突っ込みすぎで疲れそうだ。俺、そんなアクティブじゃないんだけど
「私がパーティーに入るのは正当な理由があります」
「、、、。エリシアが戦いたかっただけでは?」
ビクッ!
そんな擬音すら出てきそうなほど動揺していた。
「そんなことあるわけないじゃないですか。それに、不安因子はあなただけではないのですよ傀儡」
そういって愛結のことを持ち出した。
「彼女は回復系統に才があるのですが、生物を傷つけることができないという性格らしいので、しっかり守らなくてはいけないのです」
「要するにボディーガードってところか」
「そうです。理由がちゃんとあるんですよ」
俺はこれ以上の突っ込みをするのが嫌なのでしぶしぶ引き下がる。そこに光がよってきて言った。
「なあ、傀儡。司令塔と中がいいのはいいことだが、気をつけろよ?」
「なんで?」
「エリシアさんはただでさえ、美人で男どもから人気があるのにお前は長い間二人で訓練してるんだ。まあ見せつければ見せつけるほどヘイトがたまるぜってことだ。」
確かにそうだ。訓練があまりにきついから、女性と二人きりになるという危険性を失念していた。
「まあ大丈夫さ。俺役立たずだし」
「本当にそんな態度で大丈夫か?」
「大丈夫だ問題ない」
久しぶりに光にあったがいつもと変わらないような会話だった。
こんな感じで俺たちの演習は始まったのだった。
☆――
俺たちのパーティーは最後に洞窟に入っていった。
「この洞窟、とても人工物みたいだけどなんかの施設だったりしたの?」
「簡単に説明すると採掘場です。元はといえば、人工的に作り出されたものだったのですが、突然魔物が現れるようになったのをきっかけに、ダンジョン指定されたと聞いています。」
なるほど、道理で。
ちなみに、俺は今何もしていない。もちろん魔物の巣になっているため魔物はやってくるが、前衛二人が強すぎて俺たちだとお話にならない。
前衛はもちろんエリシアと光だ。
ここは洞窟の入り口あたりなのだが、この辺りの魔物は二人にとって片手間に屠れるようだ。
もちろん装備も最初に倉庫でもらったオーパーツ。出てくる魔物はスライムやゴブリンだ。
俺以外のみんなはもうすでに訓練場で訓練用の捕獲された魔物を狩っていたようだ。というわけでみんな別段驚いてもいなかった。
俺は結構緊張したが。
どんどん進んでいくと突然俺の体が光り始めた。
「レベルアップしましたか。経験値は近くにいる奴にも同じ量入りますから」
経験値は生物を殺した時に出る生命エネルギーの塊のことを言う。
「レベルアップするとステータスが上がります。トレーニングをすれば努力値と言ってステータスが上昇していきますが、レベルアップすると、もとが強くなるので、こちらのほうが圧倒的に効率的です」
なるほどそうなのかと思いステータスウィンドウを開く。一瞥して一瞬でウィンドウを閉じる。
すべてのステータスに大体50くらい上乗せされただけだったので、泣きたくなった。MPに至っては1しか上がっていない。
まあこれはいいだろう。
周りからどのくらい上がったかどうか聞かれたが
「まあ、それなりに」
とだけ言っておいた。
さらに進んでいったのだがそろそろ魔物の数も多くなって、前衛二人を抜けることが多くなっていた。
そこを俺が倒、、、。そうとして割とガチでやられかけた。俺のステータスだと、スライムや、ゴブリンといった弱いモンスターにすらやられるようで。
仕方がないので、筋力と瞬発力を強化して切り捨てた。そこまでMP を使わなかったし、MPの自然回復ですぐに満タンまで戻った。
そうしていったい目を倒したその時。突然悲鳴が上がったのでその方向に顔を向けると愛結さんがゴブリンに襲われている。スキルのジャッジメントで受け止めていたが、恐怖におびえて反撃もできそうにない。
ジャッジメントの効果か、攻撃された部分だけに局所展開されるような形の障壁が生まれている。
破られそうにはなかったが、放置するわけにも行かず、助けに入った。
「ありがと、、、。」
「いいよ別に、それより大丈夫だった?愛結さん」
「大丈夫。それと蒼でいいよ。名字で呼ばれるの嫌い」
そう言って蒼は、うつむき加減に暗い影を顔に落とした。あまり家にいい思い出がないのかもしれない。
「わかった。蒼だな。とにかく、少しずつ魔物も強くなってきてる。ここからはより警戒して進もう」
蒼が小さくうなずく。
俺たちはそのまま、奥へと向かった。
☆――
かなり開けた広大な空間。
そのあちこちには穴があり、それぞれ1~10までの番号が振られていた。
その真ん中でおれたちは今休息を取っている。
さすがは元採掘場。
かなりの広さがあるようで1日では最深部にたどり着けない。
「あ~。疲れた~。無駄に広いわねこの洞窟」
そんな軽口をたたくのは立華彩乃を筆頭とした女子の集団だった。
女子には魔術師系の職業の人が多かったためさほど疲れていないのか、皆楽しそうにしていた。
初日の不安と緊張が嘘のようにまるで氷が解けるかの如くに。
「皆さん注目!」
この空間全体に響き渡る声でエリシアが注目を集める。
「今日はここで休みます。
これからテントの設営に入るので、手伝える方は協力していただきたい」
男子のうちで、アウトドアが好きな数人が名乗りを上げた。
そうして、数人の協力と王国の兵士たちの努力であっという間に設営が終わった。
みんな今は思い思いに自分の時を過ごしている。
誰の顔を見ても疲労の色がうかがえる。
まあしょうがないだろうな。
初めての実戦だ。
戦ったことがあるとはいえ、訓練と実践ではその重みが違ってくるというもの。
そう受け取ることにした。
☆――
みんなが寝静まった丑三つ時。
そんな夜中に悲しげな素振りの音が響く。
しかしその音に見張りは誰一人気づいていなかった。
それはその音の主。
傀儡が隠蔽魔法で音を消し去っているからである。
なぜ彼がそこまでして素振りをしているのか。
それは努力によって伸ばせるステータスの値。
努力値を上げるためである。
そのために、ここ全域を覆い尽くすほどの任意の音の除外効果の発動、
そしてそれと同時に素振りを行っていた。
それはステータスが低い彼がみんなに少しでも追いつくための努力だった。
そんなこととはつゆ知らず、見張りはあくびをして眠たげに交代を待つ。
生徒たちも静かに寝息を立てる。
そこにはやはりもの悲しげな素振りの音が響くのだが、誰も気づくことはない。
☆――
洞窟に入って二日目。
別れ道を1の穴に進んだ俺たちは昨日と特に変わらずに進んでいた。
ただ昨日と違うのは、魔物の数だろう。
はっきり言って異常だ。
四方八方から次々と魔物が押し寄せる。
そのせいか、前衛二人にも余裕がなくなってきている。
おっと、ただでさえ魔物が多いのにほかの人の心配をしてる暇なんてなかったな。
人の心配といえば蒼のほうもやばいことになっている。
相変わらず反撃はできていない。
ということで、ただでさえ忙しいのに、
蒼の護衛的なことまでやる羽目になっている。
ちなみに俺は今日だけでレベルが三つも上がった。
そのおかげでステータスも平均200になっている。
といってもみんなには追いつけない。
俺で三つも上がったんだ。
成長率アップのスキルがついた蒼と光は、倍くらい上がっている。
俺がステータスで追いつけるような次元に皆はいないんだ。
ちなみにレベルが上がるにつれて必要な経験値は増えていくようだ。
同じ魔物を個体差はあれどより多く倒さなければ、レベルが上がらないのがその証拠。
ここまで呑気に考え事をしていたが、そろそろ本当に余裕がなくなってきた。
多すぎてさばききれなくなってきている。
いくらステータスを強化してるとはいえこれ以上は限界だ。
俺という人間は一人で、使える剣は一本。それでは限界がある。
ここで俺の持っている武器の特性を利用する。
俺の武器は27個の塊からできている。
そして使っていない塊は宙に浮かせて自由に扱える。
しかも浮かせた状態でも好きな形に変えられる。
やってみるのは初めてだが、やらなければいけないのだからやるしかない。
塊のうち、二個を二本の剣に変える。
塊を浮かせている間は、自由自在に空中を移動させることができる。
これを使えば、少しくらいなら倒せるだろう。
ただ同時に扱えるのは今のところ2本だけ。
それも正確に操ることはできない。
さすがにそこまで化け物のような頭の処理能力はしていない。
とにかく今自分の持てる全力をもってして、目の前の事態に対処していった。
☆――
一度魔物の波が落ち着いた。
どのくらい経っただろうか。
三十分は経ったように思えるがもしかすると十分も経ってないかもしれない。
とにかくそれだけ疲れたということだろう。
エリシアにいつもこんなものなのか聞いてみたところ、
答えはNOだった。
「ここまで多いのは初めてです。それに、ここでは出てこないような魔物の姿も確認できました。はっきり言ってありえない」
「つまり、、異常事態、、ということですか?」
光が息も絶え絶えながらにエリシアに聞いた。
「そういうことです」
その後も少し話していたようだが、
それも終わると、「とにかく用心だけはしておきましょう」
というエリシアの声とともにまた進み始めるのた。
進み始めたところで蒼が「ごめんね」と謝ってきた。
「どうしたんだ?」
「だっていつも守られっぱなしだし」
「それは別にいいよ。こっちとしても困っている人を放って措く理由もないし」
これは一応本心だ。
別に冷淡な奴のように見られたいわけじゃないからな。
「でもかなり負担でしょ?」
「まあそうだけど。でもやっぱり危なっかしいし」
「そう、、だよね。うん。じゃあこれからもお願いしていいかな」
そういう彼女の顔には自分不甲斐なさがにじみ出ていた。
「いいよ。別に」
そんな彼女の表情に対して俺は苦笑いで答えるのだった。
☆――
道中、やはり魔物は多かった。
本当にうんざりするほどに。
そして今まで戦ってきて、気づいたことがある。
魔物たちは必死に何かを守っているようなのだ。
それは俺たちが先へ進むにつれてより顕著なものになっていた。
この先に何があるのか。
その疑問は一瞬で解消された。
今までただ地面を掘りぬいただけだった通路。
それが、突然純白の煉瓦で形づくられたものに変わった。
まるで王城の廊下のような荘厳さがあった。
エリシアのほうを見てみても、何が何だかわからないという顔をしていた。
しかもここから先、見えるところまで一体も魔物がいない。
ここが異常の元凶だと誰でも察しが付く。
「この先へ行くのは危険な気がするが進むしかないな。先に行っていた人たちが心配だ。」
そういったのは光。
その言葉を聞いてエリシアも呆けたままの顔から元の顔に戻った。
「そうですね。行くしかありません」
そのまま進み始める。
この先に何が待ち受けているのか。
まるで、これから全校集会で登壇しようかというような焦りや緊張が生まれた。
しかしそんなことを考え終わる前に、道が終わっていた。
突き当りには扉があった。
そこまで大きくないが、それこそ屋敷の門のような壮大さがあった。
まわり同様白に統一されている。
少し違うところといえば、金の装飾が施されているところだろう。
なんだろうこの悪寒。
はっきり言うと、とにかく不気味。
とても質素で鮮やかなのに、見た目に反して生理的嫌悪感を覚える。
ほかの皆はそんな事はなく、むしろ何かに取りつかれたように扉を見ている。
とにかくこの先に皆がいることを信じて先に進むしかないだろう。
そうしてエリシアに声をかけると
「!すみません。行きましょう」
と焦ったように言っていたのでかなり魅入られていたようだった。
「それと、あなたたちは、ここで待っていてください」
「俺たちにも行かせてくれ!中がどうなっているかわからない以上みんなが無事とは、、。」
その光の言葉は、エリシアによってさえぎられた。
「だからこそ、あなた達を生かせるわけにはいきません。犠牲が増えれば面白くありませんから」
光も渋々といった様子で引き下がる。
向こうのほうが明るいのか、光が差し込む、白い壁と相まってまるで天国の光のようだ。
そのまま扉を開けていきそして目の前が開けたとき、
天国とは似ても似つかない地獄のような光景が広がっていた。
震えながら端に固まった生徒たち。
あわてる王国騎士達。
そして何より、人の頭から上をすっぽりと覆う魔物の影。
そのまま魔物は顔を上げる。
そこで騎士の体はポトリと落ちた。
☆――
突然の出来事に俺だけでなく光や蒼はもちろん、
エリシアまでも茫然自失といった感じになっている。
誰一人その場を動けず、まさに蛇に睨まれた蛙のようだ。
事実その魔物は蛇のようであり、睨まれているのも現実。
動けたとしても腰を抜かして後ずさりするのが落ちだ。
そんな人一人を簡単に加えられるような蛇が、今度はこちらに興味を向けてきた。
蛇が進み始める。それと同時にエリシアが蛇に切りかかった。
「逃げてください!!」
エリシアの警告に従うべく、振り返った俺たちは、驚きに目を見開いた。
扉の外側にいたはずなのに気づけば内側にいて、扉は固く閉ざされていた。
閉じ込められた。気が付かないうちに。
それに気づいたエリシアが声を張り上げる。
「みんなのところに行ってください!!」
エリシアの声にはじかれたように動き出した。
「行くぞ光!蒼も!」
二人の手を取り引っ張る。
二人とも一瞬驚いていたが、すぐに俺についてきた。
もう少し!!あともう少しでみんなの所に着く。
その時。
「主賓のお出ましだ」
美しい声が響いた。
恐ろしいほどただただ美しい声。
すべての意識を持って行かれた。
気づけばダークネスサーペントまで止まっている。
声はそれほどの力を持っていた。
不意に漆黒の羽が、光をも吸い込まんとするほどの羽が、雪のように舞い始めた。
羽の出所を恐る恐る見つめた。
目に入ってきたのは『天使』のよう何か。
光輪と羽は黒く、それでいて美しい。
顔は男性とも女性ともつかない中性。
声も同じく。
「ごきげんよう。突然の無礼申し訳ない」
一挙一動、そのすべてに注目してしまう。
しかし、そこまでの美しさを持ちながら湧き上がる感情は、
恐怖だけ。
「まずは名乗ろう。わが名は堕天使ルシファー」
緊張感が空気を支配する中、
「皆はこう呼ぶ。悪魔サタンと」
堕天使は名乗り、言った。
「申し訳ないが、関係のないものは、少しの間、止まっていてもらおう」
サタンはおもむろに指を鳴らす。
音がはじけた瞬間、体が固まる。
しかしそれも一瞬。
すぐ動けるようになった。
少し動きかけてすぐに止まる。
下手に動いて相手に気づかれでもしたら厄介なことになる。
「驚いた。まさか動けるとは!!」
まずいやらかしたと思ったが、
「さすがは騎士というわけか」
という言葉でエリシアたちのことだと気づく。
エリシアたちは、俺たちを守る形でサタンに立ちふさがっていた。
「まあいいでしょう。あなたたちは眼中にない。
ペットの遊び相手でもしてもらいましょうか」
その声に反応してダークネスサーペントが動き出す。
エリシアたちもすぐに動き出す。
人数にも余裕があるためか、先ほどとは打って変わってかなり余裕を取り戻している。
しかし、ダークネスサーペントン騎士たちがかかりっきりになるということは、
サタンが自由に動くことができるということ。
サタンはそのままゆっくりとみんなと離れた位置にいる蒼のほうに向かう。
まずいと思った時には遅かった。
サタンは虚空から剣を取り出し、蒼に切りかかった。
大きな衝撃音と火花。
蒼の『ジャッジメント』が発動する
「なるほど、厄介な力だ」
そういうとサタンは何度も剣を振る。
焦って『観察』を発動。
蒼のMPがゴリゴリ削れ、感情が恐怖に塗りつぶされていく。
そんな蒼を見て騎士の一人がこちらに目を向ける。
その瞬間騎士の首が跳ね飛んだ。
一瞬でも気を抜けば瞬間、死が訪れる。
そんな相手を前にした騎士たちは頼りになりそうもない。
おそらくこの状況の中、騎士以外で自由に動けるのは、スキルで抵抗した俺くらいだろう。
そうなれば動けるのは俺一人。
だけれども、動けない。
正確には動いてはいけない。
今の俺ではサタンには太刀打ちできるはずもない。
ステータスはわからないが、確認する気にもなれない。
それほど相手が格上ということ。
動くことはできない。
でも、沈んだ蒼の顔をふと思い出したとき、見捨てようという思いは微塵もなくなった。
あの顔は、何かを背負っている顔。
何かに取りつかれ、何かを清算できていない顔。
今でも蒼の思いは、恐怖の中に後悔が生じている。
そんな蒼を見て俺が思ったことはただ一つ。
清算していないものは清算しなければいけない。
それが終わるまでは人間は死んではいけないのだ。
少なくとも、自分の納得いくまで突き詰めなければならない。
そして、この感情には裏がない。
少なくとも俺には裏があるようには見えない。
そんなまっすぐな蒼を見て、俺は、憧れた。
他人から自分を隠してきた自分にとって、そんな真っ直ぐな感情を持てることが、心底うらやましいい。
だから俺は、そんな憧れの人を、助けることに決めた。
これは俺が、人間を最後まであきらめていない、その証拠かもしれない。
ステータスの瞬発力と筋力を上昇させる。
これくらいなら、十分くらいは動けると思う。
そして足を折り曲げ越しに力をためる。
大振りの大剣を作り準備。
サタンはまだ蒼への攻撃に夢中でまだ気が付いていない。
最後に俺は、武器を取り、溜めた力を開放して、跳躍する。
爆音と衝撃波とともに、雲を引き連れて、サタンへ切り込む。
音速を超えた速度に目はついていけず、体は耐えられない。
そこで筋力を強化して、自壊を防ぐ。
目が追い付かない為、大剣は構えたまま。
走り抜き様の一閃。
手ごたえを感じ、瞬時に振り向く。
雲が晴れるとそこには、片翼を失ったサタンがそこに立っていた。
「やってくれるな。まさか勇者たちにこれほどまでの実力者がいるとは」
『観察』が発動し、サタンの次の動きの軌跡が見えた。
すぐさま回避。
その横を、サタンの剣が掠めていく。
「今のをよけるか。どんなからくりがあるか、見せてもらおう」
サタンが距離を取り、目を閉じる。
すぐさま追撃しようと距離を詰めたとき、おもむろに目を見開いた。
「天啓眼!!」
瞬間体が硬直し、すべてを見透かされているような感覚に陥る。
「なるほど、レベル、ステータスはともに低い。
ということはスキルか魔法でステータスを底上げしているのだろう
しかし、肝心のスキルがわからん」
硬直はすぐに溶け、瞬時に間合いを詰めて斬りかかる。
「これでも完全に止めることができないとは。お前は何者だ?」
「敵に、教えることは何もないね!」
油断したところへの奇襲。
しかしそれはあっさりと受け止められた。
その後何度も剣はぶつかり合ったが、一分ほどたったころ、
「貴様の実力の底も見えてきた。そろそろこの茶番も終わりだ」
サタンの動きはもはや別物へと変わった。
攻撃の手数も増し、完全に防戦一方となってしまった。
このままではすぐに限界が来ると思った俺は、残りのキューブを全部使い、盾を作り出した。
「まだそんなものまで隠し持っていたのか。勇者の連れなどではなく、大道芸人としての名前のほうがお似合いじゃないか?」
サタンの攻撃を剣で防ぎ、間に合わないものを空中の盾で受け止める。
そのうち攻撃を返せる余裕もできてきた。
このままいけると思ったその時、
「なかなかしぶといですね。でもこれで終わりです!」
次の瞬間観察によりサタンの次の手が見える。
まずい。
そう思って盾を三つ合わせて大盾へと変形すかさず空中へ固定し自分でも支える。
大きな衝撃の次に目の前が激しく移り変わり、次に見えた光景は天井だった。
「今のまで防ぐか。本当にどんなスキルを持っているのか。興味は尽きんがそれはまた今度だ。今は彼女を片づけるとするか。」
すべてが遠く感じる。
ステータスを開いてみると体力はもう100と残っていなかった。
蒼のもとへサタンが向かっていたが、骨が折れているらしく体はピクリとも動かなかった。
今一度サタンは蒼へ剣を振り上げる。
しかしもう止めに行けるような力は残っていなかった。
一日ずれての投稿になってしまいました。何が書きダメあるから大丈夫ですか。
全然ダメじゃないですか。次はがんばります。
よろしくお願いします。