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第九話 再会

蒼が目覚めた。そのことを俺はアスティアに伝えに行った。

結局アスティアを見張ることもなくほかの部屋で待ってもらっていた。


「わかった。すぐ行くぜ。、、とその前に、一つ聞きたいことがある」


アスティアは目を細めながら見定めるように言う。


「お前、管理者だな?嘘ついてもバレるぜ。なんてったってみえたからな」


「みえた?何が?」


「お前に光の断片が入っていってたのが見えた。それも、蒼に入ったのとは別の色のな」


なるほど。あの光がどういうものか知ってるということなのだろう。

それならごまかせないだろう。

俺は正直に話すことにした。


「そうだな。管理者だ。まあ何の管理者かはわからないけどな」


そういってステータスを見せた。


「ひっでーステータスしてんな。そのステータスでどうやって俺を、、、、いや、そのMPで強引にステータスを上げてんのか」


「で、俺が使えない管理者だってわかった感想は?」


「使えないこたあねえだろ。その傀儡ってスキルさえなくなればいいんだ」


簡単そうに言うアスティアは衝撃の事実をつきつけてきた。


「スキルはそいつの心の在り方が具現化したものだ。しかも後天的に取得するものもあるし、逆になくなることもある」


「聞いたことないぞそんな話!」


「そりゃあ世界の理だぞ。そこにたどり着ける賢者なんて一握りさ」


「心の在り方なんて、ころころ変わるんじゃ、、、」


「それは違うな。それは心の在り方じゃなく、ものの考え方だ。心の在り方ってのは、子供のころに受けた影響が大きく関係する。

いわゆる譲れないものってやつが心の在り方だ」


正直、ここまでくると哲学的な問いになってくるな。

そう思い話を戻そうとしたのだが、まだアスティアは語り足りないようでまだ話し続ける。


「例えば、幼少期、大人や、立場の強いやつが嫌いと思い、また、思い続けているんだとしたら、そいつのスキルは

大方、強いやつと相対すると自分も強くなるみたいなスキルになる。

例えば、周りのやつらに騙されたり、他人を信用していなければ、たにんをだましやすくなったり、他人を拒絶したりするスキルにな、、、、、」


アスティアはなぜか、黙り、俺のほうへ慈悲の目を向けてきた。


「お前、育った環境が悪かったんだな」


その言葉に自分の心が締め付けられる。


「違う。俺が悪かっただけだ。俺が他人に不利益になるようなことをしたから、他人に拒絶されたんだ」


そうだ。全部俺が悪い。相手に非がある事例なんて少ないし、こっちがを認めると面倒ごとなんてなくなる。

それで俺が不利益を被ろうが、俺の自業自得だ。


「だから、相手の求めるものが分かるように相手をよく見る『観察』相手の言うことに従い、相手がしてほしいことをするために傀儡、

そして自分を隠すための仮面か。すげえ自己肯定感低いんだなお前」


「仮面をかぶらない人間なんていないだろ。みんな本音なんてかくして、建前でしゃべってる。

自分がいやだから。自分がそうしたいから。そんな理由は認められないから、みんな仮面をかぶって生きているだろ」


「まあ確かにそこは間違っちゃいないが、相手の言いなりになるのは違うと思うぜ。自分の意見が言えないやつに、有能な奴はいないだろ。

言われたことしかできないんだからな」


心に突き刺さる。自分でもわかっていることを他人に言われるのは、相当つらい。


「だからってどうにかできるわけがない」


「そう思ってんだったらそれがお前の心の在り方なんだよ」


そういわれてはっとした。


「どうしても、変えることが難しいっていうのはそういうことだ。

さて、そろそろ話も切り上げてあっちへいくぞ」


立ち上がり、部屋を出るアスティア。

俺はその場からすぐに動くことができなかった。


☆——


アスティアと俺が戻った時には蒼も本調子になっていたようで、普通にしている。


「で?どうだった?」


蒼に目配せをしながら聞いたアスティアに彼女は首を振る。


「資格はあるけど器が足りないって」


「まあわかってはいたさ。さすがに十数年生きてきただけの一人の人間が、世界の一つを負う器を作れてるわけないからな」


わかっていたというように話を移す。


「こっからやることは主に二つだ。ここみたいに隠れ家を回り、ここにいる全員に資格があるかどうかを確認する。

まあこれは長期的な目標だ。それよりも今一番大事なのは魔王にあうことだな」


「魔王にあってどうするのですか?」


ここにきて今まで黙っていた先生が口を開く。


「殺すんですか?彼を殺して得をする未来が見えませんが」


「殺すんじゃねーよ。仲間に引き入れる」


「魔王を仲間に?」


光が口をはさむ。


「魔王を倒すために俺たちを呼んだんじゃないのか?」


「それは俺たちの敵の目標だ。あの服を通じて操られていたからな」


「世界の全てを管理できるのにそんなしょぼい手を使うのか?」


「奴にとっては遊びでしかないからな。あえて回りくどくしてんだろ」



確かにそうだ。世界を管理できるならその力ですぐにでも邪魔な奴らを消せる。

俺たちがすぐに消えてないということはそういうことだろ。


「さ。今必要なことは話した。今の話を聞いてでもついて来たい奴はついてこい」


「強制はしないんだな」


「別にあっちに帰りたくないとか、一人のほうがいい!ってやつもいるだろ。

まあ、この話を一回聞いてるから、管理者のやつが見逃すとは思えないけどな」


「聞いた時点で半強制ってやつか」


「わかってもらえたようで何よりだ」


「もとより私は帰る道を探す予定でした。いいですよ」


そう言った先生の目は決意に満ちていた。


「この世界は今窮地に立っている。そんな世界に私の生徒を長居させるつもりはありません」


「本音じゃねえな。まあいい。ほかのやつらは?」


「俺はついてく。一人だと死ぬでしょこういうの」


俺もついていくと告げる。


「傀儡がいくなら俺も行くぜ」


「みんな行く感じでしょ」


「行くしかないですよね」


光、彩乃、蒼も了承していく。


「この世の不条理な災害が、すべてではないにしろ彼のせいだというのなら、理不尽に奪われる命が彼のせいというのなら、私は見過ごしておくことができません」


エリシアも覚悟を固めている。


「その幼稚でまっすぐに物を考えられるとこ嫌いじゃないぜ。

というわけで全員の了承を得れたので、さっそくいくぞ」


「早速過ぎない!?」


「さっさと行かねーと付近の国境線全部包囲されて終わるぜ?」


光の抗議をさっと受け流す。


「さ、準備しろ!」


アスティアがそう言うと俺たちは突然現れた穴に吸い込まれた。


☆——


穴を抜けると、外はすっかり夕焼け色だった。


「ちょっと時間食いすぎちまったか。こりゃあ急がねーと本格的にまずいぞ、、。

よし!お前ら、走るぞ!」


あまりの扱いにそろそろ逃げ出したくなってきたが、そういうわけにもいかない。

覚悟を決めた直後だ。こんなことへでもない。

と、声を大にして言いたかったが、気絶して、覚醒して、体が本調子ではないのにさらに走らされるのは、さすがに勘弁だった。


「急がなきゃまずいのはわかるが、もうちょっとくらい休ませてくれない?」


光が恐る恐る提案したが、


「ダメだ。とりあえず、国境線を超えて隣の国に入るまではな」


と、一蹴されてしまった。

少し、先が思いやられる。

心の中で、はぁ、、。とため息が漏れた。


「つってもこの調子じゃあ街道は使えねえな。獣道に、道なき道、山越え谷越え、苦難越えってな」


「それってどういう、、、」


「言葉通りの意味だが?」


質問した彩乃の顔が引きつる。

エリシア以外、ほかのみんなもまじかって顔で固まっている。


「そんな顔したってどうしようもないもんはどうしようもないぞ。ほらほら、固まってないでさっさと歩け」


そう言って一人先行するアスティア。

その後ろを俺たちはどんよりしながらついていくのだった。


☆——


「確かに急いで正解だったな」


「だから急げって言ったんだよ」


俺のつぶやきにアスティアは答える。


「本当だよ。なんてったって、この山越える以外のルート全部つぶされてるんだもんな」


光が言う通り大方の道はつぶされていた。

だから仕方なく俺たちは道なき道を進んでいる。ひたすら北に向かって。


「それくらい王国の手の物は対処が速いんだよ。まあ、この国が小さいってのもあるだろうが。」


「ほかの国はもっと広いのですか?」


先生がアスティアに質問する。


「そうだな。いろんなところがあるが、うちは小さめだったな。ほら。もうそろそろ隣の国だ」

まだ日が暮れてまだ体感1,2時間ほどといったところだろう。


「想像以上に早かったね。」


蒼が声を漏らす。俺も同感だった。


「まあ、逃げた時点でかなり国境に近かったからな。ほら。山頂だ」


そう言われ顔を上げると少し先で道が途切れていた。

どうやらこの先は少し見通しがいいらしい。

ほかの場所より少し開けていた。

そうして登りきったところで見えたのは燃えている小さな村だった。


「おい!あれまずくないか!?」


「そうだな。もしかしたら管理者の使いの仕業かもな、、、。仕方ねえ、急ぐか!」


俺たちはいつになったら一息つけるのだろうか、、。


☆——


きつい、、、。

押し寄せる魔物の大群。

火の海と化した村。

煙に巻かれ鈍る判断力。


「このままじゃ、、死ぬ、、、。」


思えば一回目の死も同じような人助けの死だった。

村の人たちは、避難できただろうか。

あたりを見渡してみたが、人の影どころか、物音ひとつしない。

逃げられたようだった。


「じゃあ、あたしもそろそろ、、、、」


逃げよう、、。そう思った瞬間、背筋に悪寒が走った。

おもむろに振り向くと、そこには巨大な龍がいた。


「こんなの、あたし独りじゃ、どうしようもないじゃん、、」


今自分が逃げれば龍が逃げた人々に追いつき、危害を加える可能性がある。

かといって、一人で挑めば負けは必然。

待っているのは死。

しかし、時間稼ぎの足止め程度なら可能。

自分一人の命と、村全体の命。

天秤は確実にこちらの方が軽かった。


「足止めしか、、、ない」


そう思っていても足が動かない。

体が震える。今にも逃げ出したい。

当たり前だ。死にたい人なんていない。

自分が逃げたところで責める人はいない。

自分の代わりに他人が死ね。

それが人間の心。でも、だからこそ、、。

あたしは逃げるわけにはいかなかった。


「しょうがないなぁ。そこのドラゴンさん、ちょっとあたしと、遊んでってよ!」


そう意気込み、自分を奮い立たせ、ドラゴンに立ち向かった。


☆——


「おいおい‼ドラゴンまで居やがるじゃねーか!こりゃあ本格的に管理者の仕業だな」


大きな龍の影を見たアスティアは忌々しそうにそう叫んだ。


「傀儡!俺とお前で先にいくぞ!下手すれば手遅れかもしれねーが、、、残された可能性にかけようじゃねーか!」


そういうとアスティは一気に加速。俺たちを置き去りにした。


「人使いあらいなぁ」


そういうと俺もステータスを上昇させて一気に加速した。


「「「ちょっとまてよおおおおおおお!!」」」


後ろから悲痛な叫びが聞こえたが、ここは聞こえなかったことにした。


「なんで先に俺たちだけで向かってるか、わかってるよな?」


「さすがにこのステータスのドラゴンだとみんなが全滅しかねないからだろ」


「ご名答!」


今言った通りあのドラゴンのステータスは平均一万を超えていた。

成長率で言えばおそらくみんな、数十日で追いつくことができるであろう。だがしかし、今のみんなにはきつい相手だ。

まあ、俺もきついが。ステータスを上昇できるといったって一時的だし、一万なんて数値、一つ強化するだけでMPが空になる。

でも、勝機がないかと言われればそうでもなかった。

観察で思考が見えないということは目の前で村を焼いているドラゴンに理性はないということだろう。

理性がないということは手当たり次第に暴れまわってるってことだ。

やろうとすることが単調なはずだ。

それに、今はアスティアがいる。彼の戦闘力的には討伐は可能なはずだ。


「見えたぞ、、、あれは、、、戦ってるやつがいるな。」


暴れるドラゴンの周辺で飛び回る人影があった。


「すごい、、、。一人で互角にやりあうなんて」


「そうでもないみたいだぞ。よく見てみろ。」


アスティアに言われてみてみれば確かに、劣勢だ。


「決定打にかけてジリ貧みたいだな。助けに入るぞ!お前はあいつを安全なところに連れて行け!」


了解と返事するとそれぞれさらに加速し火の海へと突っ込んだ。

あつい、、!

空気を吸えば煙と暑さで肺が悲鳴を上げる。

皮膚から伝わる熱はサウナでの我慢大会なんて比じゃないほどだ。

幸いステータスを上げているおかげでこの程度の熱では体に影響が出ることはないようだが、

精神的にはかなりきつい。

アスティアがドラゴンと激突。

そこからのことはあまりにも早すぎて俺には見えなかった。

アスティアにはどうってことないようだが、さっさと用事を済ませてしまった方がよさそうだ。

ドラゴンに気づかれないよう、闇魔法で気配を消す。

身体強化をしている影響でMPを節約するため少し甘い隠蔽だが、アスティアが相手してる間は大丈夫だろう。

目の前で、何が起きたかわからず警戒している人影に近寄り声をかける。

「にげるぞ」

その瞬間剣が首筋にあてられた。

全く見えなかった。スピードもそうだが、精度も恐ろしい。

首ギリギリでぴったり止まってる。


「待て待て!敵じゃない!助けに来たんだよ」


「!!」


そう言って姿を現すと、相手は驚いた顔をしていたが、とりあえず素直についてきてくれた。


「あの人一人にしてよかったの?」


「少なくとも俺よりは強いから大丈夫」


少しでも安心させようとおもってそう言ってみたが、案外焦ってなさそうだ。


「で、他人の空似ってレベルじゃないんだけど。なんで傀儡がこっちにいるの??」


初対面の相手からそんなこと言われて少し面と食らってしまった。


「なんでおれのなまえをしってるんだ? 」


「そっか、あの頃と見た目違うもんね。あたしよ。鈴町すずまち 千佳ちかよ。」


千佳、、、。覚えがあるような、ないような、、、。


「もしかして忘れちゃった?ほら、家族ぐるみの付き合いだったでしょ」


「そうか、思い出した!、、、、じゃあなんでここにいるんだ!?」


そう確かに俺は彼女を知っている。なぜなら俺たち二人の親同士が友達だったからだ。

でも、千佳は事故で死んだはず、、、。


「そうね。ちょっと複雑で長い話になるからここでは話せないわね。あれが終わったらゆっくり話しましょうか」


そう言って俺たちはいつでも加勢できるようにアスティアを見守った。

はい。書きました。

相変わらずの更新頻度。正直完結しないんじゃないかとか思い始めました。

頑張ってこれからも書いていくので、できればよろしくお願いします。


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