表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寵愛昂じて  作者: 初雁
2/4

二編

えっと。

ああ、娘がドラゴンと出会ったとこまで話したのか。

んじゃまあ、続き、話してやるよ。





娘はドラゴンと出会ったことは親には言っていなかったんだ。

成り行きでそうなった部分もあるけどもな。

咎められはしたが、一晩して、やっぱりドラゴンのことが気になる。

そして娘は翌日もドラゴンの元を訪ねたのさ。


ドラゴンは昨日と変わらない様子で、娘を見るや、すり寄ってきた。

ドラゴンは産まれて初めてみた物を親だと認識するんだ。

つまり、ドラゴンにとっては娘が母親だった、と。

娘は、今度は沢山食べてもらえるようにと、そこらじゅうから

食べられる草や実を集めてきていたから、

ドラゴンは喜んでそれを食べ始めた。

そんな姿を見ている内に、娘の中には未知なる感情が芽生え始めていた。

まあそれが愛情に値するものとはまだ気づいてもいないけどな。


娘は次の日も、また次の日もそうやって餌をやり続けたんだ。

娘の両親は何をしに外出しているのかは気になったが、

活発に外で遊ぶのは良いことだとして、訊ねることはしなかった。

そうして一ヶ月も二ヶ月もあっという間に過ぎていったのさ。


お陰でそのうちに、ドラゴンはすくすくと育っていった。

かつては娘の懐に抱くことができたその体躯も、

だんだん手に負えなくなるほどにな。

それに付随して娘のドラゴンに対する感情も強くなっていった。

もっと沢山食べてほしい。もっと元気になってほしい。

もっと知りたい。もっと一緒に居たい、、、

育ての親の情とも何とも言えない愛情が、

どんどん彼女を埋め尽くしていった。

ドラゴンとの意思疏通すらほぼ完璧に出来るほどになった。

そうして、愛情からかは分からないが、

娘が餌をやり始めて一年と半年が過ぎた頃には、

もう立派なドラゴンに成長していたんだ。


ちなみにだが。

君にはこの話に出てくるドラゴンが、

何て言う種類のドラゴンか、分かるかい。

、、、分からない?

しょうがないな。教えてやるよ。

僕たちが「幻竜類」と呼んでいるものだ。

特徴としては、純白の鱗や、比較的小さな、

といっても馬や牛よりは大きくなるが、

ドラゴンとしては小柄な背丈。

美しい硝子細工のような瞳。

そして何より。

、、、その一生の短さが挙げられる。

よって幻の名を冠する竜とされているんだ。

彼女のドラゴンも例外ではない。だから成長が著しく速かった。

さらに。幻竜類は、その短い一生から、繁殖のために、

どのドラゴンよりも強力な本能として、発情期とも呼ばれる、

繁殖期を持っている。オスは特に強力とされるが。

その繁殖期に関してもまた、彼女のドラゴンは例外とは呼べなかった。

そして。彼女のドラゴンは、娘が一人で育て上げたドラゴンなんだ。

即ち、異性を娘しか知らず、娘以外の異性と触れあう機会もないのだ。

、、、もうお分かりかな。


娘のドラゴンは、あろうことか、育ての親である娘に対して

発情してしまった、ということなのさ。


その日が訪れたのは、涼しい秋のことだったらしい。

いつも通りにドラゴンの棲み家と化した森へと娘が向かうと、

何やらドラゴンの様子がおかしいことにすぐに気付いたんだ。

娘はドラゴンの元に駆け寄ったが、ドラゴンはそんな娘を

軽く地面に突き倒してしまった。

その瞳は血走っていたそうだ。

そんなドラゴンを見て、娘は何をしたのか。

これまた僕たちには考えられないことだがね。

覆い被さってきたドラゴンを、震える手で撫でたんだ。

すると、ドラゴンは少し落ち着いて、動きを止めた。

娘はホッとしたが、今度はドラゴンが、

震えたような、今までにない少し艶っぽい声で、

娘に鳴きついてきた。

それはまるで、行為の際、人間が相手に同意を求めるような。

それに近いものだったんだろうな。

確かに。

確かに別の種族の中で愛し合うなんて、異質と呼べるかもな。

でも。それでも、彼女は完全にドラゴンに愛を抱いていた。

それが親の愛だったかもしれないが。

その瞬間、間違いなくその愛情は、妻が

夫に宛てる愛情に変わっていったんだ。

そうして彼女は、彼を受け入れた。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ