アホなのか......?
「うぇぁう、あっそう言えばリアムせんせ、他の3人は......?」
ライリーは痛む頭を抑えながら恨めしげにリアムを睨みながら、ふと気になったことを聞く。
逆に、どうして今まで気にしていなかったのか詳しく聞きたいが、ライリーの残念な頭では目の前の事で一杯いっぱいなのだろう。
どっかの【賢者】とかいうスキルが《そのために僕が居るのです!》とかドヤ顔(顔はないけど)で言っているので、まぁそういう事なのだろう。
「はぁ......テメェは頭いいのか悪ぃのかどっちなんだ......? あいつら3人は各々で鍛えてる。この訓練場はこの学園に数十個程はあっかんな」
「へぇー、あのさこの学園ってこの広さの訓練場が数十個も入るほど広かったっけ?」
とぼけた顔でいきなり核心に切り込んでいくライリーに、リアムは一瞬フリーズし、再起動した後、全力で脱力しながら
「テメェ.....本当に.鋭いのか、鈍いのかはっきりしやがれよ......」
と言った感じで、妙に勘の鋭いライリーに疲弊していた。
恐らく、ライリーには野生の勘とか獣の勘とかそういった機能が備わっているのだろう。間違っても女の勘では無いのは言うまでもないだろう。
「ライリー、テメェらはどこぞの魔王様からこう言われてねぇか?『七迷宮を攻略しろ』ってな?」
「どうしてそれを......?」
「だから言ったろ? ......全て知っている、と。」
「わぁお」
「アァ? なんだその態度は?」
「いや、だって......良くわかんね事態に、良くわかん事態が重なってもうなんだかわかんない!!!」
それは......もう、清々しいほどにライリーは宣言した。
────良くわかん! と。
まぁ、それも仕方ないと言ってもいいだろう。
何せ、前半だけでもまとめてみるとこうだ。
急に教官に襲われたと思ったら、拉致られてて、しかもその教官に天井に突き刺される。
うん。わからんッ!
しかも、後半に至っては「お前の秘密、全部しってるぞ?」とドヤ顔で宣言されて、しかも「あ、ついでに全員指名手配されてるから。そこんとこ、よろ」って言われて感情の急降下が激しすぎて......ライリーの表情はスンッとしていた。
まるで悟りを開いたかのようなその表情だが......まぁ、あり体に言うと思考停止しているのだ。
「まぁ、ここから先は簡潔にまとめてやる」
そう言って、リアムは立ち上がり、服を叩く。そして、ドシドシとよく分からん扉の方へと歩いていった。
ライリーはそれを、「え、まだあるんですか?」という目で見ていた。心なしか目が死んでいる気がするが、ライリーの体は一応ゴーレムなので気のせいだろう。
そして、リアムは扉へとたどり着くと剣を定位置の肩に置き、ライリーに問いかけた。
「なぁ! ライリー! テメェこれがなんだか分かるか!」
そう言って、リアムは扉を思いっきり叩いた。明らかに硬そうな素材で出来ている扉がバギィと言ったが気のせいだ。思いっきりヒビが入ってるが多分気のせいだ。なんか扉のヒビが勝手に再生されてるのも気のせいだ。
「えっと、倉庫?」
「フンっ、これはそんなチャチなもんじゃねぇ。良いか見てろ」
リアムは、そう言って扉を......ぶち破った!?
いや.....そこは普通に開けようよ......
『いや......普通に開けてよ......』
......!?
その声はどこからなっているのか分からないが、確かに聞こえる。恐らくは【念話】とかその類のスキルだろうが、威圧感が凄まじい。
ライリーは、押しつぶされるようなその圧力にかつて魔王に話しかけられた時を思い出す。
この何者かの圧力は、魔王にも勝るとも劣らないほどの圧力を有していた。
ライリーなんて、小指でも殺せそうな実力者の声に内心「強い人......多すぎない......?」と自身の旅の前途多難さを結構ガチで嘆いていた。
『ごほん。まぁいい。』
そう言ってその声の主は居住まいを正してこう宣言した。
『七迷宮が一つ! 魔物迷宮にようこそ! 生きて帰れば必ず強くなる。そんな素晴らしい迷宮、それが僕だよ!』
......と。
そして、ここがライリーに取って転換点となるのはまた別の話。
第1部がここで完結です!
完結記念に評価して頂けると嬉しいです......!!