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守りたいもの

 己の迂闊さが!

 己の知識の無さが!

 己の配慮の足りなさが!

 己の言動が!

 己の傲慢さが!

 己のふざけた態度が!

 

 レアを!

 マチルダを!

 ケイリーを!


 巻き込み傷つけ、果てには3人の人生をもめちゃくちゃにしてしまった!

 

「ライリー! そこまでだ! シケたツラしてんじゃねぇよ! さっきまでの目が台無しだ! いいか、良く聞きやがれ。悪ぃのはテメェじゃねぇ。自分を責めるな」

「だ、だけど!」

「るっせぇ! テメェの意見なんざどーだっていいんだよ! こんのカッコつけだがりが! いいか、俺様の目をよーく見ろ」


 リアムは、そう言ってライリーの頭を鷲掴みにして自分の方に顔を向けさせた。

 そして、ライリーはその鋭い眼光に息を飲む。

 恐ろしい程に強い眼光は、己の内心を見通すような、そして有無を言わさせない強い力が宿っていた。


「俺は、お前が何者で、今まで何をしてきたかを、全て知っている」


 その言葉にライリーは自分の心臓が跳ねるような感覚に襲われた。

 動悸が激しい。

 自分の心臓がドクドク言っているのがよく聞こえ、その言葉の意味を考える度に「まさか、どうして」という得体の知れないモノへの恐怖を感じる。

 リアムは何者なのか。

 本当に、自分が神である事を。そして、魔王や魔族に関わりがある事を知っているのか。本当に?

 グルグルと、思考が巡りこの一瞬で、この言葉を投げかれられただけなのに、体力のほとんどを使ったような精神的な疲労感に襲われる。


「なん......で?」


 出てきたのは、たったその一言だけだった。

 先程までの、煮えたぎるような怒り、自己嫌悪とは違う。不安と恐怖、そして縋るようにして声を紡ぎ出した。己の根底さえをも覆そうとするリアムというその人の事をライリーはただ恐怖し────。


 それもそうだろう。

 なにせ、ライリーの正体を知っている人物なんて自分かご主人様だけの筈だ。

 そして、自分のご主人様が只者ではない事くらいライリーでも分かる。

 そのご主人様がリアムに自分の事を伝えたのだとしたら......本当にリアムは何者なのか。そして、この学校はなんなのか。

 思考を重ねるごとに謎が謎を呼び、頭が痛くなってくる。


 そして、ライリーにとってはこれは希望でもあるのだ。

 全く、掴めなかったご主人様の情報。今あるのは、魔王がご主人様の事をなぜか知っている、というくらいだ。

 魔王からの情報なんてはっきり言って期待なんてできない。いや、ほとんど絶望的と言っても過言ではない。なにせ、自分から魔王に話しかけることは出来ず、常に一方的でおまけに「迷宮に行け」の一点張りだ。

 まぁ、魔王から情報を貰えないかな〜と思っている時点でライリーのおツムはお察しなのだが、それは置いておこう。


 全く掴めなかったご主人様についてに、確実にご主人様の事を知ってるであろう人物が現れたのだ。

 これが希望と言わず、なんと言うだろう。


「まぁ〜大方、あのお方の事だからテメェにはなーんも言ってないんだろうけどよぉ?」

「あのお方......?」

「あーテメェ流に言うと『ご主人様』だったか? ケッ、良い心がけなこって」

「......っ!?」

「ライリー俺様はなぁ、あのお方が何も言わないつもりなら何も言うつもりはねぇ。だが、1つテメェの教官としておしえてやる」


「魔王!? 魔族!? 国!? それがなんだ馬鹿野郎! 守りてぇもんがあるなら他人殺してでも、国滅ぼしてでも守りやがれ!」


 リアムはそう吠えて、ぶっきらぼうにライリーの頭をワシワシとなでるのだった。



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