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第31話 戦後 後編 〜ステーキの焼き加減はいかが〜

 ドカーン!


 俺は今、ケイリーの場所に行くために再び壁に穴を開けた。2回目だから慣れたもんだ。


 マチルダは疲れていたので、レアと一緒に待っててもらった。


 俺は、と言うとむしろ変にテンションが上がっていて、壁をぶち抜く時も「おっ、いい音鳴った」とか考えていた。


 そして、ケイリーの居る部屋へとゆっくり俺は歩みを進める。


 すると、ケイリーの姿が見えた。ん? なんか震えてる気がする。


「ん? ケイリー、どうした?」


 俺がそう言うと、ケイリーは明らかにぷるぷると震えて、拳を突き上げている。


 体に異変でもあったのか? 心配だ。


「ライリー。どうしてそんな登場の仕方しか出来ないのよ! こっちの身にもなってみなさいよぉ! 隣で爆発音が鳴っただけで恐怖なのに、今度は自分の所よ! 心臓止まるかと思ったわよ!」


 おお、元気そうで良かった。


 しっかし、超絶早口で文句を言って来た。うーん? 優しく壁を壊したんだけどな?


 もっと優しくするべきかな?


「うーん? 今度から壁を壊す練習した方が良いか? 練習したら優しく壊せるはず……」


「……はぁ!? 貴方、いつから格闘家になったのよ! ちゃんと入口から入りなさいよぉ!」


 い、今なんと言った!? 俺の耳が正しければ「入口から入りなさい」と言って来た筈だ。


 そ、その手があったか……っ!


 今思えば、ここはギドナ組の拠点な筈だ。拠点なのに移動が不可能なんてとんだバカが作らない限り有り得ない。


「ケイリー。本当に凄いよ! 入口から入るなんて思い付くなんて尊敬だ! 俺には到底出来ない!」


 俺はケイリーの腕をがっちり掴み尊敬の目で見つめる。


「え? 頭大丈夫かしら?」


 ケイリーは心配そうな目で覗き込んできた。


 ケイリーの方が身長が高いから覗き込む形になった。


 ぐぬぬぅ……言い返せないのが悲しい。


 と、と言うかさ酷くない!? だ、だって仕方ないじやん! 慌てたんだもん! 全員の相手が死にそうで……って、はっ!


 入口から入ると言う物凄い発見の前に忘れていたがケイリーと戦ったアウターを治さないと。


《名称⋮アウターの症状は過治癒という状態です。過治癒とは、簡単に言うと治癒を使い過ぎです。これを治すためには体内の魔力を吸収する魔法、もしくは【魔力吸収】のスキルが必要となります。しかし、これらを持つのは種族⋮吸血鬼と、それに連なる者のみです》


 なるほど……これ、詰んでない?


 まぁ、諦めても何も進まない。新しい治療法を考えるか……


 治癒の使い過ぎか。恐らく体に治癒の魔力が溜まることで引き起こされるのでは無いか? 違うかもしれないなぁ?


 俺がそう、思案していると【賢者】から《その通りです》と報告された。


 治癒ねぇ。ん? 待てよ。


 治癒は傷を治す為の物だ。それが体に溜まってるのならば……


 俺はとある仮説を立て、その検証の為に倒れているアウターに近づく。



「【魔導書】発動。【炎魔法】烈火」


 俺はアウターに向けて、新しく考えた魔法をぶっ放した。


 アウターは熱血漢のように燃え盛っている。いやーカッコいいね!

 この国じゃ情熱的な男ってモテるからね。可愛い女の子が近寄ってくるかもね!


 ......物理的に、なんだけどね。


 恐らく、情熱的な恋を求めた乙女たちも、情熱的男(物理)は御遠慮するだろう。


 俺がアウターを燃やしてる理由は簡単で、燃やされたダメージを溜まった治癒の魔力で回復すれば魔力も減って、過治癒がどうにかなるのではと思ったからだ。


 まぁ、どうにかならなかったらこのまま放置だ。


 派手な火葬になるだろう。


 まぁ、これも俺が火を選んだ理由なのだが。


 酷いと思うかも知れないが、俺達がしていたのは〝殺し合い〟だ。


 〝決闘〟だったらこの行為はおかしいが、本当の命の取り合いで相手の命を惜しむほど俺は甘くはない。


 勿論、アウターは部下としてこき使いたいので生きてて欲しいが。


《名称:アウターの体内に含まれた治癒の魔力の減少を確認。今すぐ消化する事を推奨します》


 【賢者】は優秀だな。俺が感覚でミディアム位に焼けたら水をぶっかけようと思っていたが、報告しに来てくれた。


《マスター、あまり余裕はありません。このままではウェルダンになってしまいます》


 おっと、それは急がないと。元々、【水魔法】は使えなかったが、多くの魔法を見たからか、簡単な物なら使える。


「【水魔法】水砲弾」


 俺は、自分の周りに水の玉を10個ほど作り、アウターに向けてぶっ放した。


 見事に火は消えて、レア位に焼けたアウターが出てきた。勿論、レアとは焼き具合の事だ。


 ……うん。成功だ! 生きてるし。


「【治癒魔法】治癒」


 俺はボソッと小さな声で治癒魔法を唱えた。これで焼く前の生肉になった筈だ。なんか、生肉って言い方気持ち悪いな。


「……え? まず、どこからツッコメばいいかしら? 取り敢えず怪我人の対応が雑過ぎるわよ」

 

 ま、まぁ、自覚はある。


 怪我人を治しに来た奴が唐突に怪我人を燃やし始めたんだ。驚いて当然だ。


 横目で見ただけだが、ケイリーは口をあんぐり開けて放心状態だったし。


 うん。レアを連れてこなくて正解だった。


「ふぅ、まぁ良いわ。それよりも誰とは言えないけど、ライリーに大切な〝伝言〟があるわ」


 ケイリーはさっきまでのおっとりとした雰囲気から一変し、急に真面目な顔になった。


 そして、次の瞬間ケイリーの口から俺にとって信じられない、むしろ信じたくない言葉が発せられる。


 俺はその言葉を聞いた瞬間、全身から汗が吹き出し、心臓がドクドクと早鐘を打つ感覚に襲われる。


 頭は真っ白になり、理性が思考を重ねようとするが、本能がそれをストップさせてしまう。


 行き場の無い怒り、そして焦り、期待、焦燥感が爆発しては消え、爆発しては消えを繰り返していく。


 その言葉を告げれてから数十秒しか経ってないのだろうが、何時間も経ったように感じる。


 俺がここまで追い込まれた〝伝言〟それは……


「ライリー君の御主人様の命が大切ならば、魔王達の命令を死ぬ気でこなす事ね。失敗すれば君の御主人様、そして君の周りの人達は無残な滅亡を遂げるわよ」


 と言う、御主人様が生きてる事、しかしその命は魔王に握られているという、俺的にはかなり苦しい知らせだった。


 


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