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第30話 戦後 中編

 ロックスは「勝手に殺すなぁぁぁあ!」という雄叫びと共に起き上がった。いやー、さっきまで瀕死だったのが嘘の様に元気だ。


 まぁ、元気の理由は簡単で、俺が【治癒魔法】を落ちて来る瞬間からかけ続けたからだ。


「なんだ、生きてたのね」


 おお、ウィンピアもさらっと酷い事言ったな。原因は自分の癖に。


「姉御ぉ! 酷いですよ! というか姉御も負けたんで……ブヘッ!」


 おー、ウィンピアの華麗な右ストレートがロックスに決まった。ロックスは地面を華麗にスライディングしている。


 あっ、そんな事している暇じゃ無かった。ケイリーとマチルダの相手の命を救わなくては。


 2人とも派手にやったからな。それはもう敵だけど同情してしまう位。


 俺は前にも思ったがレア達は絶対に怒らせない様にしようと思う。流石の俺でも命のは惜しい。


「レア、2人の所に行くか?」


 レアは「行くの!!」と言いながら俺に抱きつき、上目遣いで聞いてきた。


「でも、どうやって行くの?」


 行き方は簡単だ。壁をぶち抜けばいいんだ。上から見ていたので、3人の戦場が隣合っていることは知っている。


「まぁ、見てな」


 俺はそう言って、壁に向かって歩いて行く。


 結構厚そうだな。まぁ関係無い。


「【魔闘】」


 俺は腕に闘気を纏う。これだったら壁を壊せる筈だ。牢獄の様な造りで、壁も50cm程の厚さがありかなりの強敵だ。


 ただ、レアが見てるんだ。良い所を見せたい……なんて思ってない。早く未来の仲間を救いたいと思っている。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! ぬ、抜け穴があるから! あたい達の拠点を壊さないで!」


 ん? ウィンピアが何か言ったか? まぁ良いや、壁をブッ壊そう。


 俺は拳をしっかりと握り、一点を目掛けて腕を思いっきり振る。


 すると、「バコーン! ズズズズズズ」と言う派手な音と共に壁が丁度人一人分の大きさの穴が空いた。


「よし、上手く行ったな。じゃあレア、行こうか?」


 俺はそう言って、レアに微笑みかけた。


「ライリーさま! 凄いの!」


「……あたいは何も見てない。これは夢、夢よ。人が壁を殴って破壊するなんて有り得ないわ」


 なんかウィンピアが虚ろな目付きで何かをボソボソと言っているがまぁ、放置だ。


 俺はレアの手をギュッと握り、壁へと歩く。


 そして、ぶち抜いた壁を抜けるとそこには目の色がルビーのようになり、ボロボロの真っ黒な本を抱きしめているマチルダの姿があった。


 その顔は驚愕そのものであり、口をポカーンと開けて目を見開いている。


 気のせいかもしれないが、どこかやつれている様に見える気がするが気のせいか? 目は擦ったのか赤くなっている。


「マチルダどうした? なんでそんなに驚いてるんだ?」


「……え? 壁が壊れたと思ったらライリーが居るんだよ? 驚くに決まってる」


 そう言われると確かにそうだな。現れると思ってない所から急に現れられるとかなり驚く。魔王が俺に話しかけて来た時もビビったし。


 今後は優しく壁を壊そう。


「まぁ、確かにそうだな。そう言えば、マチルダと戦ったクリマを治そうと思うが良いか?」


 俺がそう言うと、マチルダは普段の無表情を盛大に崩して嫌そうな顔をした。


 マチルダの表情が崩れるのは始めて見るが、ここまで嫌そうな顔をするか。


「ライリーがそれで良いなら別に。ただ、俺様野郎だよ? そいつ」


 口では別に良いと言っているが、顔は「今すぐにでも殴りたい」と言ったような表情だ。


 ただ、このままクリマを放置すると本当に死んでしまうのでマチルダには申し訳ないが治す。


「【治癒魔法】治癒」


 よし、体の傷は癒せた。また暴れられたら迷惑だから気絶したままで留めたが。


 ロックスは天気が荒れたせいで起きてしまったが、それは事故だ。


 と言うか、天気なんかどうでも良くて気になる事が1つある。


 恐らくマチルダがやつれてる様に見える理由が。


「なぁ、マチルダ? どうして目が赤いんだ? それじゃあ、まるで魔族じゃ……」


 俺がその言葉を言い切らない内にマチルダは珍しく大声で叫ぶ。


「うるさい! わ、私は魔族なんかじゃ無い! こんな目っ、今すぐ切ってやるんだから!」


 やっぱりな。マチルダの目は人類の敵である魔族の象徴の「ルビー色」になっていた。


 【賢者】も敢えて教えないと言う選択を取れる様になって欲しいな。


《御主人様。全て他人の責任にするのは良くないと愚考致します》


 しゅん。怒られちゃった。


 確かに人のせいは良くないな。まぁ、今はそれ所では無い。マチルダを優先しよう。


 俺はさっきレアにした様にマチルダの手をぎゅっと握り、そしてマチルダの目をじっと見る。


「マチルダ。魔族が何だ? 人類の敵? そんなのどうだって良いんだよ。マチルダはマチルダだ。それに、レアは元々ゴブリンだぞ?」


「で、でも! 騎士団に殺されるかもっ! そしたら、ライリーにも迷惑かける!」


 騎士団か。確か何部隊かあって、国の治安、戦争時の戦闘などなどを担当する武官だったっけ。


 しかし、マチルダは大バカだな。普段冷静なんだから今も冷静になって欲しい。


「マチルダ、騎士団が何だ? 俺はこの国が相手だとしても微塵も迷惑と感じない。それに、俺達は〝5人〟でブレークハーツだ。」


「……泣かせないでよ。バカ」


 マチルダはそう言って静かにぎゅっと抱きついてきた。不安から開放されたからか、顔には安堵の表情が浮かんでいる。


 俺は静かにマチルダの頭をポンポンとした。


 マチルダも相当不安だったのだろう。冷静さを欠いていたし、普段より口数も多かった。普段の様子とはかけ離れていた。


「ライリーのお陰で落ち着けた。えっと……その……」


 すると、マチルダは何時もの無表情を崩し、満面笑みで俺にこう言った。



「いつもありがとう」



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