第21話 新メンバー
その後、俺はリーカスに〝詳しく〟説明を求められた。説明が進むに連れてリーカスの顔が真顔になっていき終わった頃には頭を抱えていた。
「まぁ、常識なんて置いといてギドナ組の残党を倒しに行かないか?」
決してこのままだとリーカスに怒られそうだから話題を変えた訳じゃないぞ?
ただ、残された冒険者が心配になっただけだからな?
「ライリー、いいか?常識ってのはな置いとくもんじゃ無くて、身に付けておく物だからな?
はぁ、ライリーのこれからが心配過ぎる。魔王に、七迷宮に戦力も心配だがライリーに関してはご飯食べるの忘れたとか言って倒れてそうで心配だ。あ、そうだ!」
そこでリーカスは何かいい事を思い付いたのか真顔だったのが笑顔になる。
笑顔なのだが何か吹っ切れたような感じで怖い。
と言うか七迷宮って何なんだ?よく分からなかったからスルーしてきたけど、今更ながら気になる。
《七迷宮とは、世界に点在する大迷宮の総称です。魔素が多いため、魔剣やレアリティの高い防具などがあり、多くの冒険者で賑わいます。
最深部にはこの世の謎の真実が書かれていると言う説や、神剣などの伝説の武器が隠されていると言う説など様々な憶測が飛び交っていますが、未だ攻略した者が居ないため、分かっていません》
うん。取り敢えずヤバイことが分かった。
「俺をライリー達のパーティに入れてくれ。そうしたら七迷宮も付いていけるし、国を造った時も暴政を止められる。
ライリー入っても良いか?と言うか入れさせてくれ」
ちょっと待ってくれ、リーカスが入ってくれるのは別に構わないんだがリーカスの中で俺はどんだけ悪人なんだ?
「私は賛成よぉ。私達3人でライリーの暴走を止められる自信ないしねぇ」
「....確かに。有難い申し出」
えええええ!
レ、レアは違う事を言ってくれる筈だ。レアはそんな事思ってないだろう。
「その通りなの!レアもリーにぃは必要だと思うの!またライリーさまが1人でどっかに行くのを防ぐの!」
ダメだった。
どうやら、俺の信用は皆無の様だ。
「ああ、リーカス是非入ってくれ。よ、宜しくな」
「ああ、宜しく頼むがどうしてそんなに声が震えてるんだ?まぁいい、所でパーティ名はなんって言うんだ?」
「ブレークハーツだ」
まぁ、Aランク冒険者が仲間になったのだから素直に喜んどこう。
「じゃあ、ブレークハーツの初仕事としようか。ギドナ組を叩きに行くぞ!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
辺りが薄暗くなり始め、太陽が1日の仕事を終えようとしている頃、俺達ギドナ組の幹部四人は恥を捨てて全力の逃亡をしていた。
「捕まっちまう、捕まっちまうよぉ!」
「バカかてめぇは!!殺されたっておかしくねぇよ!」
今日は、男達は冒険者学園の小娘を攫うだけの簡単な仕事と思っていた。
強いて言えばフッドと一緒に戦う事が認められて嬉しかった位だ。
だが、現実は違った。俺達のボスがぶっ倒したと思ったら、連れ去ろうとした小娘を置いてどこかに連れ去られたのだ。
しかも、手下共から最悪の知らせが来た。
【リーカス率いる冒険者達が裏組織を潰しに来た】
と。
「クソっ、俺達はただ上の言うことをに強制的に従わさせられてただけなのによぉ!」
そんな事、俺だって同じだ!
最初は皆んなで悪をしていただけだった。少しだけ実力があった俺達は調子に乗っていた。本当の悪を知らなかったのだ。
この世界の裏側を束ねる存在を。
走っている内に色んな過去の事を思い出す。
俺には纏まらない色んな気持ちに襲われる。焦燥感、劣等感、嫌悪感、そして、一番にあるのは怖れだ。
怖い、ただただ怖い。死ぬのが怖い。
今まで何人もの人を犠牲にしておいて虫がいいかも知れないが、死にたくない。
「はぁ、はぁ、なぁ、フッドの野郎はどうしたんだよ?なんで居ないんだ?」
一番恐れていた質問をされてしまった。
「はぁ、戦いが終わったと思った瞬間に消えちまったんだよ!」
俺の言葉に3人は理解出来ないみたいな顔をしている。
まぁ、俺も良くわからねぇからその反応になるのは分かるがされるのはいい気分じゃねぇな。
「とぼけた面してんじゃねぇ!良く分かんねぇのは俺もなんだよ!」
それからどれだけ裏路地を走り回ったろうか。途中から訳も分からずがむしゃらに走り続けた。
少し開けた場所に出る。
「なぁ、ここで休憩しねぇか?」
その一言で全員無言で地面に腰を付けた。
普段だったらこの程度ではへばらねぇが、今回は捕まって死刑にされるかもしれないと言う精神的圧迫で相当消耗した。
だからだろうか。俺達は気付けなかったのだ。
6人が近づいている事に。
そして、冒険者達に泳がされていた事に。
「はぁ、疲れたな。と言うかお前らはフッドの失踪についてどう思う?」
「そんなの、あのクソったれのリーカスの仕業に決まってんだろ!」
「だがよぉ、あの場にはあの小娘1人しか居なかったんだぜ?」
今考えると、あの小娘も小ちゃい癖してかなりのやり手だった。
だが、小娘程度でフッドがやられる筈が無い。何せフッドはAランクレベルの実力を持っていた。
リーカスだってどうにか出来る可能性もあったんだ。
「リーカスの野郎が何か仕込んでたに決まってる!」
「随分と好き勝手言っているようだけど、俺達に倒さる準備出来てる?」
そこには何故か傷の治った小娘に、リーカス、女のガキどもにフッドの姿があった。
なぜフッドが並んでいるのか分からないが「倒される準備出来てる?」だって?
返答は決まってる。
「うるせぇ!俺はなぁ、地面っていう大切な女房とイチャイチャしてんだよ!」
「...こんにちは?」
「もー!マチルダ挨拶しに来たんじゃないでしょぉ?」
「...ん。えっと、ブックマークと評価して欲しいなって。」
「それだけじゃ誰もしてくれないわよぉ。それとも何?ここでもライリーに負けるの?」
「...むー、うるさい。えっと、ブックマークもして欲しいんだけど、評価も欲しいなって。」
「そうなのよ。ライリー達はブックマークは皆んなのお陰で増えたんだけど評価は増えなかったのよねぇ。
だから、ここは何時もの仕返しが出来るチャンスなのよぉ。楽しめたらでいいんだけど私達に協力してくれると嬉しいわ。」
「...むむむ、全部持っていった。でも私からもお願い。ブックマークと評価はすぐ出来るから。」