第17話 ライリーvsフッド 中編
均衡が崩壊する.........
早い、これは十秒持ったら良い方だ。 その位俺とフッドに差がある。
この差を埋めるにはフッドが使った【ブースト】を俺も手に入れる必要がある。
《【ブースト】を取得するだけではマスターに扱えず無駄に終わります。 勝つのには新たにスキルを習得する必要があります。 習得にかかる時間は、15秒です。》
ヤバい、な。
だが時間を稼ぐしかない!!
《残り...14秒》
フッドの剣が首筋に向かって飛んでくる。
早い、早過ぎる!
急いで剣を振り上げて対応する。
《残り…13秒》
首筋への攻撃は囮だったようだ!
剣を振り上げてしまった俺の体はガラ空きだった。
《残り…12秒》
ズドン、と鈍い音が響く。
「かっ、かはぁ…」
くっ、苦しい…息ができない…
腹を殴られたようだ...
《残り…11秒》
腹を殴られた事で少しふらついてしまった。
少し、だ。
しかし、それは決定的な隙になる。
《残り…10秒》
「これで終わりだ…」
剣が迫ってきている。
このままでは本当に終わってしまう。
早く対応しなくては…
《残り…9秒》
ここで俺はついさっき覚えた魔法を思い出す。
「【魔法書】き、起動っ、【岩魔法】っ、岩砲弾っ、」
《残り…8秒》
フッドの剣は軌道を変える。
スバッ
そんな音を出しながら俺の岩砲弾は叩き切られ、弾け飛ぶ。
だが、体勢を立て直すことは出来た。
《残り…7秒》
俺は距離を離すために【魔動】を使い、空中に逃げる。
「チィっ、ちょこまかとウザイな!」
《残り…6秒》
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
フッドに向けて岩砲弾を連射する。
仕留められたか...?
辺りは土埃がたっていて何も見えない。
《残り…5秒》
何かが一瞬光る。
刹那、目の前には剣が迫っていた。
「相手が悪かったなぁ。生憎、俺は剣聖なんだよ」
…油断、していた
《残り…4秒》
「グッ、グハぁ」
…一瞬の内に放たれたフッドの斬撃は俺を真一文字に切った
…腕が、動かない
…苦しい
…意識が朦朧とする
《残り…3秒》
「お前はやる方だったよ。でもな、相手が悪かったな。勝つのは俺だ」
…嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だこのまま負けたくない
《残り…2秒》
《自分が…何者か…思い出しなさい…そこにこたえがっ…》
…ははは、幻聴が聞こえてきたようだ
…もうこのまま死んだほうが楽かなぁ?
…そう、悪魔の声が囁いてきた。
…俺だって痛いし、苦しいし、この苦しみから開放されたい。
《生命の危機を確認。生命維持活動に演算能力を割くためスキル習得を1次、放棄します。》
…自分が何者か、ね。俺はただの付喪神の誤差だ
…ん?待てよ
俺は悪魔の囁きを頭から打払った。そして、思考を重ねる。
生憎、俺は負けず嫌いだ。 誰が素直に負けてやるか! 数秒前の自分が恥ずかしい。
「じゃあ、気ぃ失ってもらうぞ」
フッドは〝それ〟の後頭部に手刀を落とす。
周りのゴーレム達は示し合わせたように一斉に倒れていった。
「こいつらゴーレムだったのか。ライリーが気絶して動かなくなったのか。こいつらも高く売れそうだな」
《スキル習得再開。残り…1秒》
フッドは〝それ〟を担ぐ。
後、少しだ…後少しで…
《能力習得完了しました。》
〝それ〟は、胸に大きな切り傷を作り、大きな火傷もある。体に力が入ってないのかダランとしており、息をしない。
そんな〝俺〟の姿だ。
《【魔動】を元に【近接戦闘Lv3】【肉体増強】【身体強化】【ブースト】を消費統合。【魔闘】を習得しました。》
魔闘 ・・・魔力をそのまま闘気に変えることが出来る。
闘気とは自分の細胞一つ一つを強化でき、魔力を込める事に闘気の硬さは変わる。
また、相手の戦闘スキルを見た瞬間に自分の力へ変えることが出来る。
俺は【魔闘】で、全身を強化する。全身に力が行き渡る気がする。
俺は強い陽射しを浴びた植物の気分だ。ポカポカしていて、優しい感じだ。
これで手札は揃った。
反撃の開始だ!!!