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第1話大冒険の始まり

「暇だぁ」


 俺は付喪神(つくもがみ)だ。コップの付喪神だ。え?コップの神とかダサい?気にしてる事を言うな!


 付喪神とは人に大切にされた物に生まれる神だ。そう! 大切にされたのだ! まあ神と言っても超絶パワーがあるわけではないので名前だけみたいな所はあるがな。



 暇だ。ほんとーに暇だ。なにせ10年はここにじーっとしている。冒険者にでもなって冒険がしたい.........



 そこで俺はある計画を思いついた。それは『人形憑依計画』だ。この計画は人形に【憑依】して冒険者として活動するという物だ。


 もしかして俺は天才か?自分の発想力が怖い。



 因みに【憑依】とは俺の固有スキルだ。 俺のステータスはこうなっている。

____________________________________________________


【種族】付喪神

【称号】神

【名前】ライリー

【魔力】100

【スキル】固有スキル付喪神

神専用スキル神の末席



付喪神・・・付喪神に与えられる専用スキル

解放済みスキル【憑依】【念動】



【憑依】・・・憑依して加護をあたえる。 また支配する。 ただし自分より魔力が多い場合支配は出来ない。 例外として相手が弱っていた場合は支配可能。


【念動】・・・魔力を消費し体を動かす。


神の末席・・・神に与えられるスキル。 神格が上がるとその分スキルは強力になる

解放済みスキル【天啓】


【天啓】・・・森羅万象を読み解き、 知識を授ける。


______________________________________________________



とこんな感じだ。


 まず【念動】で人形を探し回り、 そして【憑依】で支配をするのだ!


 早速実行しよう。


「【念動】」


 体を浮かし家の中を見渡す。俺(ご主人様)の家はいろんな物がある。ご主人様の趣味は物作りだったからだ。 


 可愛いランタン、もこもこのソファー、カラフルなクッションなどなどと可愛い物が沢山ある。ご主人様は可愛い物に目がないのだ。 




 まぁ、今となってはどこにいるのか分からない。人間と神の寿命は違うからな。俺が想像している事で無いといいのだが。 


 ご主人様との時間は本当に楽しかったが、俺が付喪神として生まれたのはご主人様がいなくなる少し前の事だった。 


 そして、今となってはご主人様との思い出も少ししか思い出せない。その位、10年は長いのだ。 




 まぁ、過去のことを振り返ったってしょうがない! そんなことよりも俺は凄いものを見つけた。



 地下室だ。頑丈そうな扉が久しぶりに開けたからか、悲鳴を上げながら開いていく。そして、俺は地下室の階段を下っていく。



「おお、凄い」


 弱々しいランタンの火がゆらゆらと揺れ、地下室を照らしていた。 そこは石造りで頑丈そうな、まさに研究室のような部屋だった。



「うわぁぁぁ!」


 そこには色々な姿の人間?が居た。何で人間が居るんだ? 驚き過ぎて腰を抜かすかと思った。あ、腰なんて俺はないか。


《異常な量の魔力を検知。これは人間ではなくゴーレムと思われます》



 ちなみにこれは俺のスキル【天啓】の効果だ。



「ん? なんだ?」


 俺は体が引き寄せらる感覚に(おそ)われる。 そして、視界が暗転した。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「あれ?」


 俺は違和感を覚えた。目線が、高い?


 そして気がついた。ゴーレムが俺の体となっているのだ。しかも【憑依】の効果では無く、俺がゴーレムの体を手に入れたのだ!


 しかし、どういう事なのだろう? 俺には全く理解が出来ない。


《ゴーレムにマスターと同じ波長を検知。これはマスター専用ゴーレムだったと思われます》



 なるほど。もしやご主人様が俺のために作ってくれたのかもしれない。しかも......


《スキルゴーレムマスターを取得》


《称号ゴーレムマスターを獲得》


《またゴーレムマスター取得により固有スキル付喪神のスキルゴーレム憑依を解放》



 ゴーレムマスター・・・ゴーレムの支配者となる。ゴーレムに触れることによって自分の支配下にする。


 ゴーレム憑依・・・ゴーレムへ与える加護や支配力が増える。



 なんか凄いスキルを手に入れられた。取り敢えず地下室にある300体のゴーレムを支配下にした。



 そんなことより! 外に出てみよう! ここから大冒険をはじめるのだ!!





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪



 俺は生まれて初めて外に出た。


 突き刺さる朝日、 賑わう街の様子は全て俺にとって眩しいものだった。




「すごい! すごい!」


 俺はめちゃくちゃ興奮している。なにせ生まれて初めて街を見たのだ! 


 ご主人様の話していた、大きな噴水に武器屋にご飯屋さんもある! 全てが俺の憧れの物だ! 


 沢山見た過ぎて目が後3個位欲しい。あ、でもそれだと顔が変になるか。



 しかしだ。俺には目的地がある。そう!


「冒険者ギルドに行くぞー!」



 うん。だが重要な問題がある。


 どこだか分からないよぉぉぉお!! 


 おっと、失礼。まぁ、少し聞いてみるか.........


 しかし、これが俺の始めての会話だ。緊張する。 


 え? ぼっち? うるさい! 話相手が居なかっただけだ! 見てろよ!?



 俺は前を歩いていた男に声をかける。髪色は深い青色で色白の優男のような雰囲気だが、冒険者なのかどこか男らしさも感じる。そして、綺麗な金色の剣を装備し、なんか強そうだ。



 俺がこの人に話しかけた理由は単純明快で、優しそうだからだ。


「あ、あのーすみません! 冒険者ギルドはどこだか知っていますか?」


「ん? 冒険者ギルドか? まあ今から行くから付いてくればいい」


 よかった、これで冒険者ギルドに行けそうだ。俺の予想通り優しい人のようだ。


 俺は付いてくればいいと言った男の横にちょこんと立つ。そして俺達は街の大通りを歩いていく。


 大通りを見たい気持ちもあるが、俺は案内してくれた人との会話に集中する。決して緊張し過ぎて周りを見る余裕が無いわけでは無い。


「案内ありがとう」


「別にいい。所で俺はお前と会ったことあるか? 何か見覚えがある気がするんだが?」


 そんな訳ないはずだ。このゴーレムが勝手に出歩く筈がないからな。



「うーん? それは無いと思う」


「そうか。すまん、俺の気のせいだったみたいだ。所でお嬢ちゃんはギルドに何の用だ?」



 ん? お嬢ちゃん? 俺は()()神だから正確な性別はない。しかし気持ち的には男のつもりなのだが


「目的はギルドに登録する事と依頼を受けるためだ。てか俺は男だ。お嬢ちゃんはよしてくれよ」


「ふはは。そんな可憐(かれん)な顔で男? 面白い冗談を言うな」


 そう言えば自分の姿を確認していなかった……


 まあいいや、今度確認するか。




 そう言えば名前を聞いてなかったな!


「まあいい。所で名前は何っていうんだ?」


「ん? お前俺を知らないのか? 俺はリーカス。竜殺しのリーカスだ。このムーンの街では割と有名だと思うんだがな?」


 リーカスはそう言って、ニコッとした。


 イケメン過ぎたので俺は恥ずかしくなり、プイッと横を向いてしまった。


 横にはいろんな種類の店があった。面白そうだから後で店ごと買いたい。切実に。


って、そんな事はどうでも良くて、有名なのか! 竜殺しって名前がヤバくないか? 超厳ついぞ!


俺は内心の驚きを隠しつつ話す。


何せ俺はクールな男だからな!



「そうなのか。すまんな常識に疎くて」


「別にいい。所でお嬢ちゃん名前は?」


 なんかもういいや。男って訂正するの面倒くさくなった。


「俺の名前か? ライリーだ」


「ライリーか。改めてよろしく」


 リーカスはそう言って、手を出してきた。


 勿論、ぶん殴ってきたわけじゃないぞ? 握手して来たんだ。


「ああ。よろしくな」


 俺はそう答え、手を差し出す。


 うっ……地味に身長差で腕が吊りそうだ。


 まあ、リーカスは初めて話した人だ。これからも仲良くしたいものだな。


「着いたぞ。ここが冒険者ギルドだ」



 そこには周りの建物の3倍はあるだろう無骨な雰囲気を醸し出す大きな建物があった。








 そして俺は意気揚々と冒険者ギルドに足を踏み入れた。








「ライリー、そっちはトイレだ」


 泣いていいだろうか?

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