8話 アオイ、飛んじゃう!
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やっぱりタイトル変更しました
旧タイトル『MOD特盛りのアラフォーの俺が美少女(が変身した巨大ロボ)に乗ってしまっていいのだろうか?』
『ごめんなさいコズミ、私のせいでこんなことになってしまった』
「だから諦めるなっての」
さっき巨鳥に襲われてもう駄目だと思ったことは棚に上げておく。
今はそんなことを言っている場合ではない。
「断言していい。アオイちゃんはこんな鳥には負けない!」
自分にも言い聞かせるように叫び、スキルウィンドウを開いて目的のスキルを検索する。
すぐに見つかったそのスキルは〈操縦〉。ありがたいことに解放されていた。
俺の今までの人生経験によるものか?
そんなことを考えている場合じゃないな。すぐにスキルポイントを消費して習得、さらにポイントをつっこみレベルも上げる。10レベルもあればいいか?
3Bの〈操縦〉スキルが役に立つかは不安でしかなかったが、すぐに効果が発揮された。
わかる! アオイちゃん戦闘機の操縦方法がわかる!!
「アオイちゃん、今から俺が君を動かすから抵抗しないでくれ」
『は、はい』
左右の操縦桿を強く握ると『うにゃっ!』とすごい反応をされてしまって慌てて手を離す。
もしかして痛かったのだろうか?
「だ、大丈夫か? 痛かった?」
『う、ううん。……ちょっとビックリした』
「そうか。俺も初めてだからやさしくできなかったらゴメンな」
ふうぅ。
今度はやさしく操縦桿を握って深呼吸。
実際に戦闘機を操縦するのは初めてだが3Bではよく使っていた。今の俺は3B仕様。きっと上手くいく!
「アオイちゃん、先に言っておくけど君は飛べる」
『飛べる? 空を?』
スキルのおかげか、操縦桿を握った瞬間にアオイちゃん戦闘機の能力も俺にはわかっていた。その武装にいたるまでもである。
巨鳥がどれほどの強さかはわからないが、まるで負ける気がしないほどの高性能戦闘機だ。
まさにSF戦闘機と感動しておこう。
「そうだ。アオイちゃんは飛べる。こんなのはピンチなんかじゃない」
『でも……わかった。コズミを、伝説のスウィートハートを信じる』
「ああ。どうやら飛行にはMPを使うみたいだからその残量には注意してくれ。それじゃ行くぞ!」
『はい!』
まるで乗りなれた自転車に乗るかのごとく自然と身体が動き、アオイちゃん戦闘機の推進器を稼動させる。ヴヴンと一瞬大きな振動があったがすぐに揺れはおさまった。
もしかして慣性制御?
モニターの映像では巨鳥が大きな鳴き声を上げてアオイちゃん戦闘機を放し、機体は自由に飛行しているのだが、そんな変化も映像なしにはわからないほどに操縦席は揺れ一つない。
『私……飛んでいる?』
「ああ、飛んでいるよ、アオイちゃん自身の力で。アオイちゃんは出来損ないなんかじゃない! 戦う力も持っている。MPはまだ大丈夫か? 戦えるか?」
『コズミ……ありがとう。MPはまだ平気だと思う。戦える!』
「よし! あの鳥を丸焼きにしてやろう!」
操縦桿とフットペダルを操作して機体の方向転換。驚くほどスムーズに正面に巨鳥を捉えることができた。
◎◎◎◎◎◎
ロックンバード:オス
モンスター:LV10
◎◎◎◎◎◎
モニター越しでも簡易鑑定できるのは3Bと同じだ。HPがわからないのは不便だからあとで〈鑑定〉スキルも習得しておきたい。
そんなことを考えながらも俺の手は操縦桿を動かしていて、ロックンバードをロックオンすると引き金を引く。
「そこっ!」
SF戦闘機の左右の翼付け根付近にあった砲口から眩い光線が巨鳥に向かって発射され、巨鳥の片方の翼に命中。ここまで聞こえる一際大きな鳴き声を上げた巨鳥はそのまま森に落下し、巨木を数本折って落着。そしてそして動かなくなった。
『な、なにか出た!? コズミ、私からなにか出た!!』
「落ち着きなさいアオイちゃん。あいつは倒せたかな?」
『えっ? あっ!』
自分から謎の光線が出て敵を忘れるほど気が動転していたようだな。まあ、自分からいきなりビームが出たらそりゃ俺だって焦るか。
先に説明してあげればよかった。
「今のはアオイちゃんの固定武装だ。ビーム兵器みたいだね」
『ビーム……あっ、MPがかなり減ってる』
「あれもMPを消費するのかな。やつも動かないみたいだし、取りあえず着地しよう」
巨鳥墜落の衝撃はかなり大きかっただろう。落下地点が換金モノリスからわりと近いから家が無事か心配だ。
アオイちゃん戦闘機を玄関前の開けた土地に着陸させる。垂直離着陸も可能なんてさすがさすがSF戦闘機である。
無事に着陸すると、なんか今頃震えてきた。戦闘の恐怖で失禁しなかったのはきっと〈耐性・精神〉スキルのおかげに違いない。
『……飛んじゃった』
んふぅ、と、色っぽい吐息混じりのアオイちゃんの声が耳に入って恐怖が一瞬で消し飛んでしまう。
たしかに俺も飛んでいる時の高揚感は凄かった。
『コズミ?』
「あ、ああ。大丈夫だ、問題ない。アオイちゃんの方は?」
『心配いらない。この程度のダメージなら元に戻った時に服も破れていないと思う』
「そうか。よかった、ちゃんと戻れるんだな」
こっちが本当の姿でずっとこのままだったらどうしよう、って思っちゃったぜ。
そうなったら格納庫やカタパルトを用意しなきゃいけない。
……それはそれで楽しそうではあるな。
俺は3Bで基地を造るのが大好きだ!
そしてそして、基地は運用するロボに合わせて造りたい。
ほっとしたら手汗が酷いのがわかった。緊張していたもんなあ。
アイテムボックスからウェットティッシュを出しながらふと思う。いつもなら真っ先に操縦桿を消毒していただろうに、そんなことをしている余裕もなかったと。
「アオイちゃんもこんな手に握られて気持ち悪かったろ」
『そんなことは、にゃうっ!』
自分の手だけじゃなくて操縦桿もウェットティッシュで拭いたらまた変な声を出させてしまった。驚かせてしまったようだ。
「綺麗にしてるだけだから驚かないでくれ」
『う、うん。……コズミ、そろそろ戻るから降りたほうがいいと思う』
「わかった。俺が中に入ってちゃ、元に戻る時どうなるかわからないもんな」
『コズミが中に? ……あ、ああああぁぁぁぁ!』
護符からアオイちゃんの動揺した叫びが聞こえてきた。
どこか痛いのだろうか?
それとも別の異常?
「ど、どうした?」
『私、大人になってしまった』
「大人?」
マシニーズはパイロットを乗せると一人前で大人ってことなんだろうか?
でも、さっきのアオイちゃんからは人が乗れることを知らなかった感じを受けたのだが。
『だって、女性は大人になると男性を身体で受け入れる、って』
「ちょっ、それ違う!」
『……そうなの?』
「それは子作りの時の行為! 今のは戦闘行為! 夫婦の営みとは関係ないから!」
そりゃ操縦席を鋼鉄の子宮ってたとえる表現もあるけど!
……アオイちゃんはマシニーズは女性しかいないって言ってたような気がするが、まさか本当に子宮だったりしないよな?
怖くて確認できない。
もし、もしそうだったら通報案件である。アラフォーのおっさんが美少女の体内に侵入したなんて字面だけだとマズすぎる。
『夫婦……』
「と、とにかく! 俺すぐ降りるから!」
返事を待たずにスイッチを操作して二重ハッチを開き、操縦席から出て地面に転がり落ちた。
痛い。
ちょっと高さあったもんなあ。3Bでも落下ダメージを受ける高さだ。
激ユル仕様でなければ貧弱貧弱ゥな俺は死んでいたかもしれない。
「コズミ、だいじょうぶ?」
「あ、ああ。昇降装置を確認しておくんだった」
ん、なんか痛みがやわらいで……。
心地よい温かさを感じて振り返れば、元の美少女に戻ったアオイちゃんが俺に手をかざしていた。
「回復魔法?」
「うん。あまり得意じゃなくてごめん」
「いや、すごく楽になったよ、ありがとう」
やっぱり魔法スゴイ。
ぜひとも覚えなければいけないな。
もうちょっとだけ長生きするためには必要不可欠だ。
次回は学園の方の話になります
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