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80話 クビ

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 8組の転入生として紹介されたハーフエルフ。

 その美少女ジェーンこそ姿を現さない学園長であった。

 ロボは何色だろう。ジェーン……ジエン……臙脂(えんじ)色かな?


 彼女にはなにか思惑がありそうなのでもう少し話をした方がよさそうだ。

 1組の教師陣は自分担当の教室へ向かったが、俺たちは別室へと移動する。生徒指導室のような使い方をする部屋らしい。


「生徒たちにも秘密にするならアオイも呼ぶぞ」


「勇者もか? パートナーには秘密にはしないのだな」


「いや、あの子ならジェーンが学園長だって一目でばれるからだ」


 だってアオイも俺のフリートに所属しているから3B仕様になっている。簡易鑑定の表示も見えているはずなのだ。


「さすが勇者か。アオイ君ならば秘密を守ってくれるだろう」


「ならば呼ぶぞ」


 護符(アミュレット)による通信でアオイを呼び出す。

 学科も生徒も多くて校舎もいくつもあって校内放送で呼び出すってのができなさそうだから護符はありがたい。そもそも放送があるかも怪しい。

 アオイはすぐにやってきた。廊下は走らないように、ってこっちじゃ言わないのか?

 部屋に入ってきたアオイはちらりとジェーンを見てからこっちを見る。


「学園長?」


「ほう。わかるのか?」


「うん。コズミのおかげ」


 やはりアオイの簡易鑑定の表示でもわかるか。

 3Bだとストーリーはシンプルだからこの表示が偽装されることがない。特にイベントキャラはかなりわかりやすい表示になるのだ。


「ふむ。やはり興味深い。ジェーン、察しのとおり学園長だ」


「ジェーンは8組の転入生になるから、学園長だってことは秘密にするように」


「そうなの? 私は勇者アオイ。伝説のスウィートハート、コズミのパートナーでもある。よろしく」


「うむ。これからは級友だな、よろしく」


 握手する学園長と勇者。

 このまま仲良くなってくれれば助かる。


「ジェーンはどうして8組に?」


「コズミが気になってな。8組があそこまで変わった理由も調べたいしの。本来ならもっと前から8組の暮らしぶりを調べるために生徒として潜入する予定だったのだが、口うるさいやつに邪魔されていたのだ」


「口うるさいやつ、ね」


 ドメーロ派の関係者かもしれないな。学園長が8組の実態を知ったら困ると思って妨害していたのかも。


「そいつはさすがにもう解雇したぞ。長い間、済まなかったな。いいわけになるが、あそこまで酷いとは思ってなかったのだ」


「お詫びよりも8組の卒業生への補填をお願い。あの人たちも出来損ないじゃない」


「もちろんだ。できる限りのことをしよう。ワシとて可愛い生徒や卒業生を不幸なままでいさせるつもりはない」


 補填ね、どうするつもりなんだか。

 エリクサーさえ完成していれば可変型向けの講習会を行う案を出すとこなんだか。

 ……講師はイザベルでもいいかな?

 そのことを告げると、ジェーンも頷いた。


「講習会か。悪くはないな。だが、8組の卒業生は各国にいる。すぐにはできぬだろうよ」


「それなら俺のエリクサーも間に合う、か」


「本当に病気なのか? 聖女もおるだろう」


「ああ。だがシラユリでも俺の病の治療は無理のようだ。エリクサーをクラフトするしかない。だから、あまり仕事を増やさないでくれ」


 エリクサーのレシピはわかっているが、素材が足りない。学園都市の道具屋で売っていないか確認しないと。

 それとも冒険者ギルドで依頼を出すべきか。


「ワシの方でも手配しておこう。これでも領主でもあるのだぞ」


「頼む」


 ジェーンに頭を下げておく。

 素材さえあれば今の俺ならクラフトは容易いはずなのだから。



 ◇



 教室につくとちゃんと全員がいた。待たせたのにサボっている子はいない。

 ただ、アオイもそうだがなぜジャージなのだろう。ゴスロリ制服は普段の制服としては使ってくれないのか?


「授業の前に新しい仲間を報告する。これから8組の生徒となることになったジェーンだ。仲良くやってくれ。はい、自己紹介を」


「うむ。ワシはジェーン。わけあって今まで学園に入ることができなかった。可変型ではないと思うが、普通の機神巫女(マシニーズ)でもない。よろしくお願いする」


 え、可変型じゃないの?

 だが普通でもない、か。どんなロボなのか興味があるな。


 あと正体を隠しているのにその偉そうな口調はそのままなのか。

 今までの8組の酷い扱いにも気づかなかったと言うし、もしかしたら相当の箱入り娘なのかもしれん。


 今日の授業はジェーンと生徒たちの質問会にするか。

 マシニーズ向けの授業ならともかく、他の教科はよく考えればわかることだが三学年一緒にやるというのは三倍大変なのだから。

 俺が目を通さなきゃいけない教科書が多いのにまいっている。教科ごとのスキルの解放(アンロック)は済んでいるからスキルポイントを使ってスキルを入手できているのが救いか。


「みんなはあの試合で着ていた可愛いのを着ないのか? 近くで見たかったのに」


「あれは動きにくい」


「学校帰りに冒険者ギルドに行くつもりだったから、着てこなかったの。あれを汚すわけにいかないもの」


 ワカナの説明でさらに首を捻るジェーン。

 汚したくないから制服を着ないってのが不思議なのか。以前の8組の制服を見せてやりたい。


「冒険者ギルド? ……失礼だが、まだ生活費が苦しいのか?」


 そっちか。生徒たちが自分で稼いで暮らしていたことは調べがついているみたいだな。

 もし足りないと言ったら援助でもするつもりなんだろうかね。


「8組の生徒になったんだから、教えてもいいか? どうせ寮に帰ったら……って、ジェーンも寮で暮らすんだよな?」


「うむ。すごい寮だと聞いているから楽しみだよ」


「ふふふっ。驚くっすよ!」


 えっ、学園長も寮で暮らすのか。

 8組の生活を知るには必要だろうが、俺も一緒でいいのだろうか?


 しかしさすがにジャージでの登下校は目立つだろう。普通の制服をなんとかしないとな。ジェーンの制服、あとで調べさせてもらえればクラフトはできるはず。


 この心配は杞憂に終わる。

 質問がある程度おわり、ジェーンへの解説のために護符の登録でのマシニーズ同士の通信や可変型の説明、操縦席の存在とその構造等、今まで知られていなかった情報を解説して今日の授業をすませ、職員室に戻るとまた副学園長が待っていた。


「が……ジェーンは生徒たちと帰ったぞ。冒険者ギルドに寄り道するらしい」


「ほう、もうそこまで生徒たちと馴染んだか。青春だのう」


「そんなもんか? で、まだなにか用があるのか?」


「うむ。コズミ君と話したいという者がおっての」


 ここではなんだということで学園長室へと連れていかれた。

 いったい誰がと思ったが、待っていたのは見知らぬ中年男性。いや、知っている人物は少ないのだが。


「彼は学園の制服を卸している商店の店主だ」


「こ、コズミ様、この度はとんだ失礼をいたしましたっ!」


 深々と頭を下げて謝られてしまった。

 どうやら俺が注文した8組の生徒の制服を渡せなかったことを詫びているらしい。

 話によると、学園から注文を受けた店員がドメーロ派の関係者でその注文をもみ消したようだった。

 その店員はもうクビにしたとのこと。トカゲの尻尾切りじゃないといいのだが。まあ、店主の簡易鑑定の表示は味方カラーなので信じることとしよう。


「お、おそくなりましたが、8組の方々の制服をご用意させていただきましたっ! お受け取り下さい!」


「いいのか? 8組(うち)の生徒たちは試合であんたんとこのじゃないのを着ていたんだが」


 偏屈な職人が「なんで自分の制服を着てない?」って怒っているとかではないのか?


「それだよ、コズミ君。彼の店はそれで困っていてね」


「はい。8組の方々のあの見事な制服、あれは手に入らないのかという問い合わせが多数入りまして……それでなんで8組の方々が当店の制服を着てないかと調べた結果、先ほどのことが判明いたしまして……。誠に申し訳ありません!」


「ちゃんと制服をくれると言うんだ、謝罪を受け入れるよ」


 ここで絶対に許さない、というのも大人げない。店側に生徒たちが恨まれても困るだけだ。

 それならば、この店と仲良くなっておいた方がいいだろう。


「ありがとうございます、コズミ様!」


「うむ。さすがコズミ君だの」


 両手を握られて泣かれてしまった。

 この世界で俺と知り合いになったおっさんの泣き率が高いのだが。泣いてないのはドメーロとその関係者ぐらいか?


「そ、それでですね、このようなことを頼める義理はないのは百も承知なのですが、あの制服をですね……」


「売ってもいいが、サイズ調整とか面倒だしな。製作許可なら出してもいいぞ」


「本当ですか! も、もちろん謝礼は奮発させていただきます!」


 この世界の職人がどこまで再現してくれるか気になったので、見本として一着渡しておく。グレーシャンにって作ったんだけど着てくれなかった物だ。


「ありがとうございます! ありがとうございます!!」


「それでな、商談があるのだが……」


 せっかくなのでジャージと体育着もこの学園で一般的な物にしてしまおう。

 もちろんもちろん男子体育着は短パンで。



読んでいただきありがとうございます

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