7話 初めてのマシニーズ
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木のナイフ、木の剣、木の大剣、木の棒、木の槍、等々調子に乗っていろいろ作ってしまった。MODで増えたアイテムもあって木だけでこんなに作れてしまうとは。
中でもアタリなのはこれ。
そう、中二男子が大好きな武器、木刀である。
◎◎◎◎◎◎
木刀+3
バードンツリー製
〈剣術〉スキルが使える
◎◎◎◎◎◎
関連スキルも上げたし、使ったバードンツリーが硬かったからなかなかの高性能品。しかも+3の逸品だ。
アイテムにはマイナスの低性能品、プラスの高性能品があって、クラフト時にはプラスがつくことがある。〈合成〉や〈工作〉のスキルレベルが高ければ、プラスの数字が大きい良品が出やすくなる。
アイテムボックス内の加工ではこのプラスが低くなりやすく、公式サーバーでは+3が最高なのだが、まさかまさかそれがもう出てしまうとは!
「これを今、作ったの?」
「そう。これこそが俺が得意とする作業だ」
俺は3Bでは戦闘よりもクラフトに重点を置くプレイスタイルだったからね。戦闘はほとんどフリートの仲間に任せていたよ。
「ドワーフよりもスゴイ」
「やっぱりドワーフもいるんだ。エルフは?」
「エルフは数が少なくて学園ではあまり見ない」
「そうなんだ」
エルフは少ないのか。
巨乳かそうでないかがすごく気になる。
俺としてはどっちもアリなんだが。それでもやはり種族的なイメージがあるワケで。
「作業台や工作室が造れれば、もっとすごいのできるんだけど今はこれがセイイッパイ」
「それでもスゴイ。さすが伝説のスウィートハート」
「伝説?」
「あの世界では大きな危機に陥るたびに機神巫女とそのスウィートハートが活躍し、その危機を乗り越えてきた」
そんなスゴイものが俺?
どう考えても有りえないのだが。
それと気になることがもう一つ。
「もしかして、その世界って今も危機に陥っているのか?」
「私は学生だから世界に詳しいとは言えないが、そんな話は聞いていない」
「それならいいが」
ピンチだから探していたってワケじゃないのね。
ん、またチャットウィンドウが開いた。
◎◎◎◎◎◎
MK-Inyan > 世界は平穏でもマシニーズはピンチなのよね
コズミ > どゆこと?
MK-Inyan > 女神の望まない状況になってるの
MK-Inyan > 詳しく説明するのは時間がかかりそうなのでまた今度
◎◎◎◎◎◎
むう。よくわからん。
わかるのはMK-Inyanが女神っぽいことぐらいだ。
「学園に行けばなにかわかる、か。今は安全確保を優先しよう」
「うん」
◇
そろそろうちの外も静かになってきたようなので、ゆっくりゆっくりとドアを開けて外に出た。
俺の右手には木刀+3。防具も作っておきたいところだが、防具は服からレシピを解放していかなければならず、そのためには繊維が必要。まだ持ってないので入手できしだいクラフトしたい。
「さっきと同じように伐採していくから、警戒を頼む」
「任せて」
俺自身も警戒しながら巨木の切削を開始する。
おおっ、〈空間操作〉スキルをレベルを上げたせいか切削速度が速い。どんどん巨木に四角い穴が開いていく。
「たーおれーるぞー!」
俺とアオイちゃん以外の人間はいないとは思うが一応声をかけてから、最後だと思われる切削を入れると、やはり巨木が倒れていく。
倒れた時の振動はものすごかったので、今回はそうならないように倒れている途中でアイテムボックスに収納できないか試したところ成功した。
よしよし、これならあまり生き物も騒がないかもしれない。
「次いってみよう!」
こけないように足元にも気を使って別の木を切削。切り株もあとでなんとかしないと、大きな建物は造れないな。
って、大きな建物を造る必要はないか。ついつい3Bと同じつもりになってしまう。
スキルのおかげでいつもよりも疲れていないせいもあるのかもしれない。
2時間くらい換金モノリスの周囲の木を伐採したらかなり見晴らしがよくなった。
これで、家への襲撃を早めに察知できるといいのだが。
「コズミ、急いで家に戻って!」
突然アオイちゃんが叫んだ。何ごとかとそちらを見たら、空を指差している。そっちを見たら大きな鳥が上空を旋回しているのが見えた。
……でかいな。どれくらい離れてるかわからないけど、ヘタしたら翼長20メートルはあるかもしれない。
あの大きさなら森ではかえって動きづらいだろう。
だけど調子にのって家の周囲を開けた状態にしてしまった。これでは狙ってくれというばかりではないか。
慌ててアオイちゃんの指示どおり逃げようとしたが、焦りすぎたせいか切り株に足を取られて転んでしまう。
ちらりと見た巨鳥はまっすぐ俺に急降下していて、どんどん近づいてきている。やはりでかい。あの爪と嘴は間違いなく肉食だ。
やばい、これ死んだかな。
そう諦めた俺の耳にアオイちゃんの声が響いた。
「マシンナリィ!」
どうせ死ぬなら最後に見るのは美少女がいいと無意識に思ったのかもしれない。俺の目は迫り来る危険よりもアオイちゃんの方を向いていて。
俺はアオイちゃんの姿が変わるのを目撃する。
それは予想していた変身ヒロインなんてものではなかった。
もっともっと大きい。
巨大な姿。
巨鳥から俺を庇うように頭上に現れたのは、アオイちゃんの名のように青い色の巨大な物体。
それはまさしく。
「戦闘機?」
『早く避難して!』
俺の胸の機神の護符が強く光っていてそこからアオイちゃんの声が聞こえた。
戦闘機からではない。
なるほど、あの状態じゃ喋れないからこれが必要なわけか。
「アオイちゃん、でいいんだよな?」
『そう。これが私の機神巫女としての姿。醜いでしょう』
「へ? なに言ってんの? カッコいいじゃないか!」
下からだからあまりよく見えないけど、鋭角的でメカメカしいフォルム。立派なSF戦闘機だ。
ノズルのこの形状から見て垂直離着陸もできそう。
『お、お世辞はいい。私は出来損ないだから戦うことはできない。私の影に隠れて避難して』
「だからなに言ってんの! その姿で戦えないなんてことはないだろう!」
『無理……私は出来損ないなの』
その後に続く言葉は聞こえてこなかったが、アオイちゃんが泣いているのがわかった。
なぜ泣く?
俺が悪いのか?
こんな見事なSF戦闘機なのに泣き言を言っているのが許せない。そんな衝動から俺は立ち上り、動き出した。
家の玄関ではない。アオイちゃん戦闘機の横方向へとだ。
「この形ならこの辺りか?」
ジャンプしながら、アイテムボックスから自分の真下に木材ブロックを出して足場にする。いつも以上のジャンプ力を発揮したのは3B仕様になった俺だからか。
その足場からさらにジャンプ、ブロックを出す。それを繰り返してアオイちゃん戦闘機よりも高い位置へ移動、目的の場所を探す。
巨鳥の爪によるものか数条の傷ができているのが目に入った。表面を削った程度のようだが許せん。今さっきまで恐怖の対象だった巨鳥は怒りの対象へと変わった。
「ここか! アオイちゃん、ここを開けてくれ!」
機首の中ほどに目的の場所、操縦席らしき膨らみを見つけた俺はそこを指差し護符に叫ぶ。
『え? そんなところは開かな……開いた!?』
バシュバシュッと装甲が開き、その内側にあったハッチも開いた。
アオイちゃんの驚きの声を聞きながら、開いたばかりの二重ハッチの中へと潜り込む。すぐそばでビュッと大きなものが動き、風を起こした。
危なかったな。やつは俺を狙っていた。やはりまだ諦めていなかったか。
ハッチの下の座席に座って次の指示を出す。
「もう閉じていいよ」
『コズミの言葉に逆らえない。これがスウィートハートの力?』
ふむ。
機神の護符ってのはもしかして音声認識のコントローラのような物なのだろうか。そしてパートナーは操縦者?
SF戦闘機らしく、現代戦闘機と違ってハッチが透明の風防になっておらず閉めると暗くなってしまったが、護符が発光しているので中の様子はわかる。
操縦桿は左右に二本。これがあるってことは動かしていいってことだよな。大きく深呼吸して聞いてみた。
「外の様子を映せるか?」
『そんなことを言われても……』
「アオイちゃんならできる」
『わかった、やってみる』
すぐに操縦席の壁全てに外の様子が映し出される。
360度全天周モニタとかさすがさすがSF戦闘機だ。
直後に大きな振動と浮遊感。
映し出されるのは、アオイちゃん戦闘機を掴んで羽ばたいている巨鳥の姿だった。
まさか上空から亀を落として甲羅を割るヒゲワシみたいなことをするつもりか?
作品タイトルがまた変わるかもなのでブックマークしていただけると探す時に困りません
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