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70話 認定

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機神巫女(マシニーズ)には元々、そのような力がある、というのですわね?」


「そうだ。変形と同じく、俺はその力を引き出したにすぎない」


「……アオイさんの連れてきた方は本当に伝説のスウィートハートとしか言いようのない方なのですわ」


「コズミはスゴイ」


 クリムはすぐに納得してくれたが、観客はそうではないようだ。グレーシャンとシルヴィアが囲まれている。どうやら質問責めにあっているようだ。

 お、シルヴィアが動いた。彼女が壇上に上がった途端、観客席が静まりかえる。


「こんにちは。女神教教皇のシルヴィアです。今回、勇者アオイ様とそのパートナーであられる伝説のスウィートハート、コズミ様が行った行為について解説させていただきます」


 行為って、ただ操縦席に入っただけなんだが。

 マシニーズに人が乗れるなんて知られてなかったから、衝撃も大きいのだろうが。


「女神教に古き伝承があります。その中で最初の機神巫女(マシニーズ)とそのパートナーは一つになることができた、と伝わっているのです。これは、絆を強めた二人がまるで一人のように意思疎通ができた、そう解釈されてきました」


 古文書かなにかだろうか。

 最初のマシニーズね。いったんどんなロボだったのか気になるな。

 古典SF的なデザインか、それとも無骨な金属の塊か。


「ですが、その真実をアオイ様とコズミ様が明かして下さいました。本当に一つとなることができるのです。まさに一心同体のこれは機神巫女(マシニーズ)の究極の姿と言えるのではないでしょうか」


 一つになるってちょっと言い方が紛らわしいな。

 中に乗り込むとか、操縦するって表記しておけばよかっただろうに。


「先ほどから8組の方が披露なされている変形と同じく、これもコズミ様が導いてくださったとのこと。あの方は間違いなく伝説のスウィートハートであると女神教が認定いたします」


 認定されてしまった。

 女神教認定伝説のスウィートハート……微妙なのだが。履歴書に書く資格じゃないんだからさ。

 これでますますスウィートハートと呼ばれることが増えそうで困る。早急にコズミ先生と呼ぶように徹底させたい。


 シルヴィアがここまで知っているのは護符(アミュレット)でこちらの話を聞こえるようにしていたからである。グレーシャンたちと同じく彼女の護符も登録して通信できるようにしたのだ。


「それで、その、どうなんですの? コズミ先生を中に入れた時は」


「最初はちょっとビクッてなるけどコズミをすごく感じられて、慣れるととても……気持ちいい?」


「き、気持ちいいのですの?」


「うん。これは口では説明できない。クリムもやってみればいい」


 なにを言っているのかな、アオイ?

 クリムが聞きたかったのはそうではなくて、パートナーの能力が上乗せされる数値が乗らずに指示だけ出している時より操縦席にいる時の方が大きいとか、そういうことではないだろうか?


「わ、ワタクシがですか? と、殿方を体内に受け入れるなんてふしだらな真似はできるわけがありませんわ!」


「ふしだら?」


 首を傾げるアオイ。時間がなくてまだそっちの知識を教えられていなかった。

 グレーシャンかイザベルに性教育を頼む必要もありそうだ。


「コズミ、なんでクリムは真っ赤になってるの?」


「あとでグレーシャンに聞きなさい」


『ちょっ、あたし!?』


 あ、グレーシャンがこっちの話を聞いていたか。護符の通信は試合が残っている子の情報収集のために流し続けているから、関係者はみんな聞いているのだ。

 グレーシャン、お姉さんなんだから妹によろしく教えてあげてくれ。


「たしかにモーブでは不安なのはわかるけど」


「モーブくんとは清い交際なのですわ!」


「交際?」


「あ……」


 さらにクリムが赤面してしまった。

 そうか。クリムとモーブはつきあっていたのか。

 マシニーズとパートナーが恋人関係になるのが当たり前だと聞いていたがこうして実物を見ることになるとはな。

 今までの試合で戦った子たちもそうだったのかな? さっきの刺客は違うのはわかるが。


 シラユリの話ではクリムもかなりのお姉ちゃんっ子、というかシスコンだからモーブと合わせてシスコンカップル、シスコンビになるな。


「と、とにかく勝負なのですわ、アオイさん。ワタクシと勇者モーブくんの絆は強いですわよ。伝説のスウィートハートといえど、勝ってみせるのですわ!」


「わかった。私も全力で戦う」


「アオイ、全力はいいがあの必殺技は禁止だ。確実に観客に被害が出る」


「……出していい全力で戦う」


 アオイの全力全開なんてされたら勝利は確実だろうが、被害も甚大だ。

 そんなことしないでもシャイニーブルーは圧倒的に強いのだし。

 不満そうな顔のアオイであったが、こちらを見てにっこりと微笑んだ。


「ん? なにをするつもり……」


 正面から俺に抱きついてきたアオイはそのまま「マシンナリィ!」と叫ぶ。

 次の瞬間、俺はシャイニーブルーの操縦席にいた。

 これは乗ったまま変身解除ができるのだから、いきなり操縦席に乗っている変身ができないかと試した結果、できてしまった変身だ。

 ただし、変身時に二人が接触している必要があるので、あまり使わないように言っておいたのに。


『絆なら私とコズミも強い』


「あのな、生徒なんだから教師に抱きつくんじゃない!」


『問題ない。コズミは私のパートナーだから』


「問題あるっての」


 公衆の面前どころか衆人環視の中でこんなことをするなんて。

 外堀を確実に埋められているような。

 弟に先を越されて焦っている?

 ……いや、これはアオイだけの策ではではあるまい。いったい誰が裏で糸を引いている?


 高らかに試合開始の鐘が鳴り響く。

 クリムは3年を押しのけて勇者の対戦相手に出てくるだけの実力はあるようだった。

 1組最強というのも間違いではなさそうだ。アオイ以外だったら苦戦しただろう。


 だが、相手が悪かった。

 俺のフリート登録することで、アオイは尋常ならざる力を手に入れている。シャイニーブルーは最強なのだ。


 目前に迫る×の字型の斬撃をひょいっと回避すると同時にノーモーションでスラッシュを放つシャイニーブルー。さらに続けてクロススラッシュの斬撃がそれを追いかける。

 必殺技後の硬直状態だったクリムロボはその両方をくらってしまった。


 さっき護符の通信を登録しておけばよかったかな。そうすれば今頃クリムの驚愕の声が聞こえただろうに。

 今のは3Bで培ったキャンセル技である。

 使えるパーツの組み合わせに制限があり、タイミングもシビアだが成功すれば硬直無しに攻撃を連続できるのだ。

 シャイニーブルーで実験したら必殺技で再現できてしまった。

 アオイはもうタイミングを完全にマスターしており、今では俺が操縦しなくても使用可能となっている。


『さすがクリム。まだ耐えている。……スラッシュ、クロススラッシュ、スラッシュ、クロススラッシュ……』


「鬼か! その辺で止めなさい! 変身解除したあとに攻撃が当たったらどうする?」


『あ……』


 為す術もなく当たるままだった二発目のスラッシュのダメージで変身解除してしまったクリムにクロススラッシュの斬撃が迫る。

 やばい、そう判断した瞬間、操縦桿を操作してシャイニーブルーを飛行形態に変形させクリムの救助に向かうが間に合わないのは理解していた……。


 それを救ったのはシスコン勇者モーブだった。

 ワープしたとしか思えない速度でクリムを姫抱きにし、クロススラッシュを回避したのだ。


『モーブも少しは強くなったみたい』


「あれで少し?」


 どんだけ勇者は規格外なんなんだか。

 あまりのダメージのせいか、制服がほとんど完全にはじけ飛んで下着姿のクリムを姫抱きするモーブはまさに勇者然としていてかっこいい。そうだよ、やはり女の子は抱かれる方でないといけない。


 ……以前の俺なら確実に腰をいわすな。今でもちょっと怪しいかもしれない。

 状態異常、腰痛は避けたいところである。



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