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68話 ワカナアタック

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 なめられたと憤ったシンクレーンが変形なしで一勝し、その意地を見せる。

 次はシラユリ。変形を初披露するとグレーシャンが観客たちに解説してくれた。

 そのおかげで観客たちのざわめきがやかましいことになっている。

 なんか叫んでいるやつもいるけど大丈夫なんだろうか?


 シラユリロボは剣と盾を装備して試合開始の声を待つ。

 相手はサベージュ。ヒワのトラウマの原因である。飛行中のヒワ鳥に命中させるほど弓が得意らしいがルール上、やはり剣と盾を装備していた。


 サベージュロボの色はベージュ。おばちゃんの下着の色ってイメージになってしまうのは気のせいか?

 昔の漫画に出てくるような純白赤リボンの清純下着のシラユリと熟女下着なサベージュの戦いか。……何を考えてるんだか。

 ドメーロとの会話で凶暴な気分が湧き上がっていた反動かもしれない。


『まさか、8組が普通の機神巫女(マシニーズ)になれるとはな』


『ふふふ。普通の機神巫女(マシニーズ)ではありませんわ。コズミ先生いわく可変型とのことです』


『なるほど。その……それは出来損ないと言われてる機神巫女(マシニーズ)が全て、そうなれるのだろうか?』


『はい。コズミ先生はそう仰っていますわ』


 俺とサベージュのパートナーの護符(アミュレット)越しに会話するシラユリとサベージュ。

 サベージュロボもたぶんスピーカーを使えば喋ることができるのだろうが、今はそれを説明する時間はないだろう。護符によるマシニーズ同士の通信機能とともに、いずれ広めたい。グレーシャンとイザベルの護符でもできたのだからアップデートは関係なさそうだし。


『そうか。それを聞いたら妹も……』


『サベージュ、今は試合に集中してください。真剣なあなたに勝たないと意味がないのです』


『……そうだったな。いろいろと思うところはあるが、全力でいくのが機神巫女(マシニーズ)の礼儀かもしれないな』


 二人の会話を邪魔しないように俺もサベージュのパートナーも無言だった。ドメーロはまだ動かないし静かでいい。


 白とベージュの巨大ロボ双方が剣と盾を構えると試合開始の合図である鐘が鳴り響いた。

 二機(ふたり)とも相手に向かって駆けていく。


『スラッシュ!』


 先制攻撃はサベージュロボからだった。

 いきなり必殺技とか全力というのは嘘ではないようだ。

 横一文字に飛んで来る斬撃を軽やかにジャンプして回避するシラユリロボ。そのまま飛びかかるように鋭く斬りつけるが、サベージュロボが盾で受け止める。

 ここまで聞こえる大きな金属音。観客席まで響いていることは確実だろう。


『いいね。さすが聖女シラユリだ』


『そっちこそ。迷いのない必殺技(マシンアーツ)でしたわ』


 護符からは笑い声すら聞こえてきそうな浮かれた声が聞こえてくる。

 聖女ってわりにシラユリも武闘派だからなあ。

 3年の中では一番強いのがシラユリだし。


 二機(ふたり)はそのまま構え直したかと思うと、至近距離での斬り合いを始める。多少のダメージなどものともせずにお互いに一歩も引かない。

 だが、徐々にサベージュロボの旗色が悪くなっているのが見えてきた。有効打数が違うのだ。

 サベージュもそれがわかったか、盾を投げ捨て剣を両手で持って必殺技を放つ。


『スラッシュ!』


 至近で放たれたスラッシュをひょいとかわすシラユリロボ。とても救急車ロボとは思えないフットワークだ。


『そろそろトドメです。スラッシュ!』


 シラユリロボの必殺技がサベージュロボの右腕を吹き飛ばす。そのまま、サベージュロボの姿が消えていった。

 勝負あり、との合図の鐘が鳴り響く。


 ちょっと心配になったが、ちゃんとサベージュの腕はついていた。よかった。いくらヒワと因縁があるといっても、そんなショッキングな光景は見たくないからな。……下着はベージュではなかったか。

 サベージュのパートナーも心配だったのだろう、ほっと息をはいていた。そういやこいつ、喋ってないな。対戦相手とは話さないタイプ?



 ◇



 サベージュのパートナーがドメーロを運んでくれたのでやっと試合に集中できる。なにかしてくるんじゃないかと不安だったのだ。

 次の試合はワカナ。3年では一番弱いが、攻撃力は一番高いマシニーズだ。

 彼女はいきなり人型で変身して、出来損ないでないことを証明してみせる。ワカナは〈変形〉スキルのレベルが高いからな。


『コズミ先生、この剣ですが……』


「うん。せこいことするなあ」


 ワカナロボに用意されていた剣は見た目は普通だが、簡易鑑定でも耐久力がかなり低くなっていることがわかるほどだった。

 8組マシニーズが剣を使えるってわかってからたいして時間もたっていないのによく用意できたものだと逆に関心する。


「新しいのを用意させるか?」


『いえ、必要ありません』


 薄緑色のワカナロボはその小細工ソードを両手で持つと、軽く力を入れてペキッと折ってしまった。そのままポイッと投げ捨てる。

 相手側の3年生徒から新しい剣を装備しろとの話もあったがワカナは構わないと返して、独特の構えを取る。

 両手を前に軽く地面につき、腰を低く落とし片脚を後ろへ伸ばす。所謂クラウチングスタートのポーズである。


 試合開始直後。

 観客席は静まり返っていた。

 試合決着が早すぎたからだ。審判も茫然としているのか、勝負ありの合図の鐘もまだ鳴っていない。


『うまくいきました』


「ああ。作戦どおりだ」


 試合開始の合図と同時にワカナロボはダッシュ。相手は盾を構えたが減速せずに突貫した。

 今までの試合以上の轟音が試合場に鳴り響き、目に映る光景はダメージを受けて消えていく1組のマシニーズと真っ二つに切り裂かれた盾。そして巨大な剣であった。


 ワカナの特殊形態は他の誰よりも特殊な剣型だ。いや、はっきりと正直に言おう。あれは包丁にしか見えない。マシニーズですらまともに使うことのできない大きさの包丁、それがワカナの姿である。

 家事を得意とするワカナに相応しい形状と言えるが、包丁形態のワカナは満足に動くことができなかった。

 切れ味は抜群。だがそれを知ったのは変形できるようになってからという、他の8組生徒と比べても不遇なマシニーズだったのだ。


 せっかくなのでその形態を活かすために編み出した戦法が今の突撃作戦である。勢いよく目標に突撃し、直前で変形する。威力は見てのとおりだ。


「あ、やっと鐘がなったな」


『お料理完了です』


 アイテムボックスから出した毛布でやさしく脱衣した対戦相手を包むワカナロボ。その姿もまるで料理しているように見えたとは口に出すまい。



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