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64話 トラップ発動

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 生徒たちの食欲は相変わらず凄まじい。

 あれだけ身体を動かしていたら当然かもしれないが。

 彼女たちの異常はそれだけではない。


「マシンナリィしてる時のつもりでさっき飛ぼうとしてしまったのだ」


「キンちゃんも?」


「階段を飛ぼうとして、危なく転ぶところだったのだ」


 賢者であるキントリヒでもこれか。

 他の生徒たちも変身時間が長すぎて、感覚がおかしくなってきているらしい。

 脚力の違いからジャンプしようとして高さや距離が足りず、怪我をするのはよくあるとグレーシャンが教えてくれた。


「他にも、あっちの身体のつもりで熱い鍋を素手でつかもうとして火傷したりするから、注意するようにね」


「了解なのだ。キンちゃんも賢者としてわかってはいたのだ。でも、ついってのがあったのだ」


「まあ、試合が終わるまでの辛抱だ。そのあとゆっくり慣らしていけばいいさ。怪我には注意するように」


 試合は明後日。

 時間がなさ過ぎるので多少の無茶は仕方がないのだが、なんとかしてやりたい自分がいる。

 クラフトでどうにかできないのがツラい。


「オレたちは絶対に勝つんだ。そのために怪我なんかしている場合じゃねえよ」


「そうですわね。もし怪我しても私が治しますが、だからと言って特訓以外ではあまり怪我をしてほしくはありません」


「明後日は万全の体調で挑むために明日の特訓は早めに切り上げるよ。そのあとはゆっくりと身体を休めて試合に備えるんだね」


 さすがに少年漫画のように遅刻気味で現地入りしたボロボロの姿、というワケにはいかないだろう。

 8組(うち)の子の晴れ舞台なのだ。綺麗な姿で挑ませたい。

 ついに制服をクラフトする時だろう。デザインは学園のと同じにしてやりたいが、見本になるのはこの前あったクリムの着ていた制服の記憶だ。写真撮っておけばよかった。


 あまり遅れるとドメーロがなにか仕掛けているかもしれないから早く行こう。

 余裕を持って行って、現地の確認も行うつもりだ。


「今日はだいぶ感じがつかめたのではないかしら? ヒワも飛べるようになったわね、よかったじゃない」


「イザベルも変形できるようになってよかったね」


「これでサモピンさんのプロポーズを断らずにすみますね」


 ニヤリと笑うアサギリにそう言われて、イザベルは真っ赤になって固まってしまった。

 これは結婚も近いかな。サモピンには会ったことはなく、惚気話しか聞いてないが幸せ者と言っていいだろう。イザベルは料理もできるし、いい嫁さんになること請け合いだ。


「そうだね、試合に全勝したらサモピンの店でお祝いしよう。あたしのオゴリだよ」


「それは楽しみ。私だけサモピンのごはん食べてなかったから」


 これが実戦だったら死亡フラグになりそうなことを言い出すグレーシャン。試合でよかったぜ。

 アオイの方は試練中にアサギリがサモピンの店でもらったお土産を自分が食べられなかったことを根に持っていたのか。

 ……俺も気になるが。酒もあるようだし、こっちの酒がどんなのか知るにはいいだろう。


「8組の卒業生が結婚……うわぁ!」


「結婚式には呼んで下さいね!」


 生徒たちの多くが目を輝かせている。

 ますます死亡フラグっぽいが、明後日は実戦ではない。繰り返す。実戦ではない。

 ドメーロ派には用心が必要そうだが。



 ◇ ◇



「夜中に物音がすると思ったら賊かい?」


「ああ、トラップにかかった。そことそこの落とし穴に落ちている」


「あんなところに落とし穴があったとはね。あの辺はあたしも通っていた気がするけど全然わからなかったよ、よくできているね」


 そりゃ3Bのトラップは登録した人物には作動しないように設定できるからな。

 周囲を〈感知〉スキルで警戒しながらメッセージログを確認する。


「たぶん他にはいないようだが……まだ生きているけどどうする?」


「あたしも感じないから二人だけみたいだね。衛兵に突き出すまでだよ」


「どうやって捕縛するかだが、変身してつまみ上げられるか? それぐらいの大きさにしてあるから」


 3Bでも落とし穴に落ちたモンスター等を捕獲する時にはロボでつかむことが多いのでそれに対応したトラップをクラフト、設置しておいたのだ。

 そのために塀までの距離はかなり大きく取ってあったりする。


 ……電撃トラップや火炎放射トラップも動作確認したかった。寮に近づくにつれて致死率がアップしている。生徒たちの身を護るためなのだから当然であろう。


「この二人はドメーロ派の神官、いえ、偽神官ですね。この程度の傷も治せないなんて」


 グレーシャンロボにつまみ上げられ、イザベルスパイダーの糸によって身動きを封じられた侵入者がシンクレーンのライトに照らされている。

 その顔を見たシラユリがため息まじりにそう呆れた。


「どうする? 見せしめに門にぶら下げるか?」


「いや、口封じに殺されてしまうかもしれないね」


「そうですね。呪いにかかって動けなくなったベドロも治療される前にドメーロ派によって破壊されてしまったそうですから、その可能性は高いでしょう」


 そこまでするのか。

 ドメーロとしては罪を全てベドロになすりつけてたから、その方が都合がいいのだろうが。

 神官としての力が残っていて、呪いを解除できたとしても殺したかもしれないな。


「あたしが衛兵に突き出してくるよ。みんなは寝てな」


「グレーシャン、気をつけて」


「誰に言っているんだい? あんたこそ、みんなを頼むよ」


 グレーシャンはロボのまま出て行った。門を軽々とジャンプして。

 むう。そりゃマシニーズに通用するとは思ってないが、あんな簡単に突破されてしまうとは。

 巨大ロボ用のトラップも設置してあるけど、役に立つかちょっと心配になってきた。

 マキにゃんに選ばれたマシニーズに闇討ちするような物がいないと信じるしかないか。



 ◇ ◇



 グレーシャンが戻ってきたのは空が明るくなった頃からだった。

 生徒たちは眠らせたが、俺とイザベルは起きて待っていた。

 ドメーロ派の嫌がらせはある意味成功したと言っていいだろう。まったくもう。


「今からじゃ寝直すのもあれだね。コズミ、コーヒーってのを貰えるかい?」


「わかった。今煎れてくる」


 チートスキル〈種取〉によってインスタントコーヒーからコーヒー豆も取れてしまっている。これでコーヒーも補充しやすくなっているからケチる必要はない。

 取れたのが“ブレンドコーヒー豆”という謎の種類だったのには笑うしかなかったが。複数種類の豆が取れなかったのは少し残念だ。


「ご苦労様、グレーシャン」


「たいしたことはないよ。深夜に出撃ってのは北軍じゃワリとあるからね」


「大変なんだな」


「むこうでもこれがあればね。ああ、いい香りだ」


 グレーシャンはゆっくりと香りを楽しんでから砂糖とミルクを入れる。

 ミルクは植物じゃないのでなんとか牛乳を入手したい。この世界に牧場はあるのだろうか?

 コーヒーフレッシュなら植物性だからなんとかなるかもしれないが、健康を気にして買ってなかったのである。


「衛兵は現場の状況が知りたいから調査させてくれって言ってたけど断っといたよ。特訓の邪魔されたくはないし、今日はむこうに泊まった方がゆっくりできそうだからね」


「そうね。屋敷は無事でも襲撃があったら目が覚めてしまうわ。安眠妨害に付き合うこともないでしょう。あのお風呂に入れないのは残念ですけれど」


「わかった。風呂は造っておく。あと寝室も」


「ああ、そういうやつだったなコズミは」


「そうでしたわ」


 なに? 二人してその呆れた感じは。

 浴場も寝室も必要だろうに。

 こうなったらその呆れが吹っ飛ぶくらいの豪勢な大浴場を造るしかあるまい!



読んでいただきありがとうございます

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