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63話 おるすばん

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 デザートビッグワームは解体に時間がかかりそうだったのでそのままアイテムボックスに収納した。

 試合後、時間ができたらワカナに手伝ってもらって解体することにしよう。

 なにか面白い素材が取れるといいのだが。


 捕獲したデザートテラバードはメスだったので卵を産ませるためにテイムできればと思ったがそんなスキル持ちの者もおらず、あっちの世界に連れて行くワケにもいかないので飼育は断念。

 その場に放置して塔へと戻ることにする。運がよければ生き残れるだろう。


『あたしもレベルアップするとはね』


『全員がレベルアップしたってことね。私もなんとか変形スキルをゲットすることができたわ』


 魔法や必殺技は使えないながらも、その巧みな糸使いによって敵の動きを封じて生徒全員の経験値所得に貢献してくれた。

 そのうち敵の首に引っかけてピンって弾くあれをやりそうなくらいなのである。


 イザベルは既に人型に変形して帰り道を楽しそうにランニングしていた。

 慣れていないせいか時々砂に足を取られて転んでいるが、生徒たちは笑わない。自分たちも通った道だからだ。


「可変型のマシニーズはスキルが元々解放(アンロック)されて、つまり習得しやすい状態になっているみたいだ」


『女神様もすぐに見つけてくれると思っていたのでしょう』


「解説ないとわからないだろうに」


『そんな神託もあったようですが、受け取った神官たちは勘違いしてなにか別の意味があると解釈したようです』


 そんなものなのか。

 予言とかみたいに難しい言い回しにしたのかもしれないな。

 さすがにマキにゃんのノリで神託なんかしたら誰も女神だなんて信じないだろう。


「まあそれはともかく、可変型のマシニーズが出来損ないなんかではないことを証明できる。だがグレーシャン、イザベル、試合が終わるまではこのことを秘密にしてくれ」


『わかってるよ。試合には各国のお偉いさんもくるんだ。その時に発表した方がドメーロも妨害しにくいだろうね』


「お偉いさん? そんな話は聞いていないんだが……」


 これ以上俺にプレッシャーをかけないでほしい。

 エリクサーをクラフトするまで身体が、とういうか精神がもつだろうか。

 ぽんぽん痛い……。


『そこでできのいい機神巫女(マシニーズ)に声をかけて自国に勧誘するのさ。あたしもそれで帝国軍に入ったんだ』


「ああ、スカウトマンか。マシニーズの就職活動も兼ねていると」


『ドメーロはオレたち8組をその引き立て役にして、お偉いさんに出来損ないが弱いってことを見せつけて自分たちは間違ってないということにしたいんだろ』


『軍部にすれば、女神様のご意志よりも強い兵士を入れる方が重要だからね』


 軍隊か。マシニーズが戦争に使われる……巨大ロボ好きとしては燃えるところだが、生徒たちが戦場に出るのは嫌だと思うのはおかしいだろうか。



 ◇



 塔の付近に戻ったら特訓再開。

 グレーシャンによればさっきの場所で特訓した方が不意の襲撃にも備える実戦的な訓練になるとのことだが、試合形式は一対一なのでそれはまた今度でいい。


 今回はイザベルも乱取りに参加している。

 さっきまで転びまくっていたのが嘘のように動きがいい。

 イザベルは傭兵をやっていて、人型マシニーズの動きはよく知っていると言っていたからそのせいもあるのかもしれない。


 8組の卒業生でスカウトマンの目に付くのは稀。それでも酔ったグレーシャンが話した師のような扱いらしく、マシニーズとしての力を使う者は冒険者や傭兵稼業につくこととなる。


『レベルアップのおかげで、みんな昨日よりも動きがいいね』


『コズミのご褒美も気になっているんじゃない?』


『違いないね』


 それは忘れたかったのだが。

 指導員が増えたので、俺は護符(アミュレット)で話を聞きながら塔の修復をしていく。

 じっと特訓を見ているだけでは不安でおかしくなりそうだからだ。


 それに……体育着も用意したとはいえ、生徒たちのそんな姿を見て興奮しないとは言い切れない。

 もうとっくに枯れたと自負していた俺だが、女性に囲まれて暮らしているとそうも言ってられない自分がいて……。


 どこかで処理ができればいいのだが。

 風俗?

 金もないし、そんな病気が不安な行為をするわけにはいかない!

 生徒からも軽蔑されるだろうし。


 不安と性欲を誤魔化すためにクラフトをする。

 ああ、落ち着くなあ。

 体育着にベルトは似合わないからパラシュートもどうにかしたい。


『スラッシュ!』


 先ほどから生徒たちの声に必殺技のかけ声がまじっている。さっきデザートビッグワームに使っていた子もいたし、スラッシュは一般的な必殺技らしい。

 飛ぶ斬撃は飛行してても油断はできない。


『見え見えだねワカナ。もう少し引きつけてかわせないタイミングで使うんだ』


『はい!』


 戦いの駆け引きか。

 本当は俺も見て覚えた方がいいんだろうけど、試合まで時間がない。

 今までの戦闘方法を無理して変えようとしておかしくなるよりは、自分なりの戦い方をした方が、と中年の固い頭を誤魔化している。


 3Bで使えたキャンセル技はシャイニーブルーでも使えた。アオイに関しては俺の戦い方でも強いと思う。

 他の子はフリート入りしていないから使えない可能性もあるし、混乱するといけないのでまだ試してはいないが、グレーシャンたちの特訓でなんとかなると信じたい。


 っと、そろそろ昼食の準備をしておこう。

 お詫びとして食材を貰えて助かった。多くは生徒たちによれば「出来損ないに売る品なんかない」って購入をさせてくれなかった店かららしいがね。


 人数が多いから時間がかかる。

 普通の料理方法ではなく、3B式のクラフトになってしまうのは仕方が無いとして許してほしい。



 ◇ ◇



 特訓は続き、夕方もう一度モンスター狩りに行くことになった。

 レベルアップの効果を高く感じたからだとグレーシャンは言う。


「みんな疲れてないか?」


『この程度なら平気だね。むしろ、これぐらいで音を上げるようじゃ試合に勝つことはできないね』


『大丈夫です。問題ありません』


 シラユリが言うなら大丈夫か。

 聖女委員長なら生徒たちに無理もさせないだろう。


「わかった。気をつけていってくれ」


 俺もついて行きたかったが、夕食の準備をしてくれとのことなので置いて行かれることになった。


『守護鳥さん、コズミ先生をお願いします』


 ミカンヌに頼まれて「クケェェェェェェ」と返事をして頷くボットガルーダ。

 一人になる俺を心配して残ると言ってくれた生徒も多かったが、心配はいらないと断った。

 美少女と二人きりになんて、今の俺の状態でなれるわけがない。


 ……寂しい。

 ちょっと前まで一人でチャットもせずずっとゲームばっかりしていても平気だったというのに。

 みんなが無事に戻ってくるのを祈りながら、俺は料理を続ける。

 ネギっぽい野菜があったから焼き鳥とあと、テラーバードの卵でオムレツでも作るか。

 美味くできたらテラーバードを飼育して肉や卵の安定供給がしたいって、誰か言い出すかもな。


 米があれば親子丼もいいが……たしか入れたMODの中に〈種取〉のスキルがあったはず。

 さっき俺も経験値を大量入手したし取っておこう。このスキルはたとえ加工された物からでも種を取ることができるチートスキルだ。


 残り少なくなった白米や野菜から種を取っておく。砂糖や小麦粉からも種が取れたのは驚いた。もっと早く試せばよかった。

 これであとは畑や水田をクラフトするだけだ。

 この際、塔の上階は畑にしてしまうのも悪くないかもしれない。



読んでいただきありがとうございます

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