60話 体育教師
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全部を見ることはなかったとはいえ天然物の生乳の衝撃は大きく、しばらく俺の脳内で山が揺れていた。
あの芸術品を守るためにもインナーを用意しなければいけないだろう。
だが俺が女性の下着に詳しいなんてはずもない。クラフトするのもちょっと気が引ける。
「アオイ抜きだが、それでも四機相手に余裕ってのはさすが最強か」
「あの子たちも動きは悪くなさそうだけどね」
「人型に変形しての戦闘はともかく、生身でモンスター相手に戦った効果があったのかもな」
今度はアオイ抜きの二年に稽古をつけているグレーシャン。四対一なのに新たに渡した盾を使って軽くいなしている。
「そんなことしてたの?」
「レベルアップして変形スキルを手に入れるためにな。イザベルも変形を練習してからレベルアップすれば変形スキルが手に入る。……と思う」
「そう言われても、私が次のレベルに上がるのってけっこう大変なのよ」
「この世界の敵は経験値も高いようだからなんとかなるのではないか?」
このチュートリアル世界の敵は強いけどオイシイと。
冒険者としてモンスターとの戦いに慣れているシンクレーンやアオイがそう言っていた。
……オイシイって経験値と実際に食べるの、両方の意味でだろうな。
「それはいいわね。私も変形できるようになればコーチもしやすいだろうし」
「あとでまた生徒たちもレベルアップさせたいからその時にでも……もう終わったか」
二年で最後まで残っていたのはアサギリだった。アオイいわくあの子は戦闘狂らしいけど本当かな? 話した感じは普通の子なんだが。
すでに全員の分のジャージはクラフトしてあり、変身が解けた子たちは着替えている。
チャックの閉め方はシンクレーンとワカナが教えているので、ここまで戻ってきて俺が教える必要はない。
もしそんなことになったら、俺の方がもたないだろう。
「次は一年か。休み無しでってのは凄いがアオイとはやらないのか?」
「勇者は別格なのよ。賢者の子もいないでしょ」
「聖女は一緒にやったのに……3年は人数が少ないからか?」
3年は三人だから、聖女のシラユリがいても問題なかったのかもしれない。
実際、最後まで残ったのはシラユリだったし。
ロボ状態でも回復魔法は効果があるようだ。他の二機にも回復魔法を使っていたが、それが追いつかずに先に倒されてしまっていた。
シラユリは魔法スキルのレベルアップも必要だな。
「そんなとこじゃないかしら? 1年には鳥の子もいるけど、もしかしてあの子も飛べるの?」
「ああ。ただちょっとワケありでな。たぶん人型の時も飛べるはずなんだが……」
ちなみに2年のアサギリ、ミレスも人型で飛行が可能だったが空中からの攻撃も剣にこだわって、カウンターを貰ってダメージを受けていた。
空中からバルカンで牽制してくれれば、地上の他の生徒が攻撃しやすくなるだろうに。
早く火薬をクラフトできるようになってバルカンの弾を補充できるようにしたい。
「人型でも元の姿の力が使えるの?」
「アオイはそうだった。ただ、特殊形態の方がその能力を発揮しやすいらしい」
シャイニーブルーは飛行形態の方が速く飛べるのだ。
アサギリとミレスも飛行に関してはそうだった。
「私も変形できても糸を出せるのかしら?」
「どうだろう? 変形後の糸を出す場所がどこになるかによって使いやすさが変わりそうだ」
「……そうね」
クモ型の時ならともかく人型の時もお尻から糸を出すのであれば、ちょっと使いにくいだろう。色んな意味で。
1年の三人が剥かれると、次はキントリヒだった。
「あの三角はズルいわね」
「本体も魔法を使うが、ピラミッド攻撃と同時にできないのが今後の課題だな」
ロボサイズの火球が飛ぶのは迫力があるなあ。
それでも消費MPは生身の時とたいして変わらないんだから、砲台をし放題、ってところか。
たしかに賢者ってのは凄いようだ。
それでもピラミッド攻撃中に必殺技を使われて、キントリヒも負けていたが。
「いよいよ勇者ね。がんばってほしいわ」
「アオイ、念のために言っておくけどビームとあの必殺技は禁止だから」
『……わかった』
『うん、なんだい? あたしなら構わないんだけどね』
「グレーシャンが構わなくても、こっちが困る。敵だった守護鳥を倒すついでにこの塔を破壊したのがアオイの必殺技だ。周囲に被害が確実に出る」
俺が乗ってなければ威力は若干下がるだろうが、命中率も下がるはず。そんな凶悪な攻撃は封印しておかないと危険すぎる。
念のために他の生徒たちも塔に避難させておこう。
「まだ変身できないのか?」
「受けたダメージにもよるけど、マシンナリィがダメージで解除された場合は再度のマシンナリィができるまでに1時間ぐらいかかるの」
クーリングタイムが必要と。
ダメージがなければずっと変身できているのかと思いきや、変身中でも空腹や尿意を感じるのでそれを解消するために生身に戻る必要があるとのこと。
ロボのままではできないらしい。
「勇者はさすがね。グレーシャンが本気になっている」
『本気じゃないって! ちゃんと手加減してるから』
「はいはい。言ってなさい」
「できればアオイにも手加減を教えてほしい」
二人の動きは速くて目で追うのが大変だ。これ、俺が乗っていてもうまく操縦できるのだろうか。
近距離で切り結んでいたのが離れて距離を取ったら、斬撃が飛んでくる。スラッシュという必殺技だ。二機とも同じスラッシュを使って相殺している。
「グレーシャンにはあれの上位技があるの」
「クロススラッシュならアオイも使える」
「その上よ。アステリスクスラッシュ。グレーシャンはそれで最強にまで上り詰めた」
アオイは俺のフリートに入ることで3B仕様の力を手に入れているが、それも無しにより上位の必殺技を使えるとは、さすが最強か。
「クリムとの戦いでは不発だったから見たいです」
塔に避難してきたアサギリが戦いから目を離さずにそう言う。
戦闘狂ってのは言い過ぎかもしれないが、たしかにそんな部分はあるようだな。
『私も見たい』
『リクエストなら見せてやろうかね!』
グレーシャンロボの構えはさっきと同じだったが、シャイニーブルーは必殺技のタメポーズをとらずに盾を前面に構えた。
相殺ではなく、受け止めるつもりか。
『アステリスクスラッシュ!』
三本のスラッシュが*字になってシャイニーブルーを襲う。
単純に考えてもスラッシュの三倍の威力だが、クロススラッシュは二倍以上の威力だったから三倍以上と見ていいだろう。
回避行動も取らず、盾で正面から受け止めるシャイニーブルー。だが、盾は耐えきれずにバラバラに分割、破壊されシャイニーブルーもダメージを受けてしまった。
『へー。あれに耐えきった機神巫女はアオイが初めてだよ』
『……コズミに会ってなかったら耐えられなかった。変形できるようになってからここまでダメージを受けたのは初めて』
『ふう。さすがにヒヨッコどもの相手でもちょっと疲れたよ。ここまでにしとこうか』
アオイは脱がされなかったか。
別に残念ではないが、ジャージのサイズの確認はしてもらいたい。
◇ ◇
グレーシャンにもジャージを要求されたのでイザベルの分とあわせてクラフトして渡した。
うむ。見事に体育教師だな。できればできれば小豆色に染めておきたい。
「この分だとグレーシャンも服を破かれそうだから?」
「なに言ってんだよイザベル。着心地がよさそうだからだっての」
「たしかに柔らかくて動きやすくていいです」
生徒たちからの評判もいいようだ。
ならばダメージで破ける対策として、変身時用はジャージ、中に体育着を着るというのはどうだろう?
これならジャージが破けても俺がそんなに動揺しないですむ!
……はずだ。
ブルマなんてガキの頃に実物見てたんだから、そう騒ぐほどのこともないだろうしな。
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