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5話 初めての冒険

やっと家から出ます

 とりあえず外の状況を確認しようということで、アオイちゃんと共に家の外に出た。

 元のマンションに戻ってるかもと、ちょっとだけ期待したけど玄関を開けたらやはり巨木の森の中。

 外に出た途端に木の匂いと鳥の鳴き声が聞こえる、森の奥って雰囲気に包まれた。家の中では一切そんなのなかったのに。


「これが俺んち?」


「さっき見た時もこうだった」


 我が家を振り返れば、玄関のドアと表札のネームプレートはそのままだけど、他はぜんぜん違う。

 というか、大きな石板にドアが張り付いているだけだった。

 しかもその石板、どう見ても俺の家が入ってるような厚みがない。


「どうなってんだよ、いったい……」


「高度な魔法か、もしくは神の奇跡」


 あれ、この石板どっかで見たことあるような?

 石板の裏に回ってみると、その正体が判明した。

 これ、3Bにあるオブジェクトだ!


「換金モノリスかよ!」


「換金モノリス?」


 3Bのメインワールドの舞台は荒廃した地球。

 宇宙人、異次元人、怪獣、謎の秘密結社等の多くの侵略者に襲われ続け、人類は地上を放棄し地下へと逃げ延びた。

 数十年後、地上を取り戻すため人類の尖兵として送り込まれたのがプレイヤーキャラクターなのだ。


 そんな設定のため、ゲーム発表直後は通貨やそれを使う場所もなかったのだが、何度目かのアップデートでショップが追加され、それを利用するための通貨を入手するオブジェクトも追加された。それが換金モノリスだ。


 各地に点在する換金モノリスはアイテム類を通貨データに変換してくれる謎の石板で異次元人だか未来人だかが利用するために設置しているらしいが、なぜかプレイヤーキャラも問題なく使用できる上に換金モノリスで使えるカードが初期装備として支給されている。


 表面にはそれっぽい文字とカードスロットがある。間違いないだろう。

 3Bでは裏面は真っ平らだったけど、そこにうちのドアと表札がくっついたということか。


「これが使えるならかなり助かる謎の石板かな」


「そうなの?」


「あとで試してみよう」


 今はまず、換金モノリスを使うためにも売るためのアイテムを入手する必要がある。

 家の周囲の安全確保したいから、周囲の巨木を伐採してみるか。

 それとも防衛上にはこの巨木はあったほうがいいのか?

 大きな柵をつくればいいか。


「アオイちゃん、この木を伐採しようと思うんだけど、いいかな?」


「この木を?」


「うん。ちょっと時間がかかるからその間、見張りと護衛をお願いしたいんだけど」


「わかった。魔法を使うの?」


 この反応、魔法もやっぱりあるみたいだ。スキルリストを検索したら見つかるかもしれないな。

 だけど、解放(アンロック)するのに手間取るかもしれないので別の方法を試してみることにする。


 どうやら俺には3Bのプレイヤーキャラと同じ力が備わっているっぽいので、それを使ってみたい。

 3Bはサンドボックスゲームでよくある仕様にも設定を考えていて、プレイヤーキャラは〈空間操作〉スキルを最初から持っている。

 これで空間をある程度操作でき、物品を自分の持つ特殊収納空間(アイテムボックス)に収納したり、そこから出すことができる。


 アイテムボックスは関連スキルのレベルを上げることで収納量が増える。

 さらに目標を空間ごと削り取ることもできたりする。3Bではツルハシ(ピッケル)、斧、スコップ等の道具で破壊して特殊空間に収納した方が早いことが多いのだが、まだ道具がないので仕方がない。

 システム系のMODでこの辺りもイジっている。


 アイテムボックスの容量はほぼ無限。

 収納時はアイテムの劣化や腐敗はない。

 死亡時のアイテムボックス内のアイテム放出をしない。

 アイテムボックス内のアイテム加工時間を短縮。

 空間切削の時間を短縮。


 等々、激ユル仕様になっているのだ。

 今回は空間切削の時短がどれぐらい効いているかも調べてみたい。


「ええと、こんな感じか?」


 できると信じて、一番手前の巨木、幹の直径が3メートル強はありそうな木に向かって両手をかざして念じる。

 すると、一片が1メートルの立方体が巨木にめり込むように出現した。水色のワイヤーフレームで上下左右、思いのとおりに動く。これが切削ブロックフレーム。

 木のない空中に移動させるとワイヤーフレームが赤く変わった。切削する物がないという表示だ。

 ちなみにオブジェクトを配置する時のフレームは緑色で、配置不可はやはり赤いフレームになる。


 切削ブロックフレームは実行すると内部が削り取られてアイテムボックスの中へと送られる。切削速度は削り取る物体の硬さによって変化し、けっこう時間がかかるので戦闘では使われることはほとんどなかった能力だ。

 3B公式サーバー設定なら、現在のスキル状態だとこの1ブロック分削るのに3分ぐらいかかったかもしれない。


「切削!」


 削り取ると念じてから30秒くらいで巨木の幹に四角い穴が出現した。時計で測ったらもっと短いかもしれない。これなら速いと言っていいだろう。関連スキルを取ったらもっと速くなるだろうし。


「今、なにをした?」


「俺の能力で木を削ったんだ。無くなった部分は俺のアイテムボックスに入っているはず……うん、ちゃんとあるな」


 インベントリウィンドウで確認してみるとアイテムボックスもちゃんと存在して、その中に木材もちゃんとあった。


◎◎◎◎◎◎

バードンツリーのブロック×1

 バードンツリーの木材ブロック

 硬さレベル:6

 不燃レベル:5

◎◎◎◎◎◎


 へえ、この木ってバードンツリーって名前なのね。

 で、硬さレベル6?

 かなり硬いな。鉄製の道具じゃないと切れないじゃないか。公式サーバーなら切削に4、5分かかりそうだ。

 不燃レベルもそこそこだから簡単には燃えそうにないな。


 うんうん。なんか楽しくなってきた。

 リアル3B!

 命の危険はあるけど、これはこれで燃える!


「これを繰り返して、木を切断……反対側を多めに削らないとこっちに倒れて家がまずいかな」


 換金モノリスは耐久度が高いけど、玄関ドアが壊れても困る。

 倒れても大丈夫なように木の横に回って同じように切削を行ったら3回目できしみ、5回目で倒れてきた。

 ズズーンと大きな音と大地を揺るわせ他の巨木を巻き込みながら倒れて、よりかかる形になって完全には横になっていない。切った先の部分でも少なく見積もって30メートルはありそうな巨木。


「これならアイテムボックスに……うん、入れられるな」


「それはよかった。でも今ので潜んでいた生物たちが出てきた」


 収納した巨木が倒れていた辺りでイモ虫、ワラジ虫、クモ、ムカデ、蛾等の大小様々な昆虫がうじゃうじゃうじゃうじゃ蠢いている。

 怒っているというよりは慌てているみたいで、こちらに襲い掛かってくるのではなく別の木に移動しているみたいだ。

 鳴き声がうるさいので上を見上げれば生い茂る木の枝葉でよく見えないけど、鳥も飛び交っている様子。


「大丈夫かな?」


「少し様子を見よう」


「そうだな。いったん家に戻るか」


 こうして俺の初めての冒険(?)は10分ぐらいで終了し帰宅した。

 外の様子は気になるが、インターホンのカメラで見ればいいだろう。

 3Bの能力が使えるのならクラフトもできるのかな?

 もしそうなら監視カメラを設置したい。



読んでいただきありがとうございます

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