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55話 お願い

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 やってきた客は二人の女性だった。

 どちらも二十代前半に見える美女だ。


 この世界には美女美少女しかいないというワケではない。学園都市は少ししか回っていないが、見かけた人たちは普通の顔の方が多かった。

 なので、もしかしたらと思ったらやはり彼女たちはマシニーズだった。

 今日会った1組の生徒、クリムとサベージュも美少女だ。

 マキにゃんってば顔でマシニーズを選んでいる疑いが強くなったのだが。


「あたしはグレーシャン。アオイの姉だ。妹が世話になっている、ありがとうよ」


「俺はコズミ。8組の担任になったばかりだ。アオイには俺も助けられている」


「そして私のスウィートハート」


 必ずその主張するのな。

 女の子にそう呼ばれるのはいいが、おっさんに呼ばれるのは嫌なので別のにしてほしい。

 あとグレーシャンは姉って言うには似てないな。


「イザベル。8組の卒業生だ」


 こっちは8組のOGでしたか。

 古巣が火事になって、心配して顔を出してくれたのかね?


「グレーシャンって、あの帝国最強の機神巫女(マシニーズ)の!?」


「元だよ。帝国軍はもう辞めた」


 質問したのはシンクレーン。いつもよりも声が大きい。

 まさか最強のマシニーズに興奮している?

 そう呼ばれていたってことはグレーシャンの方は8組出身ではなさそうだな。


 アオイの姉を見たいのか、8組全員が応接室へ集結している。

 いくら豪華に見えるように大きく造っていても、この人数ではちょっと狭い。


「あれはバカ皇子が悪い。あの時はごちそうさまでした」


「アサギリか。元気か? あん時のサモピンの恋人がこいつ」


 サモピンって誰だろう?

 そりゃこんだけ美人なら恋人もいるというものだ。

 8組じゃないマシニーズなんて、無茶苦茶モテそうだよな。


「あいつを知ってるのか?」


「はい。グレーシャンに連れられてサモピンさんのお店に行きました。いい人ですね。みんなへのお土産もいただいてしまって。サモピンさん、かなり本気のようでしたよ。結婚しないのですか?」


「わかるだろ? 出来損ないと結婚なんかしちまったらあいつは不幸になる」


 サモピンは店をやっているのね。

 で、イザベルは結婚は断ってるのか。だが、遊びの関係ってわけではなさそうだな。

 サモピンをいい人って言われた時は嬉しそうな顔していたし。

 出来損ないだからイザベルが身を引いてる、って感じ?


「それなら問題ありません。出来損ないは出来損ないではなくなりますので」


「そりゃどういう意味だい? あの紙となにか関係があるのか?」


「コズミのおかげ」


 ドヤ顔のアオイ。

 それで解説した気にならないでくれ。

 説明を求めてグレーシャンとイザベルの二人が俺を見る。


「教えてやりたいが、もうすぐ試合がある。それまではビラの内容以上のことは秘密にしたい」


「コズミ、グレーシャンは信用できるからお願い」


「お願いします。サモピンさんを応援したいので」


 アオイだけではなくアサギリにまでお願いされてしまった。

 ううむ。できれば秘密にしたいのだが。

 どうせあと数日なのだから。


 そう、あと三日しかないのだ。今日ほとんど特訓できなかったのがツラい。

 レベルが上がって生身での戦闘もしたから、次はマシニーズ同士の戦いをやらせたかったのに。

 ……ん?


「条件がある」


「なんだい? あたしらにサービスしてほしいのかい?」


「そんなとこだ」


 グレーシャンが下ネタできた。軍隊にいたらしいから、下ネタなんて慣れているのだろう。

 生徒の教育上よろしくないので、あまり掘り下げずに適当に返しておく。


「さ、サービスって!」


「落ち着け、シンクレーン。お前たちのコーチをしてもらいたいってことだ」


「なんだよ、紛らわしい」


 シンクレーンの頬が赤い。

 口調は荒っぽいが元は貴族のお嬢様だから、わりと純情な子だ。


「コーチ?」


「試合が近いから、この子たちにマシニーズ戦を教えてやってほしい。俺はマシニーズ同士の戦いなんて詳しくないからな」


「そんなのでよく担任になったね」


 二人して呆れた目で見ないでくれ。

 状況に流されたのは自覚しているのだから。


「コズミ先生はいい先生です!」


「そうなのだ。ベドロなんかよりもよっぽどいい先生なのだ!」


「他の人が8組の担任など考えられません」


「コズミはスゴイ」


 生徒たちが俺をフォローしてくれた。

 変形できるようにしたことで、俺を認めるようになってくれたのだろう。

 かなりかなーり嬉しくて、ちょっとうるっときてしまう。

 その生徒たちを驚いた顔で見るグレーシャンとイザベル。


「へえ。疑り深い8組生徒にここまで慕われるなんて、なにをやったんだい?」


「コーチをしてくれるなら教える。そうでないなら秘密だ」


「わかったよ。イザベル、可愛い後輩のためだ。コーチしてやってくれ」


「もちろんグレーシャンにもコーチしてもらいたいのだが」


 最強のマシニーズというなら、うちの子たちのコーチにも相応しい。

 どんな形態かわからないイザベルも変形状態でのコーチをしてほしいので、グレーシャンだけではない。


「あたしもか? あたしの戦い方は参考になるかわからないよ。言いたくはないが8組は……」


「試合まであと三日しかない。うちの生徒全員を教えるにはコーチ一人より二人がいいだろう。それにグレーシャンが必要だ」


「……勝つつもりなのかい?」


「当然だ。そうしなければ特殊な形状のマシニーズを出来損ないなんて呼んで差別する世界は変えられない」


 マシニーズは強くてナンボらしいからな。

 もし8組が負けてしまったら、市民たちは認めてくれないかもしれない。


「世界を変えるとは大きく出たね」


「二人がコーチになればわかるが、この子たちは変わったよ」


「コズミのおかげ。みんな変……アレを経験したから」


「あ、アレ!? コズミとしたって言うのかい?」


 コーチになるって言ってくれればすぐに説明できるのだがな。

 あ、でも変形って言ってもわかってもらえないかもしれない。見てもらうのが一番早いか。


「コズミはスゴイ」


「アオイ、そればっかじゃわかんねえってば。グレーシャン、イザベル、お願いします、オレたちを鍛えてください!」


「お願いします!」


 シンクレーンもアオイの「スゴイ」が多いって思っていたようだ。さすコズならぬコズスゴだ。

 彼女に続いて、生徒たちが二人に頭を下げて嘆願する。


「……まあいいか。あたしも暇だし。わかったよ、あたしに任せな。出来損な……特殊な形状だっけ、との戦闘は慣れてるんだ、逆の立場からのコーチならしてやるよ」


「仕方ない。可愛い後輩のためだ。私もコーチしよう」


「ただし、こっちからの条件追加だ。今日からここに泊めてくれ。宿暮らしを続けるのもちょっと、ね」


 俺よりも生徒たちのお願いの方が効果があったか。

 よし! これで勝てる!!

 ……かもしれん。

 グレーシャンは軍を辞めて無職状態? 宿代も不足してきたのだろうか。


「ありがとう。部屋は余ってるから問題はない。……イザベルは大丈夫か? 男がいるとこに泊まったりなんかしたら恋人が誤解するかと思うのだが」


「うん? あんたもここで暮らしてるみたいな言い方だね?」


「……やっぱり女子寮で暮らすのはおかしいよなあ。俺はこっちに来たばかりで家も金もないから、学園に要求したらこういうことになってしまった」


 早く寮を完成させて俺の家の建築を開始したい。

 試合まで時間がないから、寮の方も進めにくい。

 家だけじゃなくて他にも造りたい建物が多いのだが。試合に勝てば余裕もできるだろうから、それまでは我慢だ。


「コズミは私のスウィートハートだから問題はない。ここは二人の愛の巣」


「アオイも大人になったんだね」


「違うから」


 なんだろう、他の生徒たちの仮パートナーになったせいで危機感を覚えているのだろうか。

 アオイがガンガンガンガンに攻めてきている気がするのだが。



読んでいただきありがとうございます

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