47話 13人
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どのMODを入れるか選ぶために調べてる時に見た3B実況動画の記憶を頼りに魔法作業台を使ってみる。
まず、魔法強化したいアイテムを魔法作業台に乗せ、次に強化するためのアイテムを追加するわけだが今はそのアイテムがない。
「たしか魔法系じゃないアイテムでもできる組み合わせがあったはず」
剣系のアイテムにランタンを追加して光る剣とか。効果としては光るのが追加されるだけだが、それはそれで便利そうだった。
試しに木刀を乗せてみる。
ふむ。クラフトのウィンドウに木刀の空きスロットが表示されている。
2つか。この数だけアイテムを入れることができる、と。
何を入れてみようか?
在庫目録のウィンドウを眺めて考える。
ううむ。わからん。
とにかく余っているアイテムでいろいろ試してみよう。
適当に選んだのは木刀。同じアイテムをスロットに入れることで効果が重複するというのもあった記憶がある。
さて、スロットに入れるのはどうすれば……あ、上に持っていったら吸い込まれてしまった。これでいいのか。
見た目は全く変わっていない木刀を持ってみる。重さもあまり変わっていないな。たしかに普通のクラフトと違うようだ。
性能は……二倍とまではいかないが、かなり攻撃力と耐久力が上昇した。もう一度魔法作業台に乗せてウィンドウを確認すると、木刀のスロットが1つ埋まっている。
「どうなったのだ? もうできたのだ?」
作業に夢中になっている間にキントリヒが戻ってきていたらしい。
急に声をかけられてちょっとビビった。
「いや、これだとマジックアイテムではないな」
「魔力も感じないのだ」
「だろうな。威力が増しただけだ。魔法をこめられた何かがあればいいが、そっちはまた今度になるか」
「残念なのだ」
あまり残念ではなさそうな声でキントリヒは調合作業台で作業を開始する。
乾燥した草をいくつかと瓶をもってきたようだ。
「これ、どうやって使うのだ?」
「たぶんこうだろう。火は出ていないが、この電熱線の上が熱くなる。スイッチの角度で火力が変わるので調節してくれ。スイッチをここまで持ってくると動作が止まる」
調合作業台に設置されている電熱器のスイッチの入れ方を教える。調合作業台の使用には電気が必要なのはこれのためか。
小さいがシンクも付いているし、理科室の机のようでもある。あ、よく見たら台の下には冷蔵庫もあった。
「この小さい箱はキッチンの冷蔵庫と同じだ。上の方は凍らせるほどに冷たくできる」
「それは便利なのだ」
冷蔵庫の扉をガチャガチャと開け閉めする幼女ダークエルフ。
さすが3Bの高性能作業台というべきか、メインスイッチを入れたばかりなのに冷蔵庫はもう冷えているようだ。
「この調合作業台のメインスイッチを切らなければ冷え続けるから、これはいじらないように」
「わかったのだ」
蛇口から水を出して小さな鍋に水を入れ、電熱器の上に乗せて加熱を始めた。もうだいたいわかったようだな。
「他にわからないことがあったら聞いてくれ」
返事がない。火加減が大事なのかもしれんな。
集中しているようなので邪魔しないように俺も自分の作業に入るか。
まずは生徒たちの武器だ。
鋼の剣を鋼の剣で強化しておこう。
キントリヒには重いか?
魔法で攻撃するなら不要かもしれない。あとで杖の方がいいのか聞いてみるか。
鎧は、鋼の鎧だと重いかな。アオイも動きが悪くなるって使ってくれなかったし。
アオイと同じように木製の部分鎧で済まそう。
木の胸鎧をクラフトして……サイズはこれでいいか?
取りあえずフリーサイズのでいいか。成長期なのだし、少し大きめで我慢してもらおう。
シンクレーンとワカナのは特に大きめにしないといけない。
盾は全員が使うかどうかわからないが、やはり重いのは疲れるので木製にしておく。
タンク役には鋼の盾でもいいかな。
兜はどうしようか。さすがに安全ヘルメットはないだろうが。
シンプルなヘルメットをクラフトしておこう。
見た目よりも安全重視だ。
間違えてスロット行きにしないように人数分の装備を並べて、強化作業開始。
見た目は地味だが元々プラス付きで性能が高いだけにかなりの物になったはずだ。
「すごいのだ。かかった時間も短いのにいつもよりもたくさん薬が出来たのだ!」
「その作業台の力だ。キントリヒでもちゃんと効果があるようだな。それを使わない時はいつもの時間と量になるから、それは忘れないように」
「もちろんなのだ。あと、キンちゃんなのだ」
いくら幼く見えるとはいえ、生徒をちゃん付けで呼ぶのはなあ……。
だがフリート入りしていなくても作業台の効果が発揮されるのが確認できた。
これなら魔法作業台も使えるかもしれない。魔法入りのアイテムが早くほしいな。
「キントリヒは剣よりも杖の方がいいか?」
「キンちゃんは弓も使えるのだ。でも、あまり大きい弓は使えないから、威力は低いのだ」
小さい子だから大きな弓は無理なのか。
クロスボウをクラフトしてもいいが、取りあえずアイテムボックスに入れておいた杖を渡す。
「これはどうだ? クラフトレシピを解放する時に木で作ったものだが」
「面白い形なのだ」
よくある拗くれた魔法使いの杖、ってタイプじゃなくて、可愛らしいデザインの所謂魔法少女っぽい杖だからな。
「これは魔力の通りがいいのだ。ありがとうなのだ」
ふむ。多少は魔法にプラス補正がかかりそうだ。
俺用にもクラフトしておこう。……デザインは別のにして。
あと必要なのは……パラシュートか。布もできたのだしクラフトしないと。
たしか動画だと魔法の箒からの落下に備えるために、ベルトのスロットにパラシュートをセットしていた。
俺もやってみよう。パラシュートは絶対必要なのだし。
それとバッグか。
バッグに収納ボックスをセットすると収納量が増えて便利だったはずだ。
マシニーズになれば俺のアイテムボックスが使えるが、それだけでは不便だからな。
バッグの種類はとりあえず背負うタイプで用意しておこう。
◇ ◇
皆の装備を作っていたら遅くなってしまった。
キントリヒにもそろそろ止めるように声をかけて、作業を中止する。
「コズミ先生! この作業台、凄いのだ!」
「はいはい。わかったから、もう寝ような。明日も特訓だ」
「そうだったのだ」
作業室を出て倉庫へ向かう。
キントリヒの布団を運ぶのを手伝うためだ。
小さな子一人だけでは大変だからな。
「おや?」
「どうしたのだ?」
「数がおかしい。余計に2セットを予備として置いておいたのだが。……8組の生徒は全員で十二人だったよな?」
キントリヒの分は既に誰かが運んでくれたのだろうか。
それともまさか、俺のために屋根裏に運んでくれた?
「違うのだ。十三人なのだ」
「え? そうだったか? 十二人だと思っていた」
生徒の顔と名前を思い浮かべながら数えてみる。
さっき装備品を準備している時に十二人だと確認したはずなのだが、誰かの分を忘れてしまったか?
「コズミ先生は会ってないのだ」
「まだ他にいるのか?」
「キンちゃんも会ったことないけど、アオイの前に試練を受けたドワーフがいたのだ。その先輩がいつ戻ってきてもいいように、前の寮では部屋を残していたのだ。引っ越しの時に荷物も持ってきて、部屋も用意してあるのだ!」
そんな話をアオイも言っていた気がする。
8組の生徒たちはアオイだけでなく、そのドワーフのことも待っていたのか。
やばい。ちょっと泣きそうになってしまう。
「……戻ってくるといいな」
「そうなのだ」
ドワーフなら鍛冶にも強いだろう。
ぜひ戻ってきてもらいたい。
8組の生徒
3年
シラユリ
シンクレーン
ワカナ
2年
アオイ
アサギリ
オトメ
ミレス
ミカンヌ
1年
キントリヒ
アンジュラ
クルミダ
ヒワ
行方不明1人
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