46話 作業台
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暗くなってきたのでアオイの帰還と同時にゲートを使って寮に戻った。
砂漠地帯での講習だったのでみんな思ってた以上に砂まみれになっているな。
バッテリーの充電は……フル充電完了。洋館の広い屋根に並べた太陽電池パネルがいい仕事をしている。さすが3Bの高性能仕様だ。これならもう一つぐらいバッテリーを設置してもいいかもしれない。
「砂がこぼれるのは仕方がないから、まだカーペットを敷く前でよかったのか」
あとで敷き詰めるつもりではいたが、時間だけでなく繊維や毛も足りなかったからな。
このゲートのある地下室のそばに更衣室とシャワー室を設置するのもありか?
「寮が立派になった分、掃除も大変になるのね」
「掃除は前と同じくみんなで分担しましょう」
「トイレが家の中にあるのも考えものなのだ」
「数も多いしねー」
そんなことを言っていられるのも今のうちだ。
電気が使えるようになった今、日本が誇る温水洗浄の洗礼を受けるがいい。
フハハハハハハハ。
……俺も疲れているようだな。
大浴場の湯沸しをセットしたら少し休むか。
プラスの付いた3B給湯器の性能は高く、10分程度であの大きな浴槽がお湯で満たされてしまった。
「石鹸とシャンプーはこれを使ってくれ」
全員にクラフトしておいたタオルと洗面器を渡して、風呂に入らせる。
俺の性格上、石鹸もシャンプーも予備を多めに買ってはあるがこの人数ならすぐになくなってしまうだろう。
幸いにしてクラフトすることはできるので、早めに作っておきたい。
「コズミも汚れている。いっしょに入る」
「俺は自分のとこで入るからいい。アオイ、みんなにシャワーやその他の説明を頼む。しっかり洗っておきなさい」
「そういやコズミ先生の部屋ってどこなんだ? 2階にはなかったよな」
「屋根裏部屋だ」
2階建ての洋館だが、つい屋根裏にも力を入れてしまった。かなり天井の高い屋根裏部屋があるのだ。
俺の家の表札を貼ってあればあの家に戻れるので、ここまで立派にする必要もなかったのだがな。
「そんなところを使わなくてもいいのでは?」
「気にするな。どうせそんなに長く使うこともないだろうから」
いつまでも女子寮に住むわけにはいかない。
一段落したら、こじんまりとした俺の家を建築しよう。
「コズミ先生……」
生徒たちが入浴している間に俺も風呂へ。
シャワーだけで軽く済ませる。湯船につかるのは寝る前でいいだろう。
◇ ◇
シャワーで砂を落とし、バッテリーの消費や洋館内の確認を行っていると風呂上がりの生徒たちと遭遇する。
元から美少女揃いだが、入浴後はなんでこんなに美少女度が増すのだろうか。
髪、肌の艶、それに石鹸の香り。娘でもおかしくない年頃の少女にドキッとさせられてしまう。
「コズミ先生、風呂すっげえ気持ちよかったぜ」
「そうか。髪はちゃんと乾かしておけよ」
「しっかり拭いているって」
しまった。ドライヤーを置いておくのを忘れていたか!
あとで複数クラフトしておかなければ。
それに人数分の櫛と歯ブラシやコップもだな。
「このタオルの手触りも凄いのだ。吸水性もいいのだ」
「い、いいのでしょうか? こんな綺麗なのを使っても」
「そのためにアオイに素材を集めてもらってクラフトした。アオイが頑張ってくれたから大目に用意できた。こまめに洗濯して綺麗なものを使うように」
「えっへん」
あとで洗濯機の使い方も教えないといけないな。
やはりプラス付きの洗濯機なのでたぶん洗剤なしでも汚れは落ちるはずだ。
「生活環境の向上のために皆も素材の収集に協力してほしい」
「まかせてくれ!」
「万能の霊薬の材料だって集めます!」
そのまま点検を続けていると準備ができたというので夕食に。
メニューは昨日と同じだった。
そして昨日以上に旺盛な食欲を見せる少女たち。
マシニーズになると体力も使うのだろうか?
みんなの食べる勢いが凄く切り出せなかったので、食後に話をする。
ワカナが煎れてくれたハーブティーっぽいものがいい風味だ。
「明日は変形訓練ではなく、あの世界でモンスターと戦ったり素材採集を行って貰う」
「オレも含めたほとんどが、まだ完璧に変形ができねえんだけどよ」
「だからだ。既に皆の変形スキルは準備ができているはずだ。こっちでは何というのか知らないが諸君のキャラクターレベルを上げれば、変形スキルのレベルを入手できる可能性がある」
アオイだって変形を試す前に〈変形〉スキルが解放されていた。可変型のマシニーズは最初からアンロックされていると俺は見ている。
あとはキャラクターレベルを上げれば、なんとかなりそうな気がする。
「生身での戦闘もマシニーズでの戦闘の役に立つだろう。試合も近いからより実戦的な訓練が必要だ」
「それなら採集はいらないのでは?」
「ずっと戦闘ばかりでも構わないが、身体作りのためにも食料調達をしたい。肉ばかりではなく他のものもバランスよく、だ」
コンポストボックスを設置したので肥料が作れるからそれも使いたい。それには種がほしいのだ。
導入したMODには加工したアイテムからでも種が取り出せるスキルもあるのでそれも活用するつもりではあるのだが、種類が多い方がクラフトの幅が広がって楽しい。
「武器や防具は用意したが、キントリヒ、マジックアイテムにする方法を知らないか?」
「キンちゃんって呼んでほしいのだ! よくある方法だとマジックアイテムには魔法石が必要なのだ。魔法石をマジックアイテムにしたい物に仕込むとマジックアイテムになるのだ。魔法石にこめられた魔法が使えるようになるのだ」
ふむ。MODのマジックアイテム作成もそんな感じだった気がする。
ベースアイテムに魔法のこめられたアイテムを特殊な作業台で合成することでマジックアイテムになるのだったはず。
ああ、そうか。あのMODだとアイテムボックス内ではマジックアイテムは作れなかったのか!
必要だったのは特殊な作業台だ。
3Bはバニラでも数種の作業台があって作業台ごとに専用のクラフトができるようになるのだが、MODでその作業台の種類も大幅に追加されているんだった。
作業台を使わないクラフトばかりしていたんで気づかなかったのは盲点だ。
「ふむ。参考になった。ワカナ、アンジュラ、今日も美味かった。ごちそうさま」
料理担当のワカナとアンジュラにごちそうさましてから、突破口が見つかった作業を行う。
向かうは作業室だ。
「コズミ先生?」
「ああ、倉庫に布団を用意しておいたので、各自持っていって使うように。先生はこれから楽しい楽しいクラフトだ」
「それはキンちゃんも興味があるのだ!」
◇
作業室に新しい作業台をクラフトして設置する。
その名もズバリ、魔法作業台だ。これを使えばマジックアイテムをクラフトできるかもしれない。
「おお! すごい魔力を感じるテーブルなのだ」
「キントリヒは調合もするんだったな。それなら……これを使ってくれ」
ついでに調合作業台も設置した。
これは調合を行い、ポーション等の薬品や毒薬をクラフトする時に使用する。
どちらもプラス3の作業台だから、作業時間や品質も向上するだろう。
「キンちゃんなのだ。このテーブルも力を感じるのだ?」
「こいつは調合作業台+3だ。調合する時に補正がかかる。こっちの調合でも効果があるか試してみてくれ」
3Bのシステム外のキントリヒが使っても効果があるのなら生徒たちの役にも立つ。
それに俺が死にそうな時でも治療薬を作ってもらえるかもしれない。
「や、やってみるのだ! キンちゃん、薬の材料持ってくるのだ!」
キントリヒは勢いよく作業室を飛び出してしまった。自室にでも素材を取りに行ったのだろう。
薬草ならばチュートリアルで採取したのが少しはあるから試してもらいたかったのだが。
まあいい。
俺はマジックアイテム作成にチャレンジなのである!
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