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44話 ガワ変形

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キントリヒロボの変形パターンを当てられた方はたぶんエスパー

 キントリヒが変身したのはピラミッドだった。

 いったいどうやって乗り込むか悩んだが結局、キントリヒに指示を出す。


「俺を中に入れることはできるか?」


『やってみるのだ』


 しばらく、うんうんと悩む声が俺の護符(アミュレット)から聞こえたが、いきなりピラミッドの中央から光が伸びてきて俺を包み込む。

 浮遊感と共に俺の身体がピラミッドへと運ばれていき、構成する石材にぶつかりもせずにその中へと吸い込まれた。


「まさかまさかのビーム搭乗とは!」


『上手くいったのだ?』


「ああ。ここはキントリヒの操縦席で間違いなさそうだ。俺がわかるか?」


『わかるのだ! こんな感覚は初めてなのだ!』


 遺跡っぽい物にビーム搭乗か。賢者じゃなくて勇者な気もするが、まあいいだろう。あれも金色になってたし顎もエジプトっぽかった。


「キントリヒ、外の景色をここに映し出してみてくれ」


『キンちゃんって呼んでほしいのだ。もっと愛をこめて! こうなのだ?』


 ここまではどのマシニーズも共通なのだが。

 問題はこの先だ。


「自分がなにをできるかわかるか?」


『キンちゃんにはわからないのだ。コズミ先生はキンちゃんのこの形を知っているのだ?』


「……この姿では俺の世界でピラミッドと呼ばれる建造物によく似ているのだが、それは古代文明の遺跡で、王の墓だと言われている」


『キンちゃんはお墓じゃないのだ!』


 そりゃそうである。

 ピラミッドの能力というと……ピラミッドパワー?

 たしか科学的には否定されていたような。


「取りあえず、動けるか試してくれ。実は下に車輪があって走れるとか、もしくは浮いて移動できるとかを」


『やってみるのだ』


 映し出される映像が少し変化した。どうやら浮いたようだ。

 どうやら飛行可能なようだな。

 空中ピラミッドなんてオカルト誌が喜びそうな字面である。


『おお! キンちゃん飛べるのだ! 凄いのだ!』


「うん。他の能力は今は不明だから、おいおい調べるとして変形を試そう」


『了解なのだ』


 他の生徒と同じように注意とカウントダウンをして操縦桿に触れると軽い喘ぎにも似た声が上がるまでがワンセット。これ、教本(マニュアル)ではどう解説すればいいのだろうか悩むな。


 スキルのおかげで操縦桿から伝わる操作方法に従い、変形開始。

 キントリヒの変形は予想以上に簡単なものだった。


「ガワ変形だったか」


『ガワ変形?』


 ガワ変形とは変形玩具等における変形方式のことで、人型以外の装甲は本当に外側でしかなく、人型の時にはほとんど装甲として使われず、折りたたまれてマントや盾として使われるような変形のことである。

 例えるなら、普段は着ぐるみ状態で、人型時にはその脱いだ着ぐるみを折りたたんで背中に背負っているようなものだ。


 キントリヒの場合はピラミッドが頂点から面ごとに分かれて開き、その中に胡坐をかいたロボが入っていた。

 展開図のように開いたピラミッドはそのまま裏返り、逆さピラミッドの上に人型ロボが乗っているという形になってしまった。


「そりゃ中のロボのサイズを揃えたら、ピラミッドは大きくなる、か」


『キンちゃんも普通のマシニーズになったのだ!』


「いや、普通のマシニーズにはこんなオプションはないのではないか?」


 キントリヒロボの足下にあるこの逆さピラミッド、中は空っぽとはいえ存在感は大きいだろう。

 しかも変形途中で操縦席からも見えたが、ピラミッドの内側、つまり現在の逆さピラミッドの装甲の色はキントリヒの名に合わせてか金色である。

 しかも表の石段とは違い、裏面は段差の無い平面で機械的なパネルラインが引かれている。スミ入れしたくなるなる。

 キントリヒロボ自体も操縦席に映る手足の色から見るに金色だ。これは目立つ。


『オプションなのだ?』


「そうだ。これはかなりの武器なようだぞ。離れてからもコントロールできる」


『やってみるのだ!』


 キントリヒロボが空中に浮いたまま、逆さピラミッドと分離して遠隔操作を試し出した。

 どうやら分離中の移動はコマのように横回転しながらのようだな、あれ。


『思いどおりに動くのだ』


 横回転だけではなく、パカパカとピラミッドが展開、石ピラミッドになったり、黄金ピラミッドになったりと姿を変える。


「開いたままで飛ばすと手裏剣みたいだな」


『これは面白いのだ。うまくやれば捕獲用のトラップにもなりそうなのだ』


 それも有りか。

 オールレンジの装備持ちとはさすがに賢者である。


「ああ、それを動かすのはMPを使うから注意するように」


『まかせるのだ。キンちゃんは賢者なのだ。MPには自信があるのだ! いつか普通のマシニーズになれた時のためにって、修行は怠っていなかったのだ! この状態での魔法だって余裕なのだ』


 マシニーズ状態だと魔法の効果もその大きさに相応しいものになるらしい。

 その分、制御も難しくなるのだが。

 魔法を実戦で有効に使えるマシニーズは少ないらしい。


「魔法はまだいい。変形の練習を……すぐに覚えられそうだな」


『もちろんなのだ。賢者はスゴイのだ』


 賢者関係なく、変形が簡単だからなのだが。

 言わないでおくか。

 貶める必要は全くない。

 変形は単純だが、その能力はかなりのもののようであるのだし。



 ◇ ◇



 キントリヒの講習を終えた。

 他の生徒たちの話によれば、やはりキントリヒロボの装甲は金色だったようだ。

 あまりにも派手すぎるから普段は石カラーなのだろうか?


 1年生の講習を続ける。

 アンジュラは(アンズ)色のショベルカーだ。オレンジ系の二人目である。

 彼女はワカナに次いで家事が得意で、料理が好きらしい。


 クルミダはブルドーザーだった。色はやや薄めの茶色。胡桃(クルミ)色でいいのかな。

 アンジュラとともに重機だったがSF重機で操縦席は露出していなかった。


 最後の一人はヒワ。成長スピードが違って別枠なキントリヒを除けば、一番小さい生徒だ。

 変身したのは鳥型メカ。色はやや緑がかった黄色だ。


「どうだ、ヒワ、飛べそうか?」


『ご、ごめんなさい!』


 動物型でもなんとかわかった操縦席に乗り込み、全天周モニター表示を成功させたので次の指示を出したらいきなり謝られてしまった。


「どうしたヒワ?」


『ごめんなさい……』


 この声、もしかして泣いているのだろうか?

 他の生徒たちのような嬉し泣きではなさそうなのだが。


「ヒワ、わかるだろう。お前は鳥の能力を持っているはずだ。この形なら飛ぶ鳥の能力を」


『で、でも……わ、わたしは飛べません。ごめんなさい』


 羽ばたきもせず、謝るだけのヒワ。

 むう。

 たしかに、いくら鳥の形を模しているとはいえ、その飛び方でこんな巨体が飛ぶというのは無理がありそうにも思える。

 だが、このチュートリアル世界ではヒワよりも大きい巨鳥だって飛ぶのだ。生身と金属の違いはあるだろうが、さらに大きく実はロボットだった守護鳥だって飛ぶのだから無理ってことはないはずなのだが。


「高いところが苦手なのか?」


『い、いえ……あっ!』


 違うのか。

 だが試そうともしないというのはおかしい。


「もしかして、試したことがあるのか?」


『はい……』


「そうか。だが、その時は失敗したのかもしれないが、今は俺がついている。飛ぶことができるぞ。失敗したって怒りはしないからもう一度試すぐらいはしないか?」


『あ、あの! ……実はわたし、飛べるんです。……いえ、飛べたんです。でも……』


 ふむ。これはその時になにかあったか。

 それがトラウマになっているようだが、面倒だな。

 精神的なものはクラフトでどうにかしにくいだろうし。


「無理に飛べとは言わない。なにがあったか話してくれないか。せっかくの空をヒワが諦めるようになった理由が知りたい」


 アオイだけではなくアサギリにミレス、キントリヒと飛行可能な子たちは飛んだ時に凄いはしゃいだ。

 外をあまり感じられない高性能な操縦席に座っているだけの俺でさえ、飛んでいる時の気分は爽快だ。

 飛行可能なマシニーズなのにそれを自ら捨てるなんて、あまりにも惜しい。


『あの時……』


 ヒワがゆっくりと話してくれた事情はあまりにも衝撃的なものだった。


「飛行中に他のマシニーズに撃ち落されて、それ以来飛べなくなったとは……」


 悪いのはドメーロ派の偽神官だけだと思っていた俺にはショックが大きい。

 マキにゃんが選んだマシニーズの中にそんなやつがいたなんて。



読んでいただきありがとうございます

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